転生
更新遅いゴミクズで申し訳ありません。
青空学校はお昼過ぎに終了した
なにぶんいきなりのことで、予定もなにもあったものではない
飛影の予定を確認したカガリは午前授業で終了し、明日から学校が終わりだと生徒達に告げる
カガリが教師をやっていたのは暇潰しである
飛影が来た今なら暇潰しは必要なかった
「あっはっは~!!」
笑いながら手を振って生徒達の話を聞かずにカガリは跳躍した
飛影もカガリを追うように跳躍する
《クリエ》
《炎舞》
上空200メートル程でカガリは羽を出す
飛影も脚から炎を出して停止
カガリの行動がよくわからない飛影は声をかけずにカガリの反応を待つ
「よし!!」
カガリは気合を入れるために頬を叩く
暇潰しといっても情は移っていた
決心が鈍らないようにと一つ深呼吸をする
「飛影…時間が勿体無いからね…成長を見せてほしいな」
絶対強者級の魔力が開放される
同時にカガリは準備していた結界を作動させる
「…いいぜ」
そんなことを言われてしまっては飛影に拒否する選択肢は生まれない
心の底からの笑みを浮かべ、魔力を開放する
「…おぉ~」
約60年ぶりの飛影との対峙
魔力量では完全にカガリを上回っていた
挑戦者は逆転
全てのパラメーターはカガリが負けている
あとは使い方だけである
「行くよ!!」
《クリエ・六枚羽》
「来い!!」
《炎舞・無全防》
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次の日
結果から言えば飛影の勝利であった
無炎の防御を貫くことができなかったのが勝敗を決定付けた
今回は飛影とカガリの戦いが主たるものではない
そのための割愛である
結局飛影とカガリは戦い
カガリが負けて気絶して、飛影が部屋まで運んでその日は終了した
そして結局のところ、カガリの眼が覚めたのは夜の10時であった
「いや~寝過ぎちゃったよ!!」
「寝過ぎだ」
危うく二度寝をするところであったカガリ
既に残り時間は14時間
「ご飯食べ行こう!!」
「飯か?ってか昨日の朝も気になったが意味あるのか?」
天界の天国は死者が集まる
目に見えて肉体はあるが、それらは全て魔力によって構成されている
そのため、空腹を覚えることも寝なくとも活動ができる
「まぁ嗜好品みたいな感じかな!」
天国にはカガリのように嗜好品として食事をする者が多数いる
生きていた頃の名残でカガリのように三食食べる者や気が向いた時に食べる者
基本的に天国にはお金等の概念は無く、ポイント性である
善意ある行動ならポイントが溜まる仕組みで善意かどうかの判断は相手の気持ち次第
カガリは教師として生徒達に感謝されていたためポイントは余っていた
「ふ~ん、まぁいいが、俺ここの金はないぞ」
ポイント性であることを知らない飛影
旅行とはいえ、通貨はポイントである
「私が奢るよ~ラインに勝った祝勝会だ!!」
苦笑いを浮かべるカガリ
飛影が相手から感謝されることなんて、ありえないと思えたカガリ
失礼ではあったがそれは事実であった
「ん…すまんな」
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「なんかすげぇ高級な感じだな」
「感じじゃなくて事実だよ!!」
空にある小さな島が店になっていた
景色も良く、ご飯も最上と言われている
欠点として空を飛ばなければ辿り着く事ができないことである
客が店を選ぶのではなく、店が客を選んでいるのだ
味も最上
値段もお手頃
二人して夢中になって食事をした
「いや~美味しかったね~」
「そうだな、物凄く旨かった」
感想を言い合いながら空中を散歩する
「飛影は12時までだっけ?」
「あぁ、あと11時間くらいかな。まぁここくれば、いつでも会えるんだし…時間は気にしなくても良いんじゃ無いか?」
飛影としてはカガリに会えると思っていなかったが、ラインとの戦いでそれを知り、この天国には旅行感覚で行けるので、飛影はあまり時間を気にしていなかった
「あ~それなんだけど、私今日で消えるよ?」
伝え忘れてた、と緊張感無しでカガリは告げた
「はぁ!!?」
飛影としては予想外である
驚愕の表情でカガリを見る
「私は最後に飛影と会ってきちんとお別れしたかったから、天国に残ってたんだよ」
ただそれだけ
きちんとお別れするために、カガリは残っていた。
何十年、何百年、何千年、何万年でもただそれだけのためにカガリは残ったのだ
思ったよりも早く飛影が来たのは予想外であったが
「…そうだったのか…」
頷く飛影
止めようとはしない
何かの理由があるカガリの行動に飛影は意見できるほど、できていない
「消えるってのはどういうことだ?」
「ん…と、簡単に言えば転生かな…生まれ変わるってこと。ほら、所詮この身体は偽物だからね…生きた身体が良いんだよ」
「ふ~ん、成る程な、理解した」
死んだことが無い飛影にとっては、死者の身体についての理解はできない
だが、カガリの心を理解はできる
「ってなわけで、私は飛影が行くと同時に逝くけど」
「ん…あぁ」
「転生したら記憶は無くなっちゃうのさ」
あっけらかんと言うカガリ
転生は言わば完全な死からの再生
天国には転生できないものが多数いる
理由として、天国ではあまり不自由しない生活が送れる
生きた活動が行えるのだ
全員が全員、幸せな最後を迎えることはない。理不尽に死んだものばかりである
理不尽に死んで、そして偽物とはいえ身体を手にする
そして転生という、二度目の死
恐怖や嫌悪で残っているものも多いが、カガリは例外的なものでいつでも転生できる
「まぁそりゃそうだろ」
「つまり!!」
「つまり?」
「楽しい想い出を作ろうじゃないかぁ!!」
イッエェェイ!!と手を挙げるカガリ
「お…おぉ~」
釣られて手を挙げる飛影
どうも飛影はカガリには遠慮してしまっていた
何かやりにくい、というよりも
何か恥ずかしい、方が近い
元々の飛影は馬鹿テンションな生物ではない
カガリが死ぬときに言っていたこと
自分に素直になって感情豊かになることを目指すため、飛影はカガリのように性格を真似ていた
つまり、本物の前で劣化コピーを見せるのは気が引けるのである
「ってなわけで、飛影!!なんか芸やって!!」
「無茶振りかよ!!?」
「面白いのとかでもいいけど、なるべく想い出に残りそうなもの!!」
カガリの眼はキラキラと輝いていた
自分の無茶振りに飛影がどう答えるのか…ハードルはかなり高くなっている
「…しょうがない」
ふぅ…と飛影は軽く溜め息を吐く
この然り気無いタメもハードルが上がる原因ではあるが、飛影は気にしない
空中を歩いて飛影はカガリに超接近する
「!!?」
「ここが一番だな…」
急なことに驚いて僅かに顔を赤くするカガリに
身体と身体がギリギリ触れ合わない程度に近付いた飛影は背中を向ける
「良く見てろよ~」
《炎舞・花火》
飛影はドッチボールほどの無炎を作り出し、落とす
地面に落ちる前に無炎は弾けた
「…何も起きない…よ!!?」
反応がないとカガリが思った瞬間である
全身を震わせる轟音が轟いた
近所迷惑や深夜という時間帯を完全に考慮していないそんな大迷惑な轟音と共に無炎が弾けた箇所から色鮮やかな巨大な炎の鳥が現れて上昇し、カガリと飛影の周りを周回する
炎の鳥は翼から小さな炎の球を垂れ流し、飛影とカガリの周囲を思う存分駆け巡ると爆散する
同時に炎の球が弾けて花を彩る
爆散した炎から小さな鳥が生まれ幻想的に飛び回る
360度
「…」
全方位から生まれる芸術にカガリは眼を奪われていた
「カガリは踊れるか?」
「へ?」
飛影の言葉で正気を取り戻す
気付けば飛影はカガリに向けて手を差し出していた
「踊れるよ」
迷わずにその手を掴むカガリ
幻想的な景色でリズム良く爆音が鳴り響く中心で二人は踊る
「いや~これは凄いね!!」
予想を遥かに越えた芸にカガリは大満足である
「とっておきだ」
「…しかし、飛影か踊れるなんて…」
驚き度であれば、そっちの方が強かった
「…大抵の娯楽はマスターした」
世界を旅していた時や今のメリアでの暇な時間に椿と共にやっていたらマスターしていた
「これは、良い想い出だ~」
「それはなによりだ」
「うんうん…私は満足したよ!!待ってて良かった!!」
「へ~」
「よいしょ!!」
「ぬぁ!?」
カガリが握っていた手を離して、飛影に抱き付いた
「…」
「…」
「おい」
沈黙に耐えられなくなった飛影
「こんだけ充電しておけば大丈夫でしょ!!転生しても絶対飛影のことは覚えてるよ!!」
「記憶が無くなるんじゃないのか?」
「ふふ…この私っていう魂に刻み付けたから」
「あ~それは強いな」
「飛影が飛影でいれば、絶対わかる」
「へ~」
「まぁ…ちょっと早いけど逝くよ」
「…そうか」
「楽しかったよ飛影」
「そうか…俺もカガリに会えて良かったよ」
「うわぁ~お…不覚にもドキドキしちゃったよ」
「ん?」
「じゃあ《またね》飛影」
「おう《またな》カガリ」
「おっと!!その前にドキドキさせたお返しだ!!」
「ん!!?」
「バイバ~イ」
魔力量から予想したのか、カガリはちょうど花火が終わると同時に消えていった
悲しみも無い、本当にちょっとだけ別れる程度
また明日
のように気軽な別れであった
「なんなんだあいつは…」
最後の最後にキスされた飛影
最後の最後までカガリには引っ掻き回されていた
「勝てねぇな~」
はぁ…と溜め息を吐いた
さよならカガリ、また会う日まで
次回から年月的な意味で加速します