最終話
外から雪が吹き付つけてくるほどの極寒に襲われた冬の季節。
その日、部屋の中は異様なまでに静まり返っていた。
部屋の隅に置かれている、全く手を付けられていない朝食も。
結局最後まで壊れたまま動かなかったエアコンも。
――――宙にプランプランと浮かぶ男の体さえも。
冬の朝日だけが冷たく差し込む部屋の中。
部屋にあるなにもかもが、まるで存在を忘れ去られ放置でもされたかのように、冷たくなってしまっている。
部屋の中に存在する光は、冬の朝日と……開きっぱなしにされていたノートPCの照明だけ。
PCの画面には、書きかけの文章のようなものが表示されていた。
『
タイトル:遺言*[編集中]
俺には叶えたい夢があった。
それは小説家になることだった。
だから俺は、挑戦した。
俺は必ず、小説家になってみせると。
俺にできることはなんでもやったつもりだ。
でも、なれなかった。
あれだけなりたいと思っていた小説家に、俺は成れなかった。
俺は何のために生まれてきたんだろう。
才能もないくせに小説家なんか目指して。
俺には才能があるんだって、だからプロになって沢山の人を楽しませるんだ、なんて思いあがって。
結局俺には才能なんかなかったよ。
才能がない奴が夢なんか見ちゃいけなかったんだよ。いつか憧れた人にもなれなかったんだよ。
なのに……俺は夢を見てしまった。気付いた時にはもう、取り返しがつかなくなってしまった。
小説家になれないんだったら、もうこんな人生を生きている意味なんかない。
だから、死ぬことにしました。
お母さん、お父さん。裏切る形になってしまってごめんなさい。
勝手に死ぬ身勝手を許してください。
でももうこの人生に希望を見出せないのです。
だから、どうか、勝手に死ぬ身勝手を許してください。
来世は小説家になれてるといいな。
』
そう表示されたPCの画面は。
誰かに見られることもないまま、充電を切らして真っ黒になってしまった。




