表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰り勇者、奇跡の【具現化】で夢現の境界で再び立ち上がる ⛔帰還勇者の夢現境界侵食戦線⛔  作者: 阿澄飛鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/43

第20話 立ち止まらないで

 言葉を返せない。

 そんなことない、と言えばいいはずなのに、ノエルが絞り出すように言った言葉を簡単に否定してはいけないと思ったからだ。

 半年間一緒にいて、ノエルはどんな困難な状況でも絶望することのない強い女性だ。森の中で数週間遭難したときも、最後まで弱音を吐かなかった。

 

 そんな彼女が今、目に涙を浮かべている。

 

「君はもっと、ずっと強くなる。出会ったときは頼りなかった君が、今はもう私たちを追い越して、すごく先にいる。君を近くで見てきた私たちには、それがわかるの」


 ノエルの頬を伝う涙を見ていると、俺は肩に生温かいものを感じた。

 見れば、ナナルが俺の服に顔をこすりつけて嗚咽している。

 

「だから、ここで立ち止まらないで」


 顔を拭ってはっきりとさせたノエルの口調に、俺は顔を上げた。


「君がいなくなったら、みんな寂しい。けど、嬉しくもあるの。君が強くなっていくのが見られて。ここまで一緒に冒険してくれて……。だから、私たちは君に夢を見てる。君が行く先で輝く姿をみんなが確信してる」


 夢――いつかみんなで話していた、大陸中に名前を馳せるパーティになること。

 そうやって稼いだ名声とお金で、それぞれの幸せを掴むこと。

 

 それぞれが口にした希望は、行き着く先は違っても、同じ目標だったはずだ。

 日々、命の危険に晒される中で、そんな夢を語れるみんなが好きだった。


 一緒にいると、みんなと同じくらい希望に溢れた人間のように自分を思えたから。


「俺はみんなといたいよ……。一緒に、すごい冒険者になるって言ってたのに……!」


 俺は思わず堪えきれず、泣いてしまった。

 みっともない。ダサい。カッコ悪い。そんなことはわかってるけれど、俺の心はぐちゃぐちゃだった。


「甘ったれんな、アキ」


 すると、思った通りクラウスの声がする。

 まだ俺を叱ってくれることが、俺は嬉しかった。

 

「俺たちはお前ぇの足引っ張るための仲良し集団じゃねぇ。冒険者だ。こんなところで腐ってたらお前ぇの目的も掴めねぇだろ」


 クラウスはどこか遠くを見ながら、ふんぞり返ってそう言う。

 けれど、俺はその言葉に首を捻った。

 

「俺の目的……?」


 呟くと、クラウスは「ハッ」と鼻で笑う。

 

「どうせ考えつかねぇんだろ。お前ぇは馬鹿だからな。楽しくやってりゃいつか見つかるとか思ってたんだろ。そうじゃねぇ。……お前ぇは前に進まねぇと駄目だ。そうじゃねぇとお前ぇはいつまでもベソかいてるガキのまんまだ」


 言い終えるとクラウスは何かが書かれた羊皮紙をテーブルに叩きつけた。

 ギルドの印が押されたそれを見て、俺は戸惑う。


「なに……?」

「お前ぇの次のパーティへの紹介状だ。会ったことはねぇからクソみたいな連中かもな。けど、腕は一流、お国御用達で馬鹿強ぇのは確実だ。そいつらと組め」


 見れば、国からの正式な依頼として、どこそこで誰と合流せよと言った文面が書かれていた。

 こんなもの、悪戯に発行されるような滅多なものじゃないことくらいはわかる。


「クラウスがギルドに掛け合って紹介してもらったの。そうでもしないと合流なんてできないから」


 ノエルが付け加えた。

 そういえばたしかに最近、クラウスはギルドに用事があるとかで別行動していたのを覚えている。

 

 それが、まさか俺のための用事だなんて思いもしなかった。

 けれど、別に不思議じゃない。


 クラウスはなんだかんだ言って面倒見のいいリーダーなのだから。

 

「クラウス、俺を売ったりしてない?」

「ブン殴んぞ」


 俺が冗談を言うとクラウスは睨みつけてきたが、みんなは笑いを漏らす。

 暗かった空気が少し明るくなり、みんながいつもの顔に戻った気がした。

 

 しばし笑い合ったあと、ノエルが懐から何かを差し出す。

 

「アキくん、これをみんなから贈らせて」

 

 それは赤に近いオレンジ色をした宝玉のペンダントだった。

 見れば、みんなも胸元に同じものを着けている。

 

「離れていても、君は私たちの仲間……。そう思わせて。勇者様にこんなもの贈るのは、ちょっと図々しいかな?」

「知ってたの?」


 思わず、俺は驚いて聞き返した。

 

 俺が勇者だってことはみんなには伝えていないし、戦闘で霊翼を見せてしまったときも適当に誤魔化していた。

 冒険者はあまり他人の事情に首を突っ込まない。

 みんなからも詮索されたことがないから、気づかれていないと思ったんだけどな。


 それでも――俺が勇者でもみんなは変わらず俺に接してくれていたんだ。


「へへっ、みんな知らないとか思ってたのアキだけだよ。にぶちん」

「お前ぇら、俺の目が確かだってこと認めろよ?」

「……それはやや疑問だ」

「私はまた子犬拾ってきちゃったんだなって思ったよ」


「お前ぇらよぉ……」

「子犬って……」

 

 好き勝手言うみんなに俺とクラウスが肩を落とすと、笑い声が上がる。

 

 クラウスの不器用なところ。

 ノエルがそれを叱ってフォローしてくれる優しさ。

 ナナルは何かとイジってくるけれど、それは俺を気に入ってくれていることの裏返しで……。

 ヴァルは静かだけどくだらない話にもちゃんと答えてくれる。


 これが俺の仲間たち。

 

 離れ離れになるのは寂しいけど、最後まで背中を押してくれた。

 俺は差し出されたペンダントを首にかけて、みんなを見回す。

 

「ありがとう。大切にする」


 そう言うとみんなは安心したように、そして、ちょっと寂しそうに笑った。

 

「こんだけケツ叩いてやったんだ。すぐに泣いて戻ってくんじゃねぇぞ」


 クラウスだけが相変わらず無愛想な顔でそっぽを向くのに、俺は頷く。


「うん、頑張ってみる」

「無理はしないでね」

「どーせヘマこいてすぐ帰ってくんじゃないの~?」

「お前にならできる」


 そんなみんなの気持ちを受け取って、俺はまた新しい旅に出た。


 大丈夫。きっとまたいつか会える。

 

 次に会った時にみんなをがっかりさせないように。

 背中を押してくれたことを、みんなが胸を張れるように。

 

 俺は歩み続けた。


 …… 

 …………

 ………………

 ……………………

 …………………………

ここまで読んで頂きありがとうございます!

いかがでしたでしょうか?


「面白い!」「続きが読みたい!」


そう思って頂けましたら↓の☆☆☆☆☆欄にて★★★★★での応援と、ブックマークをお願いいたします!


いつも皆さまに応援頂いているおかげで、

作者は執筆活動を続けることができています!


何卒宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ