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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
鬼編
120/122

リーベ

皆様

明けましておめでとうございます


お陰様で無事に新年を迎えることができました

今年もどうかよろしくお願いします

いい年になりますように


「ほえ?」


異変に気付いたのは安眠していたはずの椿である

リンクをリタに移したとはいえ、元々飛影の寄生者である椿にとって宿主である飛影の危険には敏感である


「むにょ…?」


ただ、それは椿が起きているとき限定である

自分の身体が消えかかっているが、寝起きの椿はそれに気付かない

大きくあくびをすると、そのまま二度寝に移る


==========================================================================


飛影の最後に放った一撃が弾けた瞬間

空が黒く染まる


「っ!?」


いきなり、黒く染まることより上空に現れる魔力に驚きが隠せないカルテ

先程の矢より遥かに強い強大な魔力

それは、最初に感じた飛影の馬鹿げた魔力と同じである


「首を刎ねたのに、生きてるだと…」


その発信源は、首を失った飛影であった

災厄として生まれた飛影は、心臓すら動いておらず脳だけで生きている

そのため、体と首が離れても一定時間は生きていける


そして、空を埋め尽くすのは無数の無炎の槍

一発一発がデスキアやカルテを滅ぼすことが可能な一撃である


残り30秒


無数の槍が無数の小蝿となったデスキアを追って降り注ぐ

飛影の先程の一撃は、光速に匹敵する槍よりも速く風がデスキアを凪いでいた

それはダメージを与えるためではなく、殺しつくすための風である

デスキアの体には飛影の魔力が染み付いており無炎の槍はそれに向かって降り注ぐ


無数の小蝿となって逃げ惑っても全てがターゲットとなっているデスキア

丁寧に一匹一匹と無炎の槍で貫かれ、分身が殺られていく

飛影の頭を潰せば、それで終わりであるがカルテにも風は当たっており無炎の槍はカルテにも襲っていた

山一つでは足りないほどの破壊力

一つ一つが世界を滅ぼせる威力である


既にデスキアの体は10分の1まで消滅していた


残り15秒


遂に、デスキアは本体である一匹しか存在しておらず、カルテもデスキアとの距離が離れた

既に魔力が尽きたデスキアが人間形態へと戻っていく


「ふざけんなよ!!あいつを殺せばどれだけの人間が助かると思ってやがる!!」


デスキアの叫びは飛影にとっては最初からどうでもいい

脳天へと無炎の槍が突き刺さる


既に小蝿に逃げる魔力も体力も無いデスキアは一瞬で消滅し、同時にリーベに憑いていた虫が消滅する


「ふふ…ついに戻ったわ!!」


消滅した瞬間、リーベから再生力と魔力が元に戻る

飛影が張った結界も飛影が遂に力尽き魔力が解放されただけで崩壊する


「まさか、魔力まで戻るとは思わなかったわ」


リーベとカルテの一対一という状況へと変化した

といっても、カルテも既に一撃食らっており、死に絶えである


「ありがとう飛影、貴方は私にとって英雄よ」


力尽きた飛影の首を優しく抱く


《黒霧》


リーベの体から、黒い霧が吹き出る

それは既に山であったものが平らな焼け野原となった全てを埋め尽くす

飛影が張った結界も既に効力を失っており、黒い霧が広がる


その日、魔界全体に黒い霧が包まれた

あるものはパニックを起こし、あるものは死を覚悟する霧


「貴方は…」


片手は大事に飛影の首を抱きかかえ、片手を上げる

吸血鬼の武器の一つ、爪が伸びる


「死になさい」


膨大な殺気がカルテに放たれたと同時に爪が振り下ろされる

ただの吸血鬼の爪

しかし、相手は吸血鬼の中でも例外中の例外


その一撃は大陸を割るほどである

そんな一撃が、唯一人を狙って放たれる

音速を遥かに超える一撃は爪から衝撃波が発生された


それは、カルテが避けようと考えるよりも先にカルテを真っ二つにする

そして、そのまま大陸を滅ぼす


「…ほんとは、全て滅ぼしてあげたいのだけど・・・飛影が育った世界だし、何よりお酒が美味かったし今回だけは特別よ」


《黒霧・盾》


その衝撃波は黒霧に吸い込まれるように消滅し、周囲に被害は及んでいなかった


(さて…天界のシステムにやられる前にやらないと)


この黒霧で生み出される霧は、言うなればリーベの世界である


通常は、死んだら即天界の管理するシステムによって、魂は天界に送られる

だが、この黒霧の中はそのシステム外である


飛影が死んでからまだ、時間はそこまで過ぎていない

ただの吸血鬼では、死んだものの再生は不可能だ


しかし、吸血鬼の中でも例外中の例外であるリーベの血に、黒霧による魂の保護があれば別である


(…私の吸血鬼としての性能は落ちちゃうけど、飛影を助けれるなら問題ないわね)


リーベは回収した飛影の身体と首をくっつけると、爪を伸ばし自らの腕を切り落とし血を切断面へと垂れさせる

リーベがやろうとしていることは、簡単で飛影を吸血鬼にしようとしているのである

眷族を作る場合、その主人である吸血鬼の能力を少し渡す必要がある


通常の吸血鬼であれば、一人作るだけで吸血鬼としての再生能力は3割ほど弱体化する

5人も作れれば吸血鬼として立派ともいえる

そのため、吸血鬼は自らの身を守るために眷属を作らない


弱体化するのは例外中の例外であるリーベも同様で、現在のリーベは526万6000回再生するが飛影に吸血鬼としての能力を渡せば、526万5000回ほどしか再生しない

もはや誤差であった


==============================================================


「っ!!?」


飛影が死んだ瞬間、異変に気付いたのはリタであった

何かに魔力を吸われる感覚で飛び起きる


飛影と椿のリンクが切れて予め仕掛けられていたリタと椿のリンクが働いたからである


(…魔力吸引?敵ですかね…まさかこの家で攻撃されるとは思いませんでしたが、敵なら殺しましょうか)


少し集中しリンク先を探すと、椿の部屋へと伸びていることを確認する


(椿さんを人質に?…感じる魔力は一つですから魔力隠蔽を行うマジックアイテム保持者と考えるべきでしょう…相手に気付かれないように一瞬で魔力を解放し、一直線で椿さんの部屋へと突っ込んでそのまま椿さんを退避させれば、まぁ問題ないでしょう)


脳内で作戦を決めると、その手に金槌を握り締める


(しかし…シーレイは何をやっているのだか…このぐらいは事前に教えてもらえると助かるのですが…)


リタの武器の金槌

効果は粉砕

そしてリタは魔力を解放すると、言葉通り一直線に壁を粉砕して光速で駆ける


綺麗に壁を粉砕し、視界に熟睡している椿を発見するとそのまま抱き上げ、天井を粉砕して屋外に移動


「ぎょえ!!?…へ?何々!!?」


移動によるGで叩き起こされた椿


「敵です…静かにしてく?あれ?椿さんとリンクが繋がっている?」


騒ぐ椿を視界に入れつつ、敵の動きを観察しようとしていたリタだが、リンク先が椿であることに気付く


「…飛影のいたずらですか…まったく!」


そこでこの屋敷内でそんなことをする人物が、脳裏に浮かび上がり警戒態勢を解く


「…え?…ほんとだ…リタちゃんとリンクしてる…」


リタが落ち着きを取り戻すのと比例して、椿の表情が変わる


「あのクソ野郎!!」


「…ぇ?」


初めて聞く温厚な椿から発したと思えない罵倒であった


「あの野郎ぉぉ!!どっかで死に掛けてんな畜生!!何で私に黙ってそういうことするかなぁぁ!!あ~ムカつく!!!!」


飛影との付き合いが長い椿は、大体の事情を看破する

椿の怒りは勝手にそういうことをしている飛影に対してであり、飛影の心配はまるでしていない


「どうせ戻ってくるだろうから、リタちゃん丁度良いや魔力貰うよ!!」


「え?」


よくわからないうちに、リンクから絶対強者級であるリタの半分ほど魔力が椿に伝わる


「え?これ椿さんの魔法ですか?」


初めての体験に驚きながらも、質問する


「そんな感じ!」


(魔力吸収の魔法ですか…リンクさえ張れば幾らでも吸引できそうですね…今の感じだと…流石に飛影と長年いるあたりそれなりの強者ということですね)


少し勘違いしているリタと、リタから貰った魔力で飛影の顔面を殴りつけてやろうとしている椿である


「そういえば、リタちゃんこれどうするの?」


これ

と椿は下を指差す


壁を突き破る際は、最小限で留めていたが天井を突き破る際手加減を忘れていたリタ

屋根が大破している屋敷がそこにはあった


「…取り合えず、ダドマさんに頼もうと思います」


(シーレイが外出中でよかった…)


睡眠中に妨害されるとキレるシーレイがもしいたら、恐らくリタを殺す気で攻撃しにきているはずである

とりあえず、ちょっと一安心するリタであった




寒いのでお体には気をつけてくださいね




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