災厄と化物
災厄と化物
二人は出会います
災厄の子が生まれて5年
少年は元気に育っていた
「あは…あはははは!!」
「ぶち殺してやる!」
そう元気に殺し合いをしていた
相手は13人の大の大人
有り体に言えば盗賊に位置する者達
しかし殺し合いという表現には語弊があった
盗賊の一人が武器を構えて少年に突撃する前にその首は胴体と分かれていた
首を力で木の実でも摘み取るようにもぎ取った
これで18人目
この盗賊グループは元々30人の大盗賊団であったがただの五歳の子供に手も足もでずにただ虐殺されていた
「あはははは!!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」
少年は掴んでいた生首を強引に二つに割る
当然卵のように脳が現れ少年はそれを千切り口に入れる
「狂ってやがる…」
ニィ…とその言葉に反応するように狂ったような笑みを浮かべる
「あは…」
《炎舞》
少年の手から炎が吹き出る
災厄の存在として生まれた時から使える炎の魔法
「魔法…使い…!!」
盗賊達に焦りが生まれる
魔法使いは人間としての器に納まらない
超越した存在である
「狼狽えんじゃねぇ!!」
《アイアンブレス》
一際身体が大きい盗賊
この盗賊団のボスである存在
ボスである彼も魔法使いである
怒号と共に口から鉄の破片が幾重にも現れて少年に襲い掛かる
一つ一つが直撃すれば一撃で五歳の小さな身体を粉々にするであろう大きさ
ブレスとして広範囲に拡がり少年に逃げるスペースは無い
「あははは!!」
《炎舞》
笑い声と共に巨大な赤い火柱が少年の目の前に現れる
「な…!!?」
ボスの放った鉄の破片は全て火柱に溶けて消える
あまりにも違いすぎる魔法の威力
「逃げるぞ!!こいつただのガキじゃねぇ!!災厄だ!!」
「あはははは!!」
火柱の中から狂ったような笑い声
盗賊達は一瞬で恐怖に包まれた
背中を向けて不格好でも無様でも関係なく全力で逃げようとした瞬間
《炎舞》
火柱が崩れ炎の雪崩となって盗賊達に襲い掛かる
「くそがぁ!!」
《アイアンブレス》
ボスである盗賊は全魔力を開放
打ち勝たなくとも逃げるために相殺すればいいと考えた一撃
巨大な岩石のような鉄の塊を放つ
巨大な鉄の塊ならば自身の身体も隠せて、炎からも守る壁として最良だったが災厄には通じない
鉄の塊が一瞬で消え去った
相殺なんて自惚れを完全に打ち砕いたと同時に炎が盗賊達全員を包み込んだ
辺りには焼け野原のみが残った
少年を産んでしまった一族は遺跡の守人と呼ばれて盗賊達に恐れられていた
広大な森の中に100を越える遺跡がある
それは過去の魔法使い達が作ったと言われる遺跡
金銀財宝は勿論のこと、魔法の道具や遺産と呼ばれる魔法が使えるようになる道具等が眠っている
しかし少年を産んだ一族はそれを守るために遺跡を囲むように暮らしていて盗賊達は近づくことができなかった
しかし五年前一人の生き残りすらおらず滅びを迎えた
こぞって盗賊達は遺跡の宝を目指した
そして少年は五年間ずっと餌がやってくるその森に住んでいた
趣味は遺跡攻略
遺跡を攻略して宝を入手することで盗賊達はその宝を入手しようとやってくる
餌が向こうからやって来るのだ
遺跡には幾重もの人為的な罠や自然的な罠があり侵入を拒む
規模と罠と宝によってランクで分けられていて、Sが最高、Cが最低のランクで四つある
見分け方は簡単だ
自然的な罠があればAクラス以上
自然的な罠が無ければBクラス以下
自然的な罠は宝に宿る魔力が漏れでて長い時間をかけて存在が変質したものである
それだけ大きな魔力をもつ宝が眠っている
少年が狙っているのはAクラス以上
理由はお宝が希少価値があるため狙われやすい
少年の首には盗賊達の中で懸賞金がかけられている
賞金は10億
一生遊んで暮らせる額である
「暇…だ」
殺し尽くすと暇になってしまい少年はその場に倒れるように寝る
これは普通に寝るよりも餌がやってくるためだ
知恵をつけていた
「あら?こんなところに子供がいるわね」
背後
というよりも倒れているので足の先
気配が現れた
「!!?」
声をかけられるまで気付かなかった少年
反転しながら飛び起きる
「なんだ…お前…?」
少年と対峙しているのも少女だった
黒髪の着物を着た少女
外見は少年より少し歳上の八歳程の少女
「ふふ…私?…私は静紅よ。あなたは?」
「あは!!」
《炎舞》
少年は笑うと静紅に向かって炎の槍を投げつける
「ひぇ…!!?」
《完全領域》
しかし少年が放った槍は静紅の薄透明色の防御壁に防ぎきられた
「あはははは!!」
防ぎきられた
初めて攻撃を止められた
それは少年の中で初めての経験で心の底から笑いが込み上げる
「びびびビックリしたわぁぁ!!?」
しかしその少女はその場に座り込んでいた
腰が抜けたのだ
「私は名前を尋ねてるのだけど…聞く耳持ってくれないし…」
次々と放たれる赤い槍
全ての攻撃を防ぎきる
「あは!!」
狂ったような笑み
「まぁ…こんなところに子供がいるってことは災厄で最悪の子供よね…」
「あは!!」
頷くように笑う
「面白いなお前!!」
「会話フェイズ入ったの?」
手を休める少年
ギラギラと刺すような殺気が消えていく
「私は静紅、盗賊よ、この近くにあるSランクの遺跡のお宝が欲しいのだけど手伝ってくれないかしら?」
「…もっと殺し合え」
「…」
会話が通じない
言葉は理解しているが我が強すぎるのだ
「それで名前は…?」
「名前?」
会話は繋がったが首をかしげる少年
「名前を持ってないの?呼び名よ、え~個人を特定する記号みたいな」
「知らん、殺し合え」
二言目にはそればかり
溜め息を吐く静紅
「じゃああなたって勝手に呼ぶわ、あなたは災厄の子よね?」
「そう呼ばれる。それが名前でいい」
てきとうである
即決でてきとうである
「名前は大事なものよ?もっとよく考えて決めなさい」
笑顔の静紅
(私…お姉さんっぽいわ!!)
盗賊である静紅だが外見が子供であるため、獲物と見られることは多いがお姉さんのように接することができるのはこれが初めてである
「ふぅん…そんなもんなのか…」
少年自身も初めての会話
敵意も殺意も感じない会話に戸惑いながらも接する
「そんなもんなのよ…」
微笑む静紅
同時に静紅と少年はある一点を見る
「おい…」
「わかってるわ…」
200メートル先
哀れな餌を発見した
森で視界には捉えていないが気配は感じている
「そういえば…遺跡攻略一緒に手伝ってくれるの?」
「…いい、お前面白い…殺せないし」
会話をしたことがない少年
少したどたどしいがはっきりと肯定した
「いいわ…契約成立ね、相手の数はわかるかしら?」
「殺すぞ…20」
200メートルの範囲
少年にとっては見ているのと同じである
「私があなたに期待してるのは…あなたなら巻き込まれても死なないからよ…死なないでね」
妖艶に微笑む静紅
魔力が解放される
「殺す…か?」
同じように魔力を高める少年
僅かに殺気が放たれる
「あらあら…」
静紅は微笑みながら同じように僅かに殺気を放つ
そして、同時に動き200メートルの距離を一瞬で詰める
『な…!!』
盗賊達にとってはいきなり現れたように見えて
「あはははは!!」
その瞬間には一人が少年によって真っ二つに身体がちぎられた
「ふふ…」
そして違う一人も上半身が手刀で爆散された
「あは…あはは…あはははは!!」
血を浴びて
身体をちぎった感覚を感じて
声にならない悲鳴を聞いて
絶望した表情を見て
そして気持ちよい程の殺意と敵意を向けられ少年は心の底から楽しくなってくる
笑いが止まらない
「あは!!殺す殺す殺す殺す殺す!!全員殺す!!あはははは!!」
「あらあら…楽しそうね…ふふ」
盗賊達は構えるまでに身体を布のようにちぎられ
身体が爆散し
構えた時には残るは二人だけとなった
「この化物がぁ!!?」
恐怖で顔を歪ませながら盗賊は叫びながら玉砕覚悟で突撃する
しかし叫んだ言葉
「あは…!!?」
少年が笑いながら殺そうとした瞬間
背筋が凍った
少年は本能のままに全力で空に跳躍
「ふふ…ふふふ…ふふふふ…今、何て言ったの…」
魔力が爆発したように解放される
同時にそれだけで殺せるような膨大な殺気が放たれる
魔力の解放により二人の盗賊は吹き飛ばされ木に激突
「私は静紅…化物なんかじゃ…ない!!」
力が込められた手刀一線
巨大な衝撃波が放たれて木々と共に盗賊二人を跡形もなく消し飛ばす
「あは…あははははは!!!」
それを上空から見た少年は笑う
自分よりも強い存在
同じように魔力を全開放
向けられた殺気に静紅は反応
「…あなたも殺すわよ」
冷たい目
そして強大な殺気
災厄として望まれず生まれた少年と
化物として望まれず生まれた少女
似たような境遇に生まれ育った二人の殺し合いは二人が力尽きて倒れるまで続いた
この出会いはこれからの少年にはとても重要で原点であった
名前 無し
種族 災厄の子供
所属 遺跡の盗賊
武器 なし
魔法 炎舞
人の想いによって災厄となった少年
眼に入ったものは皆殺し
殺すことが何よりの喜び
ただ常時敵意と殺意を受けていたため、敵意や殺意をもたないものには違和感を感じてしまう
近距離が得意な間合いで引き裂くことやちぎることが大好き
キレるスイッチ 無し
力 A+
器用 A
魔力 S
魔法 A
素早さ A
近距離 A++
中距離 B
遠距離 B