貴方なら私の世界を壊してくれる
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
気付くとこの作品2年くらい書いてました
結構長くなりましたが、あと15話位で第二(一?)部のこの物語は終了予定です。
今回はアユリとの決着です
アユリが魔法を展開すると同時に、飛影も同様に魔法を展開する
距離は30メートルほど
フードで隠れているため飛影の表情はわからないが笑顔を浮かべながら魔法を形にする
《炎舞・拳》
《魔氷・剣》
無炎で創られた炎は飛影の拳に纏い、氷で創られた剣はアユリの手に納まる
「さて…本番開始ってところだけど、このまま戦ったら貴方自身どちらが勝つか予想できるかしら?」
戦闘開始といったところで、アユリは肩に剣を担ぎ飛影へと問いかける
まだ、戦闘する気配が無いため飛影も同様に身体から緊張感を抜く
「そうだな…お前の魔法を見た感じ、俺の魔法とほぼほぼ大差ないことがわかった。接近戦だけなら俺に分があるけど、十中八九俺が負けるな…場所の差が大きい」
氷の城という、アユリの舞台
完全武装した相手に対して素手で挑むようなものである
飛影としては、勝つつもりであるが正直に返答する
「あら?…わかってるじゃない。私としても戦える相手は初めてだから戦いたいのだけど、ここじゃ貴方に不利だし…ってことで3つのハードルを与えてあげるわ」
「ハードル?」
どこまでも不敵な笑みを浮かべるアユリ
「そう…私がこれから仕掛ける攻撃3つを防ぎきったら貴方の勝ちでいいわ」
「…却下だ、だけどそうだな…3つ防ぎきったら戦闘開始だったら受けてたつ」
飛影としては、面白い申し出である
どれだけ魔法を使えるのか、相手も同等な魔法使いであるためそれをじっくり見たいというのもあった
「あら?3つ防ぎきれると思っているのかしら?面白いわね」
アユリが剣を上空に放る
ゆっくりと放物線を描く
「まず一つ目のハードルよ!」
《魔氷・空間支配》
氷の剣が床に突き刺さった瞬間
「っ!!」
飛影の足元から鋭い氷柱が伸びてくる
すぐに跳躍して回避するが、天井からも同様に氷柱が飛影に向けて伸びる
《炎舞・炎剣》
拳に纏っていた炎を剣に変更
回転して氷柱を切り裂く
だが一息つく暇も無く地面から壁から天井から氷柱が伸びる
「っち!」
《風華・ブースト》
全身に風を纏い、空中を飛びながら氷柱を捌く
(速い!)
迫り来る無数の氷柱に防戦一方の飛影
《炎舞・双剣》
もう片方の手に炎剣を創り、縦横無尽に襲い掛かる氷柱を切り裂く
切り裂いた氷柱の表面を勢いよく蹴り出し、一直線にアユリへ接近
「無駄よ」
飛影の剣がアユリに届く前に、飛影が切り裂いた氷柱の先から更に氷柱が創られ横から飛影に向けて伸びる
「くそ!!?」
《風華・逆ブースト》
このままでは直撃コースであると判断した飛影
向かい風を起こさせてアユリから距離を取ることで回避
「これで終わりかしら?」
飛影の移動先には無数の氷柱が飛影に向けて伸びてきていた
(まずいって!!)
《炎舞・風華・断絶》
飛影の身体に無炎が纏った瞬間に無炎は飛影を覆うほどの大きさの球状に形を変える
飛影を中に入れた闇の球体へと、無数の氷柱が突き刺さった
一瞬の静寂
《風華・爆ぜろ》
無炎で創られた闇の球体が爆発する
無炎と共に放たれた衝撃波が、氷柱を全て溶かしつくす
「へぇ…今のを防ぐのね」
「かなりギリギリだっての!!」
光すら溶かす無炎+高密度の暴風を纏った飛影自身の最強の防御技
無炎のみでも触れることは難儀であるが、それに全てを削り取る風を追加した奥の手の一つである
「それ持続させないでいいのかしら?」
アユリの問い
それを展開し続けていればダメージを与えるのは困難になるのであるが
飛影の奥の手の一つである断絶には弱点が一つだけあった
「これ、魔力消費が馬鹿なんだよ!」
「あらそう…一つ目のハードルはクリアって所かしら、大きな風穴が空いちゃったわ」
氷の城の半分が今ので解けきっていて、外の吹雪が城の中へと降り注いでいた
「じゃあ、二つ目のハードルいくわよ」
《魔氷・アイスタイム》
アユリが指を鳴らした瞬間
一瞬で飛影ごと城が凍りに包まれた
(まず!!)
氷に包まれた飛影
炎の魔法使いであり、戦闘中であるため高熱を発している飛影は意識はあるものの指一本すら動かせない状況にあった
氷の冷気は飛影を蝕んでおり、気を抜くと一瞬で意識を失う
更には氷に包まれているため、酸素から変換する炎舞や、風も創り出せない
《炎舞・炎槍 突》
断絶で魔法解除して空気中に漂う回収していない魔力を使って魔法を組み上げる
城の外から飛影に向けて槍が発射される
「そんなこともできるのね…でも出力不足よ」
勢い良く突き刺さり、飛影に向けて伸びる槍
しかし組み上げた炎の槍には氷を溶かしきる程の出力は無かった
(充分だ!!!)
弱弱しくなりながらも、槍は飛影の左手に突き刺さる
《炎舞・白炎》
左手を燃やし、それを燃料に無炎が白く染まる
攻撃力最強である神の力、ユイチの奥の手を粉砕した炎がアユリの構築した氷を全て溶かしきる
「…貴方、面白いわ!」
アイスタイムはアユリの奥の手の一つである
それを打ち破れる者がいることすら想定していなかった
更に長年住処にしてアユリの魔力を吸収していた氷の城まで全て溶かしきったのである
(この人なら…)
「お前も面白い!!2回とも死にかけたぞ!!」
「ふふ…じゃあ最後のハードルよ」
《魔氷・最硬を冠するモノ》
アユリの手のひらに小さな氷が創られた
「住むとこも無くなっちゃったし、この世界にも飽き飽きしてきたところだし丁度良いわ…私自身で一番の魔法よ!これは世界を破壊する氷…貴方にこれが防げるかしら!?」
「…っは!!上等ぉ!!」
「貴方の全力を私に見せてみなさい!!」
《炎舞・リミットブレイク》
《炎舞・攻撃力最強という名の証明》
《風華・風を司るもの》
「神の力、攻撃力最強の奥の手に勝った魔法だ!!相手にとって不足はねぇだろ!!」
アユリの魔力が、3分の2に対して
飛影の魔力は、回収した魔力を含めても半分ほど
余裕は無い
左腕を燃やし、白炎を右手に纏う
可視出来るほどに圧縮された風を纏った飛影
白炎は風を食らい拡大していく
アユリの手から氷が離れた瞬間に、その氷は恐ろしい勢いで増殖していく
放置すれば、1時間もあればこの世界を全て氷付けにできる魔法である
(この人なら…私の世界を)
「ぶち破る!!!」
光速にも匹敵する速度で無限に増殖する氷に拳を叩きつける
白炎が氷を溶かし続けるが、氷も増殖し続ける
溶かす速度と、増殖の速度はまったくの互角
「もういっちょぉぉぉ!!!」
《風華・エアロバースト》
自身に纏っていた風を全て白炎に食わせ、放射する
「っ!?」
風がアユリまで届いた
それは吹雪による風か、飛影が放った風かは判断つかないほど弱い風であった
アユリの放った氷は全て溶かされていた
目の前にいるのは、満身創痍な飛影
互いの奥の手は、互いに相殺しきった
「ふっふふふ!!貴方、ここまでやるとは思って無かったわ…」
アユリは右手を差し出す
(この人は、私の世界を壊してくれた…この人と一緒なら世界を拡げられるかもしれない…私はもう孤独じゃなくてもいいかもしれない)
アユリは強力すぎる悪魔として生まれ、その親である悪魔はアユリの力を制御できないと判断し砂漠の世界であったこの氷界に捨てた
常夏の世界として知られていたその世界は3年もすると氷の世界と呼ばれるようになった
急な環境の変化に耐え切れなかった魔物は、死に絶え
3歳の悪魔であるアユリを殺そうと挑んでいたが、その時点で絶対強者級の実力があったアユリに触れることすら出来ず氷付けになる
アユリは生まれてからずっと独りぼっちであった
その成り立ちは飛影と似ていた
飛影は静紅や椿、カガリとセツネが変えたがアユリにはそれが無かった
「楽しかった!!…またやりたいな。ハードル越えたら戦いたかったけど、ちょっと魔力も体力もすっからかんだ!」
「私もやりたかったけど、同じく魔力がすっからかんよ」
飛影は差し出された手に答えて、無事な右手で握手を交わす
(けど…このフードの中がブサイクだったらどうしよう…理想としては私より少し身長が大きい160cmくらいで、髪は黒髪で、かっこよくて、でもちょっと幼い感じもあるのが理想なのだけど)
「そういえば、顔見せてなかったな…うん!…アユリ、これからよろしくな!!」
フードを外す飛影
アユリの目に映ったのは、身長が160cmくらいで、髪は黒髪で、かっこよくて、でもちょっと幼い感じもある飛影であった
「ふげっ!!?」
まさにアユリの理想を体現したかのような飛影を見た瞬間に、恐らく初めてであろうことであるが顔が真っ赤になった
「え??…あの…すみません…お名前を忘れてしまいました!!」
「…飛影だけど」
態度が変わったことに若干戸惑うが、名前を名乗る飛影
「ひ…飛影様ですね!!よ…よろしくお願いいたします!!」
完全に一目ぼれであった
そこでふと、飛影は思い出す
「あっ…そういえば、魔王(天界の)の補佐を募集してる(らしい)んだけどさ、そんだけ強いならやってみないか?」
「是非やりたいです!!」
飛影の右手を両手で包み込むアユリ
やる気が充分なのは良いことだと飛影は頷いて、アユリをこの世界から移動させても依頼はクリアされると判断して、天界へと戻ることにした
そこで、飛影ではなくラインの魔王補佐をすることを知ったアユリとラインの一悶着があったことはシーレイでなくとも確知できることである
次話とその次はリクエスト頂いたお話です