子鬼
さて、話数的にはあまりハチャメチャと変わらないですが、何故か倍以上の時間をかけたこの災厄
次回最終回です(あ…一応、3部作なのでご認識ください)
メリアの中で、一番高級とも言えるホテル
何でも世界一のメリアの中で、一番高級なホテルである
一泊100万以上
全階全てがスウィートルームという、メリアに来客する王族が好んで宿泊するというものであった
そんな中で飛影は目覚めた
「あれ?…ふむ、ラインには会えると思ったが、いきなり地獄送りか…」
カガリのこともあり、死後どうなるかは大体把握していた飛影であるが、眼を覚ました瞬間に高い天井が見えた瞬間に大体の状況を察する
(何か身体に違和感感じるけど…)
「よっこいしょ」
と、飛影は起き上がる
魂だけになっているから、少し感覚が変わっているのであろうと気にしながらも周囲を見渡す
「…あら……一瞬、助けられなかったと思ったが、助けられたか…というか生きてるな」
周囲を見渡すと、何故か同じベッドで熟睡しているリーベが視界に入り、魔力を探知すると愛すべき娘であるエリアの魔力を察知したため、自身が生きていることを理解する
「ふむ…この身体の違和感はよくわからんが…とりあえず起こすか!!」
起こし方に定評が無い飛影
起き上がって、リーベと距離を離す
そして、当然ながら殺気をリーベに放つ
常人であればそのまま永眠となるか、精神が崩壊するほどの殺気であり、いつもであれば反射的に飛び起きて殺気の主である飛影を殺しにかかる身を削った起こし方である
「zzz」
しかし、予想に反して起きようとしないリーベ
「あれ?…もしかして…」
吸血鬼の中でも例外中の例外であるリーベ
万単位で死んでも問題ない彼女は殺気をぶつけられようとも特にどうでも良いのである
「…だから虫つけられたんじゃないか?」
軽く溜息を吐きながら、リーベの頬を叩く
殺気にも反応しないのであれば、物理で起こすしかない
というよりも、そっちのほうが当たり前なのである
「んぅ?」
「おはようリーベ!!色々と聞きたいことがあるから起きろ!!」
「…あぁ…おはよう飛影」
寝ぼけ眼を開いて起き上がる
どっからどう見ても外見通りの幼女のようである
「しかし…貴方凄いわね…」
枕元にあったワインをあけてラッパ飲みをするリーベ
「何がだ?」
「ふぅ…眼が覚めたわ…えっと、あの後のことよね」
一本丸々飲みきったリーベ
冷蔵庫から新たにワインを取り出して飲み始める
「とりあえず、貴方が死んだから吸血鬼にしたわ」
「…身体の違和感はそれか…災厄の子が吸血鬼か~種族は子鬼にでもしよう」
吸血鬼になったと説明を受けた飛影であるが、特に驚きもしない
身体の違和感と、生きていることを考えると自然と理解できる
「吸血鬼についての話をした方がいいかしら?それとも続きを話したほうがいいかしら?」
「続きかな」
「吸血鬼にした後、貴方をおぶって山だったとこから出たら何か兵士達に囲まれて、貴方が死んだけど助けたことを伝えたら城に招待されそうになったから断って、そしたらここに連れてこられて…今に至るわ」
少ない説明であったが、実際の内容はもっと濃かった
飛影をおぶって山から出たところ、警戒というか心配していた兵士達がリーベに群がった
飛影の意識がないことを知った兵士達が慌てながらも、リーベが救ったことを聞いて直ぐに城へと伝令を出し、セリエがパーティを開こうと企画する
他の者達が騒ぎ出すが、そういう面倒なものが嫌いというか人が嫌いであるリーベは拒否をする
負けじと兵士達は城へと歓迎しようとするが、それも拒否
しかし、魔王である飛影を救った恩人をタダで帰すわけにはいかないと、兵士達はリーベとの戦いを開始する
金銀財宝などの褒美が用意できると金で釣ろうとするが、拒否
豪華な御飯が用意できると飯で釣ろうとするが、拒否
豪華な酒が用意できると酒で釣ろうとすると、かなり揺らいでいたが拒否
高級なホテルで1フロア貸切で、更に美味しい御飯と美味しいお酒が山ほど用意できると手持ちのカードのジョーカーを出すと、一本釣り
本来であれば、城に案内できればよかったのであるが、人嫌いであることを察した兵士はここを提案したのである
着いた瞬間リーベは飛影をベッドに投げた後、自分もベッドがどの程度か見極めようと少し横になるとあまりの気持ちよさに直ぐ寝入り
今に至っている
「まぁ…とりあえず何となくわかった」
その説明を聞いた飛影はそこまで理解した上で溜息を吐く
(ここって予約10年先までいっぱいじゃなかったか?)
「う~む、吸血鬼についての話をしてくれ」
とりあえず、忘れることにした飛影
戦いや殺し合いが好きな飛影としては、身体の変化については欲しい情報である
「まず、飛影は私の眷属になったわ。まぁ眷属といってもあんまり意味はないのだけど」
「どうゆうことだ?普通眷属って何か手下みたいなイメージなんだが」
飛影の眷属のイメージとしては、戦闘員A的な役割である
ボスの命令を聞いて忠実にこなすようなもの
「二つあってね。相手に敬意を表して眷属にするパターンと、無理やり眷属にするパターン。といっても眷属にする=自分の弱体化だから最近は眷属にする吸血鬼はいないわね。それで前者は自由意志を持つのだけど後者は傀儡となる。血を与えるときに込める想いで変わるわ」
前者については、多くは吸血鬼が人間に恋して生涯共に居たいという想いで行ういわばプロポーズのようなものである
後者については、敵に使用する。弱体化するが、弱体化してでも傀儡にするべきモノに大して行うものである
「あとは、とりあえず飛影の再生回数は大体1000回くらいかしら?試さないとわからないけど…それと重要なのは貴方の再生回数が増えた代わりに貴方の防御力もかなり脆くなってるから気をつけてね」
2本目のワインを飲みだすリーベ
今度は口を直接つけてではなく、二つのグラスに注いでである
もう片方は飛影が飲んでいた
「それと…大事なのは身体の変形かしら?爪は伸ばせるし翼も生やせるわよ」
リーベはそう説明すると、自ら爪を伸ばし黒い蝙蝠のような翼を出現させる
「魔力を通さなくても爪は鉄を切り裂くし、翼で飛行も可能よ…実現するにはイメージ力が必要よ、なれないと何も出来ないけどね」
「はっはっは!!イメージ力なら任せろ!!!」
黒鋼で既に何かを変形させることには慣れている飛影
爪が伸びることを想像すれば伸びて、翼を生やそうと想像すれば背中からシャツを突き破って翼を生やす
「…普通なら10年くらい必要なんだけどね」
比較対象が普通の人間であるため、それはしょうがないともいえる
「おし、後は慣らすだけだな!!そういえばリーベ、家に来ないか?特に目的が無ければ移住食は保障するし、俺のほかにも枠から外れてる絶対強者級がいるから退屈はしないぞ」
「…人苦手なんだけど・・・まぁいいわ特に目的も無いし貴方と居たら面白いし…条件としてはお酒に関して不自由させないことね」
「問題ない!!」
飛影が貯蔵する酒はメリアの国民一人一人に配ってもまだ釣りは来る
「そう…ならいいわ」
3本目にさしかかるリーベ
飛影のグラスがまだ空いていないことを確認すると、直接口をつけて飲み始める
「あ…」
すると、大事なことを思い出しかのようにリーベはワインから口を離す
「ちなみに飛影でも10年は確実に弱体化するわよ…身体の根本が変わるもの土台が固まりすぎている飛影にとっては拭いきれない違和感があるはずよ」
「ぶ!!」
ワインを吹きだす飛影
市民の給料一年分以上に相当する布団がワインで赤く染まる
「…え~と、取り合えず殺し合いしないか?1000回分」
死活問題をぶっちゃけられた飛影の提案にリーベは薄く笑う
「その提案最高ね」
さて、次話はどうなるか…まだ決めていないので頑張ります