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異世界帰り勇者、奇跡の【具現化】で夢現の境界で再び立ち上がる ⛔帰還勇者の夢現境界侵食戦線⛔  作者: 阿澄飛鳥


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第3話 ずっと一緒

 その日の夜、重たい頭を慣れない枕に預けて、アキは一人、天井見ながら呟いていた。


「タイムスリップ……。神隠し……。時空超越……。あとは、なにかあるかな」


 30年も自分が行方不明だったことはもう十分に理解した。なぜなら病室に映るテレビの内容は、アキの知っている世の中とはまったく違うものになっていたのだから。


 テレビそのものが薄く、横長になっているし、放送局の名は変わっていないものの、知っているチャンネル番号も違う。


 当時知っていた芸能人は歳を取って大御所のように司会をやっていたり、アイドルはグループ名さえなんと読むのかわからないグループばかり。

 ニュース番組では世界情勢が当時から大きく変わっていることはわかったが、どう変わっているのかまでは読み取れなかった。


 そして、ニュースだけでなくCMでも「境獣」という言葉が、アキの気を強く惹く。

 

 それはどうやら別の次元から来た化け物らしく、その被害や復興状況を知らせる報道や、万が一警報が出た場合は最寄りのシェルターに避難しよう、というCMが流れていた。


 まるで映画やアニメの世界のようだ、とアキはぼんやりと考える。

 もしかしたら実は別の世界に来てしまったんじゃないかというSF的な説も考えてみたが、それを証明することなどできない。


 ――マスタ。


 そのとき、どこかで少女のような声がした。


 アキは不思議に思ってテレビを見るが、そこに映っているのはお笑い番組である。

 テレビの音声にしては場違いな声だ。


 ――マスタ。来る。待ってる。


 すると、再びその声がする。

 と、病室のドアから電子音がなり、それまでは赤かったランプが緑色に変わっていた。

 

 施設内を勝手にうろつかれては困るということで、自分は軟禁状態だったはずだ。

 アキは不審に思ってベッドから降り、ノブに手をかける。


 開いてしまった。


 恐る恐る病室の外に顔を出してみると、廊下の照明は落とされており、暗闇が続いている。

 と、その暗闇の向こうに、小さな灯りが見えた。

 足元を照らすためのライトだろうか。それが1つだけ明滅している。


 深夜の病院といえばあまり気味の良い場所ではない。

 だがアキは不思議と恐れを感じず、灯りに導かれるように病室を出ていた。


 明滅するランプの傍までくると、次はこちらだという風に、遠くで別のランプが灯る。


 そうして冷たい廊下を裸足で歩いた先にあったのは、エレベーターだった。

 大きな扉に、頭上に階数表示のない不思議な作りだ。


 ――マスタ。ここにいる。


 またあの声だ。頭の中に響きかけてくる奇妙な感覚。しかし、アキはその感覚が妙に馴染む。

 声を聞き終えたアキが顔を上げると、案の定、エレベーターの扉が開いた。


 もうここまで来たら迷うことはない。


 アキは足を踏み出す。


 エレベーターの中ではすでにボタンが点灯していて、それはいくつも並ぶボタンの中で一番下に位置していた。

 アキを乗せたエレベーターはぐんぐんと下がっていくが、階数の割にその間隔は長い。


 よほど深い地下に向かっているようだ。


 待ち続けて数分間、ようやく扉が開いたとき、アキを導いていた何かの気配が一気に大きくなる。

 アキは頭痛にも似たその感覚を頼りに走った。


 もはや、導く灯りは必要ない。

 ただ、それを自分が切望し、それが自分を渇望しているという叫び。

 

 ――マスタ。マスタ……!

 

 それまで無機質だった少女の声に、少しだけ色が加わる。

 待ち遠しさを抑えきれない、熱い思いが響く。

 

 そして、アキはたどり着いた。


 核シェルターだと言われても納得できるほど、厳重な金庫と思しき扉。

 しかし、アキがその前に立った途端、それは勝手に動き出した。

 

 いくつかの分厚い鉄の扉が自動で開き、何重にも設置されていたであろうセキュリティが次々と解除される。

 最後に開いた扉の先で、ぽつんと置かれたアタッシュケースが見えた。


 アキはそれに触れる。

 暗証番号式のロックはすでに意味を成しておらず、ボタンを1つでその中身を晒した。


 その中にあったのは、青色だがシャボン玉のように七色の光沢を放つ腕輪だ。

 アキは迷わず、その腕輪を左腕に嵌める。

 

 その瞬間、腕輪は液体のように形状を変え、アキの細い手首にぴったりと巻き付いた。

 そして、同時に眩い光がアキの意識を飲み込んでゆく。

 

『マスタ。嬉しい。ソフィアだけのマスタ。ありがとう。またソフィアは、ずっと一緒』


 アキの意識が白く塗りつぶされる直前、少女は愛おしそうに言うのだった。

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