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黄色頭巾編・十五話

「し、絞りすぎなんだな。このままじゃ、オレの名前がデブじゃなくて豚骨ガラになってしまうんだな……」


軍の中でも一際の巨漢が、湯気を立てて突っ伏していた。

遠く、その耳には、未だに撃剣の轟音と裂帛の気合いがこだましている。

そもそもデブとは名前なのか。もっとも、そんな事は今はどうでもいい。


「チ、チビ……お前は生きてるんだな?」

「お、おお……半分くらいは、な……」


その脇に居る小柄な男は身体こそ起こしてはいるものの、目のチカチカするような虚脱を伴う疲労感に気を張って耐え忍んでいる。

剣鬼・武蔵の監督で行われる新兵訓練。

彼らの疲労具合を見るに、読者諸兄はいかな地獄行が敢行されたのだろうと思われたかも知れないが――――――


とりわけ、特別な事をやらされたわけではない。

例えば百貫の特製木刀を振り回すとか。

千貫の石を背負って腕立てを千回こなすとか。

超強力なバネを装着して死線を越えるような壮絶な戦場にいきなり放り込まれるとか。

そういう荒業のような、変態的かつ虎の穴風味な修練は無く、また講談の主人公が使うような、仰々しい霊験あらたかな奥儀の伝授などというのもなかった。

行われたのは、ごくごく普遍的な稽古である。もっとも、軍隊の訓練としては少し特殊だろうが。

始めに三里走り、基本稽古をみっちりやったあと、巻き藁に打ち込みをやって、最後に相対稽古をやる。

これを延々と繰り返した。


「くっそう、グーパーが出来ん……」


あぐらをかきながら手を顔の前に持ってくると、プルプルと震えた。

組太刀に入るまで、基本と打ち込み稽古は休憩なしで行われた。

二刀を構え、構えを崩さぬように右の太刀のみを振るう。

二天一流における刀法の初歩であるが、延々と繰り返す反復運動は、特に握力を奪った。

それでも、ローテーションの都合で小休止に与れた彼らはまだいい、今、仕合稽古を行っている組の汗は滝のようだ。形相からは、その荒い息づかいさえ聞こえてきそうな気がする。


「あ~……終わったら速攻で風呂行かなきゃなんだな……」

「そんなもんどうでもいいだろ? 俺は早く寝てーぜ……」

「デブなめんじゃねーんだな。汗を半日でも放置しようものならたちまち悪臭でバイオハザードっちまうんだな」

「……お前、たまにヘンな単語を口走るよな」


頭が湯立っている影響だろうか。

甘く見ていたわけではない、が、人斬りで少しは鳴らした自分たちが、今行われている立ち合いを模した実戦練習ならいざ知らず、ややのんびりした印象を受ける型稽古でこうも体力を奪われることになるとは思いもよらなかった。

疲れるばかりか、初めの方など、手の内は利かなかったり身体が振られたり足元が定まらなかったりして、まともに打ち込むことすら難しかったものだ。


しばしば、武道は右に倣え、であると云われる――――――


右に倣う、とはよく平凡で変化に乏しいものを指して揶揄的に使われる言葉ではあるが、

そもそも、武術という分野の発達において、突飛な技術はそうそう組み込まれるものではない。

武蔵をして「人を殺すには、打つ、叩く、斬る以外には、突くと薙ぐがあるだけである」という。

何となれば剣術、刀法のみならず戦うすべての技術において、その本質は敵に勝つ事にあり、突きつめれば「いかに打たせずに打つか」という所に尽きるからである。


「…………ぐえ」


ずず、ず、と、身体のつっかえ棒にしていた手を徐々に摺り広げて、彼もまた大の字になって、くたびれた体を横たえた。

技の名前を叫んで発動すると都合よく敵が倒れてくれる、神秘の魔法めいた必殺技でもあれば、誰もが宮本武蔵になれるのであろうが。

ふと、さながら合戦の様相を為して打ち合っている有象無象の中に、よく知った後姿を見つけた。

我らがアニキ。

彼の方に目が行くのは、親しい者を応援する身内根性のみが理由だけではなかった。

綺麗なのだ。体のこなしや、太刀筋が。

相手は身体を開いて、振りかぶる様にして助勢を付けて打ち込んでくる。

ああやって打つと、体重をかけやすいのをチビは自身の経験で知っている。

アニキはそれを受け止めると、右手の肘から先をクンッ、としならすように返して、片手打ちで浅く相手の肩口を打った。

相手の構えを崩すと、そのまま追撃を打って押していく。

下がる相手を追って間を詰める下半身の動きが、腰を切る上半身とよどみなく連動していた。


ああ、さすがに違うな――――――


並べてみると、アニキの打ち込みは他と比べて無駄なく走り、振りと振りの合間が短いのがよくわかる。洗練されていると言うか。

攻めに隙が少ないように見える。恐らく彼は、彼らと出会う前、何処かで正統派の剣術を師に付いて学んだのだろう。

チビや彼らも、さっき吐くほどやらされた基本稽古を参考にしてアニキのようにやってはみるのだが、構えが窮屈でいつもの通り動けず、体重は乗らないし、上手く腰も入らないので、ついつい、先ほどのような不格好な大振りになってしまうのだ。

ゆっくりと、理に適った動きを身体に染み込ませていく必要がある。

理に適うと言う事は、つまりは基本に忠実だと言う事。

アニキが自分たちに比べてなぜ強いか、少しその理由が見れた気がする。

しかし、このアニキですら、想像のつかぬような高みの使い手がいるらしい。それも、天辺まで数えるには、幾重にもの次元の隔たりがあるという。

全く、剣理というのは――――――


物語の主人公たちが、夢物語か反則みたいな必殺技を次々に編み出していく理由が良く解った。

こんな地道で途方もない事をクソ真面目にやっていたら、いつまでたっても最終回など見られないだろう。





「よし、そこまで」


指揮台から高く見下ろしていた武蔵の合図で銅鑼が打ち鳴らされ、音の花火が波を引くようにさっと消えた。


「申組は出ろ。酉組、入れ」


指示に従って、今まで打ち合いをしていた中の一角がどやどやと引き揚げ、代わりに訓練場の脇に集る様に休んでいた者たちがそのスペースに入る。


「おら、デブ」

「ダシになるのはヤなんだな~」


地面から引き剥がすように相方を起こして、ぞろぞろと人の流れに乗る。

途中、少し離れて目が合った引き揚げてくるアニキがすれ違いざま、汗の滴らせた顔でニヤリと渋く笑ったので、同じような顔で返した。


正直、熱血するタチじゃないし、努力もキライな人間だ。

しんどい稽古を進んでやる根性なんて無いし、修羅場もなるべく遠慮したい。


――――――が。


腹の奥からメラメラがじわりと広がっていくのはなぜだろう、男の宿命ってもんか。

強えのか弱えのかって話に、興味ねえヤロウはいねえよなあ。

適当に四列に分かれて、その中の一列と向かい合わせになる。ほとんどの奴らの顔が自分より上にあるが、気圧されることはねえ。

適当に目を遣って、向こう三本目くらいまでに当たるであろう相手を見てみた。

胸が涼しくなる。うん、チョロいね。

下から捲って、目の前のヤツに軽くメンチ切り。

まあ誰だろうと関係ねえ。

気合い入ってんぜ? 今の俺は。


「…………」

「お願いします!」


美少女がいた。

褐色の肌、凛とした眼差し。少し幼いが、そこがいい。素直でマジメな態度がさらに高ポイント。

むさくるしい男どもの集団にあって、なんと潤いのある華だろう。

すっと目線を外す。その先には指揮台で屹立する一人の男。

遠すぎて顔はわからないが、なぜだろう、愉快そうに笑っているような気がした。


「お互いに礼、始め」


その合図で、耳をつんざく銅鑼の音が鳴り響く。

まだ余韻の残るうちから、目の前の綺麗な眼が切っ先の様に鋭くなった。

一生懸命なんだなあ。

手なんか絶対、抜かないだろうな。


「はあっ!!」


気合い一閃。


「……現実と言うのは、中々にキビしい」





「調子はどう?」

「まずまず、だな」


優雅に茶をすする華琳、左手に箸、右手に筆を持つ、ながら作業の武蔵。

ある昼下がりの一幕。


「誰か目に留まるような兵はいたかしら?」

「うーん……特にやる気あるのは、楽進かねえ。なによりタフだ」


毎回、一日の稽古が終わるたびに、恒例となっている光景がある。


「隊長」

「うん?」

「あの……もし宜しければこの後、拳法の指導もしていただきたいのですが……お願いできますか?」


と、初日の稽古で皆がへばっている中、彼女がボロ雑巾となったチビの傍らを抜け、武蔵に歩み寄って声をかけたのがそれの始まり。

以来、鬼稽古に耐えてなお、さらなる鍛錬を所望する猛者どもによる「居残り教室」が開催されるようになったのだが、初日から皆勤なのは楽進のみだ。

さらに聞くところによると、夕食が終わった後も夜な夜な自主的な鍛練に勤しんでいる姿が多々見かけられるらしい。底無しである。


「一番器用なのが沙和かな……あと、よくわからんのが真桜だ」


一番最初に二刀の刀法をモノにしたのが沙和である。

そもそも、武蔵のやらせている訓練は初めから二刀を振らせる事を目的としたものではなく、まずは片手で自在に剣を操れるようにするのが狙いであった。

なので二刀を構えを基本稽古に取り入れてはいるものの、実践練習で二刀の形を取る事を強制してはいなかったのだが、彼女にはかなり肌に合ったらしい。

今では二刀を主体として使う者のなかでは一番に達者だ。

なお本人曰く、


「ふつーにやったら出来たの」


との事。

彼の弟子が聞いたら泣くであろう。


「真桜……それ、なんだ?」

「んー? 気になる? 気になる?」


ある日の大休止中、ドでかい得物を携えて鼻歌を歌っていた彼女に武蔵が尋ねた。


「とおっ!」

「うおっ!?」


得意げにニヤニヤと笑う真桜がランスのようなそれを構えると、突如として、その穂先が甲高い金切り音を上げて高速回転する。

予期せぬ動きに、さしもの武蔵も組んでいた手をとっさに解く。


「へっへーん! これぞウチの新発明、『螺旋槍』や!!」

「おお~」


思わずパチパチ、と手を叩きながら感心した風な声を漏らす武蔵を見て、真桜がこれみよがしにたわわな胸を得意げに反らした。


「いや~開発にむっちゃ苦労したんやで? 稽古後の完徹二日続きはさすがに応えたなぁ……」

「……これは、回ってるのはどういう仕組みだ?」

「ああ、そこはノリで」

「ノリで!?」

「ズバリ、『螺旋力』と名付けたい」

「そういう発言はやめて」


危険な香りがした。世界観的な意味で。


「……とりあえず、稽古じゃそれは禁止な。ちゃんと訓練刀を使いんさい」

「んな!?」


英断である。

このまま放っておくと「ウチの螺旋は天を貫く!!」とシャウトしかねない。


「隊長のいけずぅ~」


などと不満を口にしていたが、それは仕方のない事であろう。

世界の秩序には代えられないのだ。





「――――――まあ、アクが強いのはこの三人かね」

「ふうん。秋蘭の目に狂いはなかったって所かしら。あなたの連れて来た三人組はどう?」

「あいつらは結構、実戦で鍛えてあるようだしな。このまま練っていくだけよ」


チビとデブはアニキに比べて基本が怪しかったが、ある程度は纏まっているようだった。

このまま鍛えれば、モノになっていくだろう。


「さて、出来た」


武蔵は筆を置くと、空いた右手でザラっと竹簡を器用にたたみ、そのまま華琳に差し出した。


「経過報告で御座いますよ、と」

「はい、御苦労さま」


受け取ると、華琳は少し冷めかけた茶を置いて、今畳まれたばかりの竹簡をその場で開いた。


「なんだよ、ここで見んのかい」

「あなたがここに居るんだから、ここで検分したほうが早いでしょ?」

「政務室用無しだな」

「ものを食べながら、私の目の前でそれを纏めるあなたも大概よ」






「……あら、もう千人まで絞ったの?」


目を通していった華琳が、あまり間の立たないうちに問いを発した。


「一応、お前の言うとおりに選り分けてるんだがな」

「農作業の指導の方はどう?」

「そっちは桂花の仕事だ。俺は知らん。落としたやつの稽古は別にさせてるから、へばってそっちに差し支えるってことは無いと思うが」


返事もせず頬杖をついたまま再び視線を落とした。

どうやらとりあえず聞いてみただけらしい。

武蔵も特に気にする風でなく、箸を進める。


「……かなり個人技に焦点を当ててるのね。全体訓練はさせないのかしら?」

「まだ配属もはっきり決まっとらんのに、陣形覚えさせたってしゃーねえだべ。第一、まずは戦えるようにせんと使い様がない……ごちそうさまでした」


武蔵が箸を置いて手を合わせる間にも、華琳の目はつらつらと文字をなぞっていく。


「走らせてるから最低限は動けるだろうさ」

「……まあ、一通りの簡単な行軍が出来れば当面はいいわ。複雑な陣は追々、ね」


【一人にして十人に勝ち、千人にして万人に勝つ道理、なんの差別があらんや】


武蔵は兵法について、大の兵法、小の兵法があると述べている。

大の兵法とは即ち、軍学、将が兵を率いて行う集団用兵のそれであり、小の兵法とは、剣術をはじめとした武術、つまりは一対一や数人対数人における戦いの術を指す。

武蔵は双方の兵法を読み解いた上で、小の兵法により重きを置いた。

古今、数ある戦場の英雄譚でその名を後世に継がれるのは将帥であるが、実際に刃を合わせているのは柄を握る兵卒である。

いかな名将が軍勢を手足の如く操ろうとも、戦う兵がなまくら刀の様な弱卒では敵を征すことは叶わぬ。それぞれに「勝つ道理」を備えさせれば、個々が目の前の敵を倒すために判断し動き、引いては敵軍を的確に崩し敗走せしめる、指揮官の期待以上の働きを為すであろう機能的な「名刀」たる軍隊となる。

故に、一が十を散らす事も、千が万を滅ぼす事も、道理に差は無いのだと言う。


「……ふむ。とりあえず、順調みたいね。わかったわ」

「うむ」

「あなたはこのまま調練を続けて頂戴。行動の指示はこちらから追って出すから」

「うむ」


華琳は竹簡を畳み、武蔵は薄い塩気の白湯を口に含んだ。

程良い温さが、食後の臓腑にはちょうど良い。


「……そういえば」

「ん?」

「……ふふっ。初日の訓練で、結構キツい事言ったんだって?」

「あんなもんは、きついのうちに入るまい」


口を湯呑に浸けたまま彼女を見て、中身を呑む間に思い出した。


「可愛いもんじゃねえか。何でも白いものと黒いもので、きっちり割りきれて残るものがないと思っている。若いってのは、いいな」


人差し指と中指、親指でつまんで、クルクルと揺らして遊ぶ。


「一介の追剥、夜盗紛いのヤツにだって、冷や汗かかせるくらいおっかねえのは居るぜ」


半分ほど残った白湯を、ゴクリと一息に吸い込む。


「浮世はまこと、複雑怪奇よ。碁のように白か黒かで答えられるもんなんざ、殆どねえ。あるとしたら、一つ」


空まで飲み干し、机に置いた。

タン! という鋭い音が小気味良し。


「勝ち負けだけさ。そしてそれは、強いか弱いかを分けるものでしかない」


目を伏せ、軽く肩を竦めて笑う。


『違うか?』


そう問うているようだった。






「――――ふっ…………シッ!」


闇夜に褐色の肌が踊る。

鞭のようにしなる手足はまるで猫のようだ。


(………………)


一息ついて俯いて確認した地面には、汗の跡と、少し楕円になった渦巻きの痕が二つある。

――――やはり回数を重ねると、若干のズレが出てしまうか。


「…………はあっ」


あらためて、腕を上げて斜に構える。足から腰。連動させて捻る。それについていくような動きで、身体を開かず、まっすぐ左の拳を出す。ゆっくりと、形を確かめるように。

捻った身体を、元に戻す。

元に戻る動きを利用して、今度は右の膝を繰り出す。左足を返して、インパクトの形でピッタリと止まる。最初はバランスが取れなかったが、今ではだいぶグラつかなくなった。

再び戻る。左足に重心を残したまま、足を戻して構え直す。

殆ど最初に決めたスタンスと変わらない所に、足が戻った。重心がブレていない証拠だ。


今のは上手く出来た。


形と軸と重心。気を付けてやってみろ――――――

そう言われて、生真面目に彼女は繰り返し続けている。

刀槍、弓、柔に拳法。あらゆる武術の基本だと言う。

言葉で聞いた時は聞き古したような響きだったが、やってみるとさるもの、目から鱗。

足、腰、腕。連動させる動きを意識して打った拳の手応えは、『肩にガツンと来る』手応えのそれだった。試しにバラバラにやって打った時は、『拳が走らない』手応え。

重心を上手く取った時はこれらの動きが淀みなく出来た。

重心がグラつくと、構えも崩れた。いわゆる死に体――――『体が廻らない』状態になった。

それらはほぼ我流で技を身に着けた彼女にとって、殆ど感覚でしか理解していなかったものだ。


「腰を入れる」「腰を落とす」


それは、ごく基本的な事。

わかっていたつもりだったが、それを具体的に理で持って説かれると、改めて気付く事が多くあり、驚いたものである。

形をしっかり決めてそれを意識して動いてみると、今まで自分がどれくらいそれへの意識が疎かったかが良くわかる。

構えたまま移動すると、ふとした事ですぐ足のスタンスがバラバラになり、素早く次の動作に移れない。

目一杯力を込めて打とうとすると、身体が流れて手打ちになる。

そういう動きのムラを、武蔵の一言とおりに少し気を付けて見直しただけで、ずいぶん見違えた。

とはいえ、まだまだ完全とは言えない。

形稽古でこそ見れる形になったが、実戦の動きの中だと未だ荒さは目立つ。


「――――――――っ」


ふと――――――

空を見上げた。

雲間から覗く朧月が美しい。

火照り、汗の滲んだ身体に夜風は心地よく。

ふと、浮かんだのは武蔵の言葉。


『拵えばかり立派でも、なまくらだったら何にもならん――――――』


彼女は後ろの方で聴いていただけだったが。


(……さすがに、あそこまで身の程知らずではないにせよ)


確かに、思想は同じだが――――――

過去や出自はどうあれ、同朋として戦っていく仲間を差別し、一兵卒の分際で上官に楯突くのはおこがましい事だと思う。少なくとも己は、それくらいは身の程を弁えている自覚はあるつもりだ。

しかし。

それはしかしとして。


「……」


自分の目の前に、拳を作って持って来てみた。

昼間見た武蔵の手を思い出す。あれに比べると、相当に小さな拳だ。

節ばった指。無骨。少し、気に入らない。

厚みのある拵えの下は、紛れもなく業物だった。それが振るわれる所をまだ見たわけではないが、切れるか切れぬかはわかる。

彼の言う事は正しい。もっと教えを乞いたいとも思う。しかし――――――


力なき正義は許されぬのか?

弱きものは、望めぬのか?

志だけでは、やはり何を為す事も叶わぬのだろうか?

主義や思想など、所詮はもっともらしい飾りに過ぎない?


(……私達は、弱い民草を守るために立ち上がった。そこに大義があると信じて――――)


だが、強き者にしか何かを為す事が出来ぬなら。

それはつまり、結局は弱きが虐げられる世でしかないのではないか――――――





「…………ふうっ」


そこまで考えて、やめた。


(今、そんな事を一人で悩んでも、何かが変わるわけじゃない)


息を大きく吐いたあと、前を見据えて構える。倒すべき敵はいないが。

少女は再び拳を握り、それを振るって闇を裂く。


(今、出来るのは……今より強くなる事だけだっ!)


汗が飛ぶ。

星は無く、月だけが彼女を見ていた。





それぞれの想いとともに、夜は更ける。

誰にも知られず、誰にも見えず、

夜の雲は形を変える――――――








日本沈没とか冗談じゃないぜ。洒落にもなってない。

なんでこの国がこんな目を見なきゃならん?

というかだな、災害対策に組んでた予備費四千億円は何処行った?

この未曾有の国難になぜ予算組んだ麻生太郎が政権におらなんだ?

なぜに「百年に一回あるかないかの災害の為に用意する金は必要ない」とかいうとぼけた理由で、それを解体しやがったタレント上がりが当面対策の為の奉行に任命されてるのか?

人事がおかしいだろうが、人事が。天災だけでとんでもねーのに人災まで引き起こすつもりか。国力の下地の石油と塩の備蓄削るとか言ってる時点でどういう政治家かわかるだろうが現総理よ。絶対またやらかすぞ。もっと他に居るだろうが人材は。緊急時なんだからポスト引き継ぎとか党派とか気にしてる場合じゃねーべ?

本当に洒落にならない状況だから、当面だけでもなんとかしてくれよ

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