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災厄の生き様  作者: 火憐ちゃん
椿編
10/122

街へ


更新遅くなりまして申し訳ありません


「ねぇ、飛影くん」


それはある日のことだった


飛影の名前が決定してから数日後のことだった


「なんだ?」


現在飛影と椿は食事をしていた


少年は災厄の子として食事をしなくとも生きていけるが、椿はそうはいかない


五歳の少女の目の前には動物の丸焼き


「これは食事じゃない!!」


今まではどんなものが出されても我慢していたがついに堪忍袋の尾が切れた


「なぜだ?…食べれるぞ」


そう言って飛影は丸焼きの腕をもぎ取り食らい付く


「だってこれ…人間でしょ!!?」


椿が指差すのは、動物の丸焼き


より具体的には先程飛影と椿に襲いかかり飛影が返り討ちにした盗賊


「だからなんだ?食える」


飛影は頭をかち割り脳を取り出す


椿に渡そうとするが、全力で首を横に振る


ならばとそれを口に含む飛影


「人間は食べ物じゃない!!」


「お前がまともな食い物にしろって言ったんだろ…?」


「そういう意味じゃないよ!!?」


椿がお腹減ったと言ったのが始まりで


ちょうど良く盗賊が来た


飛影はとりあえずで心臓を破壊してぶち殺し、それを椿に渡した


いや、まともな食べ物にしてよ


と椿がそれを断り、飛影は炎舞で丸焼きにした後が今である


「普通に考えて人間は食べ物じゃないの!!」


「…食えれば食べ物だろ?」


常識と非常識の戦いが始まる


「肉は固いし臭いし見映え悪いし」


「柔らかい脳を渡そうとしたし、匂いが出ないように燃やしたし、見映えは我慢しろ」


「意味がわからない!!」


「俺も意味がわからない」


椿の常識と、飛影の常識


椿の常識は確かに一般的な常識だ


しかし飛影の常識は非常識だ


どっちが悪いと言えば飛影が悪い


「美味しいと兎の肉を食べたり魚を食べたりしてただろ?」


「…え?うん、あれは美味しかったよ」


濃い味では無かったが出来立てのこともあり、素材の味だけで美味しいと感じることができた


「同じ動物だろ?」


「…」


なるほど、と椿は合点がいった


飛影は人間を人間と見ていない


あくまでも獲物だ


だから飛影にとっては、食用の動物も愛玩動物も人間も同じなのだ


そこに違いはない


飛影のその考えは正しく真理ではある


「う…」


何も言い返せない


それは正しいのだ、道徳を考えなければ


「違うのは違うの~」


弱々しい抗議


「だからなぜ?」


飛影にとっては同じ殺せるもの


「あ~う~」


頭を抱える


理解させるための言葉が何も出ない


「よし!!街に行こう」


常識が無ければ常識を知らせようと椿は決断する


美味しい料理を食べさせれば変わるはずだ、と考えた


「まち?」


しかし飛影はまず街の存在すら知らない


遺跡の森から出たことがない飛影にとって街が理解できない


「えっと…私も詳しくはわからないけど…人がいっぱいいて、賑わってるところ」


「どこにあるんだ?」


興味が湧いた飛影


椿の説明では獲物だいっぱいいて、退屈しないところが街と認識した


「…わからない」


飛影が興味が湧いたのは椿にとっても良いことだが問題は二人共に街の方向がわからないことである


「ん~盗賊の人に聞いてみるとか?」


盗賊なら遺跡の森の近くの街に詳しいだろうとあたりをつける椿


「そうするか…」


飛影は常時展開している感覚200メートルを拡げる


500メートル


一キロ


二キロで飛影は止める


「いた…」


少し離れたところに盗賊を発見する


「えっ?ほんと!?」


飛影はおもむろに椿の首根っこを掴む


「ちょっ!!?まっ!!?やることはわかってるけどぉ!!私は死ぬぞこらぁ!!?」


飛影がやろうとしたこと


投げ飛ばす


椿はただの子供である


二キロほど離れた場所に投げ飛ばされれば投げた瞬間に頭が吹き飛ぶことは確定している


ジタバタと暴れて飛影にボディブローを直撃させる


「…」


まるで効いていない飛影


「死ぬからね!!優しく運んでよ!!?」


しかし椿の本気の説得が効いたのか飛影は手を離す


いそいそと椿は飛影の背中から首を掴んで脚を飛影の腰にホールドさせる


なすがままの飛影


「微速前進~」


準備ができた椿


飛影は微速前進の意味を知らなかったがゴーサインだと認識


ゆっくりと脚を曲げて


跳躍する


「キャァァァァァァア!!?微速微速微速微速!!」


速度が尋常ではなかった


椿の予想の遥か上の微速であった


一回の跳躍で、二キロほど離れた場所に着地する


対峙するは三人の盗賊


「災厄か!!?」


盗賊達は一目で飛影が何なのか理解する


構えて殺気を放つ盗賊達


「あはは!!死ね!!」


「…死ぬ」


笑う飛影と死にそうなほど顔が真っ青な椿


椿の力が緩み飛影の背中から落下


落下するまでには盗賊三人の細切れが出来上がっていた


「あっ…」


「馬鹿なの!!?」


街の場所を知りたいのに殺してしまっては意味がない


死人に口無しとはこのことである


「…どうも殺気に反応する…」


椿に頭をバシバシと叩かれながら考える飛影


それはしょうがないことではあるのだ


いつ殺されてもおかしくないこの場所に5年間いたのである


殺気や敵意に反応するようになってしまっている


「飛影くん我慢だよ!!」


「…努力する」


再び飛影は索敵範囲を拡げる


再び発見する


「もっとゆっくり!!私が死ぬから!!」


椿が念を押して再び飛影にしがみつく


飛影は椿の言葉を考慮して跳躍する


割とゆっくりめに


「まだ速いまだ速い!!ゆっくりだって!!ゆっくりだってぇぇぇぇ!!?」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>


次の日


「あっ…」


「に…27回目の失敗…」


まだ飛影と椿は街の場所がわからないでいた


それどころか話を聞く態勢にすらなっていなかった


再び惨殺死体が複数出来上がった


「…これは無理じゃないか?」


「やだ!!頑張って飛影くん!!」


さすがに五年で培ったものを一日二日では直すことは難しい


椿の疲労の色もあり、日が暮れてきたため休憩を取る二人


「また…人肉…」


椿に出された料理は人肉の丸焼き


先程狩ったばかりで新鮮そのもの


だが椿の表情は苦瓜を噛み潰したような表情である


「…他に知らん」


「む~…あっ!!じゃああれ焼いて!!」


椿が指差すのは空を飛ぶ鳥


不思議なものである


飛影は跳躍しながら考える


この二日で27回程盗賊を殺してきた


どの盗賊も殺意や敵意、そして恐怖があった


なのに椿という少女はそんな飛影のことを恐がりもせずに、逆にパシらせる始末である


ただの人間の少女


(…意味がわからない)


飛影は飛んでいた鳥を鷲掴みにして首の骨を折る


《炎舞》


着地するまでに前進を炎で焼き尽くす


鳥の丸焼きの完成である


「ほら」


今しがた調理したばかりの鳥肉を椿に投げ渡す


「熱い!!」


飛影が素手で掴んでいたため椿も素手で受け取ったが当然熱い


うっかり離しそうになったが服を使ってなんとか持つ


「ありがとう飛影くん!!」


満面の笑顔


美味しそうに頬張っている


「…一つ聞きたい…」


「…なに?」


「なんでお前俺に接することができるんだ?」


飛影は考えても仕方がないと直接聞いてみることにした


「…?…言ってる意味がわからないよ?」


しかし、椿には伝わらない


「盗賊はみんな俺に殺意や敵意、恐怖を持つ。俺は災厄で殺されるのがわかってるから…でもお前違う…恐がらない…なんで?」


拙い言葉でだが、わかりやすいように言い換えて疑問をぶつける


それは椿に伝わった


「う~ん…」


何かを考える仕草をしながら鳥肉を頬張る


「なんで…って言われてもなぁ」


言葉にしづらいのかなかなか返答がでない椿


飛影はそれを人肉を食べながら座って待っている


「私には他の人が飛影くんを恐がる理由がわからないよ」


「は?」


「飛影くんは優しいただの男の子だよ?恐がる理由が無いよ」


「お前…頭は正常なのか?」


優しい男の子が盗賊を笑いながら殺す

ただの男の子が盗賊を殺し尽くす


そんなことを思っているのであれば飛影の言う通りに椿の頭はイカれている


「ひどいっ!!?…だって飛影くん優しいもん!!ただ常識を知らないだけ…目の奥が優しい!!太陽みたいに暖かい!!それだけだよ…私が飛影くんを恐がらない理由は…だって優しい子に恐がる必要無いでしょ?」


素で言っていた


盗賊から恐れられていることや盗賊を殺す飛影だが、椿は自身の感覚で決めていた


「それ…だけ?」


「うん、飛影くんは優しいからすぐに殺さないようにできるよ!!」


災厄の子ではなく一人の男の子として見ている椿


なぜか納得してしまった


変な答えで飛影自身も理解できないが、納得してしまったのだ


椿は嘘を言っていない本心からの答えで飛影は納得してしまった


「…まぁいい、行くぞ」


「は~い」


さすがに27回も移動していたら、椿の言うペースで移動することができるようになった飛影


木々に乗り移りながら盗賊達に向かう


そこにいたのは四人の盗賊


「あははは!!」


着地して椿を放り投げる


「災厄だ!!?」


そして殺気や敵意を飛影に放つ盗賊達


飛影が刀を抜いた瞬間に三人は細切れになった


殺された三人は殺されたことすら理解していないで死んでいく


そして残りの一人


恐怖で染まった顔の男


飛影は刀を投げ放ち盗賊の腹に突き刺さり吹き飛ばして木に張り付ける


「がっ…!!」


腹に刀が突き刺さり木に縫い止められていて身動きが取れない盗賊


「あっ…できた…?」


「できた!!?…やったね飛影くん!!」


飛影の手を掴み万歳する椿


飛影もできたことに驚いていた


ぎりぎり即死ではない攻撃を放った


「くそ…殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!」


刀はどうやっても抜けず恨みを言葉にするしかない盗賊


「…おい」


「…ひっ!!?」


しかしそれも飛影の一睨みで終わる


「街はどこだ?」


「…え?…街ですか!?…街はここから南の方角にあります」


「そうか…」


飛影は刀を抜き、盗賊が地面に落下する


そして首を跳ねた


「街はあっち」


飛影は刀を納めて指で方角を示す


「それじゃあ行ってみよう!!」


椿はそれに反応しない


盗賊は悪者


だから死んでも構わないと考えている椿


ただの女の子ではなく椿も狂っているだけなのだ


2,000PV

500ユニーク突破です。


見ていただきありがとうございます。



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