進化と成長
更新がまじでスイマセン(;つД`)
追い付かない…追い付かない…
結局のところ控え室にて飛影と静紅は本を読んで過ごしていた
「子供っぽく戦わない?」
静紅のいきなりの提案
試合に呼ばれて控え室からリングまでの道中のことである
「つまり、簡単に言えば私達は所謂子供じゃない?…けど私達は子供らしくないから子供らしく見せましょう…ってこと」
「意味不明だ」
飛影がそう発言するのも無理は無い
本当に唐突であったのだ
「面白そうだと思ったのに~」
どうやら乗ってくれない飛影に静紅は肩を落とす
「確実にお前頭馬鹿だな」
「飛影君酷いわ~」
ヨヨヨと袖で目元を隠し泣いた振りをする静紅
「くだらん」
はぁ…と小馬鹿にしたような飛影の溜め息
そして歓声が鳴り響くリングへと入場する
二戦目の相手は戦えるとは思えない病弱そうな肌の色が悪い15歳程の少女と傭兵のように胸当てや腕など所々に鎧を身に付けた男である
〈さぁ…今回のバトルは強すぎる子供達…飛影選手と静紅選手VS一人だけで勝った傭兵スザクと悠々と見学していた病弱少女ステラの戦いだぁ!!平均魔力値は二万八千と四万です!!しかし前回の試合で魔力差で僅かに負けていましたが圧勝した飛影選手と静紅選手がいるためどちらが勝つかはわかりません!!〉
飛影と静紅の相手であるスザクは武器は持っていない
手甲に包まれた自らの拳が武器である
「…雨が降りそうだ」
しかし飛影は興味無さげに空を見ている
「雨…あらほんと雨雲が凄いわね」
やはりどこまでも緊張感がない二人
「先に言っておくが戦うのは俺一人だ…こいつはすぐにリングアウトするから攻撃しないでほしい」
スザクの提案
ステラは戦うことはできず、病気を治すための手術代を払うためにこの大会に参加している
スザクが一人で戦い優勝するつもりである
「べつにいいわよ?あくまでも私達は戦う人を倒すだけだから」
微笑む静紅
倒すのが一人ですむなら楽で助かるのだ
飛影はまだ空を見ている
雲の動きが早く雨が降り始めるのも時間の問題である
空を睨む飛影
〈試合開始!!〉
試合開始が宣言されると同時にステラはリングから出る
「さぁて…やろうか!!?ガキだからって手加減はしねぇぞ!!」
開幕魔力を解放するスザク
「あらあら?」
「…へぇ」
全魔力を解放したスザクは垂れ流し状態の飛影や静紅の二倍以上の魔力である
微笑む静紅と笑う飛影
余裕は消えない
「実力差がわかるんだったら棄権しろよ…弱いものいじめは苦手なんだ」
余裕を見せてる飛影と静紅
スザクからすれば感じる魔力量からして敵では無い
「…舐めてるのか?」
スザクの言葉は飛影に喧嘩を売るには充分なものである
「ど~ど~!!」
危険を察知した静紅は飛影の頭を地面に無理矢理叩きつけて動きを封じ込める
「っ!!?」
「落ち着いてね飛影君…」
静紅は笑顔のままだが飛影が起き上がろうとしてもびくともしない
「良いこと教えあげるわ」
「あ?」
静紅はそのまま飛影の耳に顔を近付けてボソボソと呟く
静紅は呟き終わると立ち上がる
「…あら?あなた優しいのね…待っててくれたんだ」
「なんだ?喧嘩か?…ガキが喧嘩するもんじゃねぇ」
「あなた…意外と優しい人間ね…でも、加減はしないでね?負けた時の言い訳に使われたら面倒だから」
妖艶な笑みを浮かべる
「あぁ?」
「それじゃ…頑張ってね、飛影君」
静紅は一歩退くと同時に飛影が起き上がる
「これ…頼む」
飛影は再びコートを脱いで静紅に渡し眼を閉じて魔力を解放する
蛇口を少しずつ少しずつ捻るように
魔力を解放する
今までに行ったことが無い魔力のコントロール
「ん!?」
最初に違和感を感じたのはスザクであった
自分の全開の魔力に近づいてきている
「こんな感じか…」
眼を開けた飛影
全くの互角の魔力量
今までは垂れ流しか全開しか魔力操作をしていなかった飛影
初めて相手の魔力量に合わせた
「…なるほど」
ゾクリと背筋が震えた飛影
相手と同じ魔力量
今までのように戦いにならなかったものとは違う
「これは面白い」
約二年ぶりの緊張感
「こっちは別の意味で愉快だ」
格下の子供と考えていたスザク
飛影の余裕の表情
そして対峙してわかった威圧感
どちらをとっても自分よりも遥かに上の実力者だと感じ取れた
〈互いに動きません!!緊迫した睨み合いが続きます〉
静紅はリングに座ってお茶を飲んでいた
手出しをするつもりはない
一対一の勝負
「改めて名乗ろうか…スザクだ…傭兵スザク」
「飛影だ…魔王飛影」
「魔王…かよ」
幼い子供が名乗るにはおかしな称号
普段ならスザクも笑い飛ばしていただろうが、対峙したスザクにとってはそれは冗談でもなんでもない
信じるに値する
信じなければならない程の称号である
「行くぜぇ!!」
「来い」
《アシッド》
《炎舞》
二人は同時に魔法を発動
スザクの右手には水の塊が
飛影の右手には炎の塊が作り出される
接近し合い同時に拳を放つ
水が沸騰し炎が鎮火され拳がぶつかり合う
「ぐぅ…!!?」
「はは!!」
全くの互角
しかしスザクは歯を食い縛り飛影は笑った
手甲をつけているにも関わらず互角
スザクはすぐさま蹴りを放つ
「面白い!!」
それを見た飛影も同じく蹴りを放ちぶつかり合う
体重で勝っていたスザクの蹴りが飛影を吹き飛ばす
《アシッド・ウィップ》
その手に水の鞭が形成され飛影を追撃する
「ふん…」
予測不能な変幻自在の軌道で襲ってくる鞭を飛影は殴り落とす
ジュウと何かが焼ける音と変な臭いと僅かな痛みが飛影を襲う
「なんだ?」
「俺のはただの水じゃねぇ…酸だ…触れると溶けるぜ」
鞭から一滴の酸が滴りリングを溶かす
「なるほど、理解した」
「距離を詰めたら危ないからな…まだまだ行くぜ!!」
《アシッド・ウィップverダブル》
両手に鞭が形成
同時に二方向から攻める
《炎舞・掌》
飛影の両手を炎が包む
人間の眼の特性上絶対に追えない軌道で放たれる鞭を飛影は打ち落とす
しかし蒸発まではいかず少し蒸発してもすぐさま復元される
《アシッド・水鉄砲》
打ち落としている飛影にスザクは追撃する
背後に巨大な酸の塊が出現した
巨大な塊から小さな針の形をした酸が射出され飛影に襲い掛かる
「ちぃ…!!」
《炎舞・炎球》
飛影は後退しながら魔法を構築
全て焼失させようと口から緑色の炎の大玉を放つ
「甘い!!」
巧みな操作でスザクは炎の軌道線から離れて鞭を飛影に直撃させる
「ぐっ!!?」
吹き飛ばされる飛影
《炎舞・昇揚》
両手足に炎を作り出しバーニアの要領で制止
リングアウトを免れる
(やっぱり予想通りね…)
静紅はお茶をすすりながらその様子を見ている
飛影は戦闘経験はたったの三回
静紅
アギト
そして今回のスザク
他のは戦いではなく虐殺である
つまり飛影は恐ろしく戦闘経験がない
同じ実力にすると戦闘経験に勝るスザクが押している
これからを生き残るには経験は何よりも必要なものである
静紅はもしかしたらという程度でためしに行っていたが静紅の予想が当たった
(飛影君にとっては良い経験…もし負けても私がいるし)
「あははは!!お前…強いな!!」
楽しそうに笑う飛影
(だから今は楽しんで戦いなさい)
静紅は懐から煎餅を取り出し再びお茶をすする
飛影は速度に任せてスザクに接近
「軌道が単純すぎるぜ!!」
飛影の一撃は片手で弾かれた
その瞬間背筋が凍った
「っ!!」
飛影が後ろに跳躍する前にがら空きになった胴体に酸を纏った一撃が直撃する
《炎舞・防御》
「ぐっ!!?」
酸を無効化するために咄嗟に炎を生成
しかし咄嗟にであったため充分な魔力を込めることができず完全に酸を無効化できずに飛影は吹き飛ばされる
その方向は静紅がお茶をすすっている所であった
「あら」
静紅は片手で飛影を受け止める
「飛影君…攻めすぎよ…まずは受けに回って相手の動きをよく観察すること」
「わかった」
攻撃が直撃した飛影の腹は焼けただれているが戦えないほどではない
飛影は静紅からある程度距離を放すと腕を下ろし自然体になる
飛影はまだまだ子供であり、発展途上
強くなるのはこれからである
スザクは両手足に酸を纏うと飛影に接近
様子見と速度と連射を意識した拳を放つ
「…」
飛影はただそれをよく観察して避ける
反撃は一切行わない
腕は下ろしたままで回避する
「ふっ!」
スザクはあらかた眼が慣れたであろう飛影へ拳から酸を射出しその後を追うように拳が襲う
少しのパターンの変化
「っ!!?」
拳が飛影の頬を掠める
更にパターンを変えてスザクは攻め続ける
酸を射出した軌道とは別の軌道で拳を放ったり
拳ではなくフェイントをいれて蹴りを放ったり
足から酸を作りリングの下を移動させ飛影へ奇襲をかけたりと
しかし飛影には最初の一発しかそれもかすらせることしか出来なかった
惜しいところまではいけるのだがかすることすらない
五分以上スザクの一方的な展開の試合
しかし先に焦れたのはスザクであった
さっさと決めてしまおうと大振りの拳を放つ
飛影は初めて反撃にうつる
迫りくる拳を態勢を低くすることで避けて同時に距離を詰める
《炎舞・双掌》
両手に炎を纏い双掌打をスザクの胸に直撃させる
「ぐぅっ!!?」
胸当ては粉々に砕けちり吹き飛ばされたがダメージは無く、吹き飛ばされながらも態勢を安定させ魔法を構築
《アシッド・キャノン》
手に魔力を集中し着地と同時に放つ
巨大な酸の塊を放つ
「わかってきた…」
飛影は避けるのではなくスザクの腕を軽く叩き向きを変える
ただそれだけで飛影に攻撃は当たらない
「常に全力の意味はないのか…」
そのまま飛影は回転し側頭部目掛け裏拳を放つ
「くっ!!?」
後ろに倒れこむように反ることで回避するスザクは倒れながらも飛影へ前蹴りを放つ
飛影はそれをわかっていたように足で蹴りを流す
「身体の全体的な動きと魔力の流れで先を予測…最小限の動きで対応…生じさせた隙を叩く」
飛影の拳が打ち下ろされスザクの顔面を捉える
「がっ!!?」
地面に身体が叩きつけられリングにヒビを入れる
《アシッド・レイン》
しかしまだ終わらない
《完全領域》
スザクは残りの全魔力を使って魔法を構築
「…雨…か?」
リングだけを被うように雲が出現し雨が降り始めた
「っ!!」
《炎舞・防御》
雨に当たり鋭い痛みを感じた飛影はすぐに炎を纏う
静紅はそれよりも早く魔法を展開していた
「俺に酸は効かないからな…」
ゆっくりと起き上がるスザク
雨がリングを溶かし始める
「ここは…俺の領域だ…そう簡単にはやらせん!!」
雨が流れを変える
「っ!!?」
無数の雨が意思を持つように飛影へと襲い掛かる
《炎舞・壁》
炎の壁を発動
「甘い!!」
しかし雨はどこからでも侵入し襲う
壁とは逆方向から雨が襲う
前後左右に上からと五方向からの攻撃
壁の防御が追い付かない
「…」
諦めたかのように飛影は腕を下ろす
「うざい」
《炎舞・三歩炎進》
飛影の足を炎が纏う
《一歩》
地面を踏みつける
炎が爆発し周囲の雨を吹き飛ばす
《二歩》
火柱が立ち上ぼり酸の雨を降らせている
雲を燃やし尽くす
《三歩》
最後の一歩
炎の柱が立ち昇る
空高く延びて雨雲を焼失させる
「…」
唖然とするスザク
「雨は嫌いだ」
桁が違っていた
「俺の負けだ」
一番強力な魔法が打ち消されてもう手は残っていない
「良い天気だ」
<試合終了ぉぉ!!まさかの二対二の戦いが一対一になってしまったがかなり接戦した勝負でした!!勝者は飛影&静紅ペアァァァ!!>
空は晴れてい日の光が照らしていた
飛影が雨を嫌いな理由は炎の魔法使いだからです