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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
鬼編
118/122

山小屋にて


後もう少しで決戦ですね

一ヶ月過ぎてしまいまして、本当に申し訳ありません



「おっ起きたか!おはよう」


「ぅ…?…今何時かしら?」


酒場で倒れてから、ようやく眼を覚ましたリーベ

意識を失っていた時間は、13時間ほど

それは、既にリーベから吸血鬼としての再生能力がほぼ枯渇したという証明でもある


「今は、16時ってところかな…リーベの様子を見る限りだと、デスキアが来るのが大体17時前後…丁度日が落ちるくらいにリーベが死ぬってところか」


飛影とリーベは既に人も動物もいない山中にいた

魔王さんのためならば、と快く大工が2時間ほどで作った山小屋でデスキアを待っていた


「なるほどね…だから虫の活動が停止しかけている訳ね…」


リーベの体内を犯す虫の活動も停止しかけている

あくまでも魔法の虫であり、その効果は吸血鬼を殺しきること

リーベの再生能力が枯渇してきている今、その虫の効力も薄れてきているのである

100年以上、付き合ってきた虫である

絶好調かどうかなど、意識しなくとも把握することが出来る


「あと一時間か…飛影…別に貴方、逃げてもいいのよ…死ぬのは怖いでしょ?この死を何度も味わっている吸血鬼の私ですら、本当の死が近くに迫ればこうなるわ」


既に力を入れることも難しいリーベが上げた右腕

その腕は震えていた


「俺か?俺は問題ない…死ぬのは別に怖くないしな…一番嫌なのは守るって決めた奴が死ぬことだ」


既にカガリに一度生かされた飛影

自分を置いて、一人死なれるのはもう嫌だ

それが今の飛影を形作っている


「どうせ死ぬならお前を助けて死んでやるよ」


その笑顔に恐怖は無く、心の底からリーベを安心させる笑顔であった

不思議と震えは消えていた


「あ~…しまった!黒鋼のことを忘れてたな…勝手に死んだら怒られそうだ…」


飛影が死んだとき、寄生者である椿もそれに引っ張られて消滅することは防いだ飛影であるが、武器である黒鋼の後継者を決めることを忘れていた


「あ…あと、コレ渡しとくわ~」


飛影がポケットから取り出して、黒鋼の引渡し先を記述する。

それは魔界の言葉で書かれている遺書であった

内容は、次の魔王となる相手の名前であるデスキア

そして、そいつを倒すべき次期魔王の名であるコトハの名前

他にも屋敷の所有権、

コートの中にある財宝の受け渡し先である静紅

書き加えた黒鋼の引渡し先である彗の名前


ただそれだけであった

他に言葉はなく、自分が死んだ後のことだけを書いてあるだけの遺書


「…」


リーベはそれを受け取ると、ポケットにしまう


「さて…一応遺書なんてものは書いてみたが…準備はしておくか、結界張るだけの魔力はあるか?」


「無いわね…この虫が死ねば魔力も再生能力も元に戻るとは思うのだけど」


現状は唯の幼女であるリーベに結界を張るだけの魔力は残っていなかった


「じゃあ、俺が張るかな~恐らく最強の攻撃力を誇る魔王の最強の攻撃を放つことになるから結界を張らないとこの世界が滅んじまう」


世界一の技術を持つメリアの大工が2時間かけて作り出した木製のドアを飛影はもぎ取る


「じゃあちょっと待ってろ」


純粋に魔力を使用してのみの結界では、飛影の魔力消費が大きくなるため魔術を使用しての結界に方法を切り替える

そのための魔方陣を描くためにドアをもぎ取ったのである


(飛影は…本気で自身の命を懸けてくれてるようね…なぜかしら?ただの吸血鬼よ、しかも出会って数日しか経っていない相手だし)


不思議な性格であった

リーベが生きてきた中でこれほどまでに壊れているモノはいなかった


(まぁ…私も飛影にかけるしかないんだけどね…どうなるか楽しくなってきたじゃない)


ふとテーブルに眼を向けると、何でも世界一を誇るメリアでも希少価値が高いと言われている150年前の赤ワインが置かれている

値段にすれば、1000万以上

そしてその値段以上の味が保障されると豪語されているものである


「ただいまー」


「…早いわね…っというかこれ?」


僅か一分ほどで結界を張り終わってきた飛影

酒飲みであるリーベにとって解消しなければならない疑問がテーブルに乗っている


「あぁこれか?これは、最悪どっちも死ぬわけだし…いい酒でも飲むかと思ってな!俺にとっての思い出の一品だ…価値は忘れた」


それは飛影と一緒に昔、セツネと一緒にめっちゃ美味いなコレ!!と二人で空けまくった酒である

セツネとの思い出の一品

一般的な価値を忘れている飛影だが、飛影にとっては一番価値のあるものである


「グラスが無いんだけど…」


テーブルに置かれているのはワイン一本のみ

グラスなどは置かれていなかった


「あ~これね、これはこうやって飲んでたから、グラスはいらん」


飛影はワイン瓶の口を手刀で切り落とすとそのままラッパ飲みする

そしてそれをリーベに投げ渡す


「全部飲むなよ!一口交代だ!!」


「……わかってるわよ」


全部飲もうとしたリーベだが、大人しく一口分口に含んで飛影へと投げ返す


(…死ねばセツネともう一回遊べるな)


「やっぱりこいつは美味いな」


過去に酔いしれるように大切に一口含み、リーベに投げ渡す


「そうね…価値以上の味がするわね…」


死ぬかもしれない一歩手前での一杯である

リーベも最初は全部飲もうとしたが、一口ずつ丁寧に口に流し込む


「さて、リーベが生きていたら語り継いで貰おうかな」


投げ渡す


「何を?」


一口含み、投げ返す


「攻撃力最強の一撃を…魔力が全開時で放ったことがないからな…これはこれで希少な経験だぞ」


飛影が魔力全開時に全力を放ったことがあるのはたったの一回

カガリが死んだときに見せたダドマとギルギアがいなければ魔界が滅んだであろう無炎である


そして今回見せるのは、攻撃力最強である神の力の最強の一撃に打ち勝った白炎

気紛れに世界を滅ぼせる絶対強者級の、たった一人の相手に向ける攻撃である


「へぇ…じゃあ見せてもらおうじゃない…ただ、貴方が生きて自慢してくれれば最高ね」


同じ絶対強者級であるリーベにとっても魅力的なものである


「ふむ…それもそうか…そうなるように頑張ろうかな…空いたな」


「はぁ!!!?何で私の分を残さないのよ貴方は!!!?」


一口ずつ含んでいたが、いつの間にか飛影が最後の一口を飲み干していた

最後の一口だけは貰いたかったリーベにとって、それは許せることではなかった


「いや~だって一口交代だったじゃんか!!しゃーなししゃーなし!!」


「私と貴方でどれだけ一口に差があると思っているのよ!!!!不公平過ぎるわ!!!」


一般の高校生くらいの飛影

一般の幼女くらいであるリーベ

一口の差は倍ほどに違っている


二人で分け合っていた訳であるが、絶対的な摂取量は違っている


「細かいことは気にすんな!!!」


「気にするわよ!!!!…私のお酒が」


一目でわかるレベルで肩を落として愕然としているリーベ

ただ、あくまでも飛影が提供したお酒であってリーベのお酒ではない


「え~と…俺のコートの中には、他にも酒あるから俺死んだらやるから機嫌直せよ!」


他にも年代モノの希少価値が高すぎるお酒が保存状態が当時のままという最高の環境で眠っている

今では手に入れられない滅んだ国のものもあるのである


「…わかったわ…貴方が死んで私が生きたら全部貰うわ…でも貴方も生きて私も生きたら一番いいお酒を一緒に飲みましょう?」


「そうするか!」


結界の中に入り込んでくる絶対強者級の魔力


『お客も来たようだし』


飛影もリーベもそれに感づいて笑いながら、山小屋を出る

絶対強者級の魔力は、デスキアのものと、もう一つ感知していた

それでも、飛影の決心は鈍ることは無い



残りあと~5話くらい?ですかね



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