脱力感と椿の決意
真面目に更新がやばいです
見てくださりありがとうございます。
「…椿」
表彰式から三日後
それは飛影が戻ってきた時である
夜にスノウと同じ部屋で寝ていた椿の肩を飛影が揺らした
「ん~?」
寝起きはいいのかすぐに起き上がる椿
深夜三時
眠りが深くなった時であり、椿は欠伸をしながら眼を擦る
「飛影君?…どうしたの?」
声で飛影と判断した椿
まだ眠そうに欠伸をしている
飛影はベットの横に佇んでいた
なにか言いたそうな表情で口を動かそうとして止めている
「…椿は今の生活は楽しいか?」
十秒ほど経った後に飛影はたずねた
「ん~?楽しいよ」
まだ眠気で頭が回転していない椿はあまり考えず一言で答える
「…そうか」
飛影は納得したように頷く
「どしたの?」
飛影の少し変な様子が気になった椿
本を読むようになって飛影は変わってきたため、確証は無いが気になるレベルには様子がおかしい
「なんでもない」
それに対して飛影は一つ頷くだけで反応は見せない
「今幸せか?」
続いての質問
思惑はありすぎるが椿は眠いために気付けない
「うん」
何も考えずに答えてしまう椿
それを見て飛影はやっぱりか…という表情を見せる
「それがどうしたの?」
再びの椿の質問
「いや、何でもない…とりあえず、またな…お休み」
飛影は恐らく初めて見せる優しい微笑みを浮かべる
しかし、椿はもはや眼を閉じている
さすがに子供のためしょうがない
「おやすみ~」
椿はそのまま倒れて睡眠を再開する
「さて…と」
飛影の持ち物はコートの中にあるいろいろなモノと魔剣を二本腰に差している
ギルギアとの戦いでボロボロになった服も新調しており綺麗な格好である
「いくかな…」
飛影としては別れを済ませたつもりである
城には侵入してやってきたので帰りももちろん侵入経路である窓から飛び降りる
「…次は…」
飛影は着地して、コートのポケットから図書館から奪った地図を取り出す
見開きになっている世界地図から今いるアイステンペストの位置を調べる
幸いにアイステンペストは比較的に見つけやすい
飛影は現在位置を割り出すと付近の国を探す
「…」
(駄目だ…どこが面白いのか…わからん…)
「おいつば…」
飛影はてきてうに決めさせようと椿に呼び掛けようとした
(…いないんだった…忘れてた)
飛影はてきてうに魔剣を上に投げる
クルクルと回りながら地面に落下する
「あっちでいいか」
魔剣が指し示す西へと飛影は向かう
(強いやついるかな~)
飛影は逆立ちをして歩き出す
筋肉トレーニングである
ダドマとギルギアとの戦いでの敗北は飛影を大きく変えていた
そして幸いにも、飛影が向かうであろう先は大陸最強の国で大陸最強の剣士がいて、最高峰の剣である魔剣所有者がいる国であった
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
一週間後
「あれ?なんで飛影君が迎えに来ないんだろう…」
一週間前のことは夢だと認識していてしかもあまり覚えていない椿は呑気に城で飛影を待っていた
スノウとしては椿が滞在する期間が延びているためけっこう嬉しかったりする
「確かに遅いね」
飛影が迎えに来ても永住を説得する気満々であったスノウ
さすがに遅すぎるとは思っていた
「…怪我して動けないとか!!?…ってないね」
椿の中ではギルギアに吹き飛ばされたのが最後に見た姿であり軽く国から吹き飛ばされて重傷で動けないかもしれないと
しかし、飛影に限ってそれはありえないと自己完結する
「とりあえず、城の者に捜させる?」
「お願い!!」
スノウの提案に頭を下げる椿
「わかったわ」
椿を安心させるためにすぐにでもとスノウは立ち上がる
「私も行く!!」
完全に自分のことなのでスノウばかりに任せてはいけないと椿も立ち上がる
二人で手を繋ぎ走る姿は城の者にとっては微笑ましいことであった
運悪く捕まったシュガーが飛影捜索を頼まれた
一応はかなり有能な部類のシュガー
ものの二時間程で飛影の足取りを掴んできた
その事を聞いた椿とスノウは嬉しそうな表情をしているのに対し
シュガーは言いにくそうな表情であった
「彼はすでにこの国を出たらしい」
『え?』
一瞬だけだが、確かに椿の時が止まった
「…一週間前にすでに旅立ったそうだ、門番が彼を見たとのことだ」
一週間前と聞いて椿は夢だと思っていたことが頭に浮かぶ
「…夢じゃなかったんだ…」
椿は肩を落とし
「よし!!追いかける!!」
すぐに立ち直る
「駄目!!」
「それは駄目だ!!」
しかしすぐに二人に却下される
「椿はただの子供でしょう!!?」
アイステンペストの雪山
それはただの人間の子供である椿が一人で下山することは不可能である
それに下山が成功してもその後は椿ではとてもじゃないが生きれない
山賊か盗賊、飢餓に疲労とあげればキリが無い
「それに君が今から追いかけたとしても到底追い付くなんて不可能だ」
シュガーは魔王の試合を見たので常識外れすぎる飛影のことは一端だが理解はできた
ただの子供の足と体力で追い付ける筈がない
「でも!!」
椿は二人の正論を理解できるし、自分でも無理だと思ってはいる
しかしそこは退けないものがあった
「無理だ…諦めろ」
シュガーの正直で残酷な言葉
傭兵を雇うにも椿の現資金ではそれも一週間程度
「…わかった…諦める」
椿は理解はしている
だから引き下がった
しかし
「今は諦める…シュガーさん…私を鍛えてほしい」
諦めさせたのはシュガーの思惑通りだがその後の言葉は予想外である
「飛影君に追い付けるように…一人でも生きていけるように」
椿の眼
それは本気であった
覚悟を決めた眼である
「…じゃあ私は椿が立派になるまで城に住む許可を取ってくるね」
未来予知などの能力は無いが、先が予測できたスノウは父である王の元へと駆け足で向かう
「いいだろう…だが根負けしたらすぐに止めるぞ」
スノウの予測通りにシュガーは椿の願いに応える
「ありがとう!!」
「それと君には知識が無いからな…姫様と一緒に勉強もすることだ」
「頑張る!!」
そして飛影を一発殴る
と椿は覚悟を決めた
今までのように飛影に護られるだけではないようになるために
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
その頃飛影は
シュガーの予測とは逆にまだアイステンペストから100キロも離れていない小さな村の近くの森にいた
飛影の周りにはマジックアイテムがその希少さを嘲笑うかのように大量にあった
飛影はてきとうにあるものを全て盗ったのでどんな効果があるのかを知らない
逆立ち歩きでここまでやってきたが、飛影は元々馬鹿みたいに力が強くあまり意味は無いように思えた飛影はトレーニングに有効活用できないかを考えての行動である
発動させて効果を理解して、ポケットにしまう
そんな行動を現在四日間ぶっ続けで行っている
休み無しで行った結果か、それこそ無数に感じたマジックアイテムも飛影の周りを囲む程度には減っている
「ん?」
飛影はオペラグラスを発見する
手にとって魔力を注ぎ付ける
「…」
それはマジックアイテムの説明書だった
オペラグラスを付けている方の視界にはマジックアイテムの効果が浮かび上がっていた
飛影はその場で肩を落とし、物凄い脱力感に襲われた
(最初にこれを見つけてれば…)
飛影の考えている通りに最初にこれを見つけていれば時間は半分以下に短縮できた
溜め息を吐きながら見渡して効果を読んでポケットに入れていく
(ん?)
飛影は四つのミサンガに眼が止まる
効果には重さ変化と記載されていた
「…」
飛影はミサンガを付ける
説明書のため使い方も記載されていた
「一トン」
飛影は説明書の通りに重さを宣言する
瞬間
ベシャと飛影はその場に倒れた
(…なるほど)
ミサンガ一本が重さ一トンになっている
合計四トン
飛影は重さで倒れたのだ
(…これは使える)
飛影は倒れながらも一つ頷いた
いいものを手にした飛影君
更に飛影の足取りは遅くなります。