イオルンとアベルとイルマ
ヤマト達はイオルンと合流し、この国で起こっている状況を聞いた。
概ね町民から聞いた情報と一致したが、この件には荒禍が関わっているのは確実だと言う。
「荒禍に共鳴した人間を操ってるネ、あれハ。しかも荒禍自身の生命力を抑えてルから、探すのも一苦労。」
「共鳴した人間を操るなんて…」
「そんな事、許せないね。」
ヤマトは静かに怒りを顕にする。
「あ、そうそウ、この国には私だけじゃなく、アベルも来てるノ。後輩さン。」
「アベル?あぁ、ここに来る前にフレイナが言ってた。」
「通信で少し話してたよね。最近来たって。」
「そウ。アベルっていうのハ、トゥインシュである私達の仲間の1人。私と一緒にこの国にいるノ。」
アベル。もう1人仲間がここに。
「今はまだ荒禍は見つけられてないから、もっと人手が欲しかったノ。2人が来てくれて助かっタ。さ、アベルと合流しヨ?」
こうして3人はアベルの元へと向かって行った。
ーーーーーーーーーーー
ガシャーン!
と、大きな音が鳴った。そこには褐色のかっこいい男性が、かっこよくない姿勢で転んでいた。
「…久しぶりだなフレイナ。…そっちは?」
その転んでいた男性は何事も無かったかのように立ち上がり、話しかけてきた。
「アベル久しぶり〜!相変わらずドジだねー。あっ、こっちはヤマト。新しいトゥインシュよ。」
「よろしくお願いします。」
「…あぁ。アベル・ハイヴォルトだ。」
…めっちゃ凄い勢いでスッ転んでて、もしかして変な人かと思ったけど、ちゃんと挨拶してくれるってことは、悪い人じゃなさそうだと、ヤマトは感じた。
「…?なんだ、じっと見て。」
「ああっ!いやいや、何でも無いです…ははは…さっきは何で転んだんです…?」
「分からん。急に足を捻ったんだ。痛かった。」
「あはは…」
「あっ、イオルンお姉ちゃん!」
「おー!イルマ君!こんにちハ!」
遠くから、小さい男の子が走ってきていた。
どうやらイオルンを知っているようだ。
「紹介するネ?この子はイルマ君。この街で知り合った子なノ。」
「僕イルマ!よろしくお願いします!」
元気良く挨拶をするイルマ。
とても笑顔が素敵だ。
「宜しく、イルマ君。僕はヤマト。そっちのお姉ちゃんは、フレイナって言うんだ。」
「そして俺はアベル。」
「フレイナお姉ちゃんと、アベルお兄ちゃん。後、ヤマト…お兄ちゃん?お姉ちゃん?」
「お兄ちゃんだよ。」
「じゃあ、ヤマトお兄ちゃん!3人とも宜しくね!」
「あっそうダ!イルマ君、こレ。」
イオルンはイルマに紙袋を渡す。
「何これ?もしかしてプレゼント!?」
「そう、開けてミテ?」
イルマが紙袋を開けると、そこには水色の靴があった。
「…!ありがとうイオルンお姉ちゃん!この靴履いてみても良い?」
「いいヨ。」
その水色の靴は、イルマにとても良く似合っていた。
「イルマ君かっこいいよ!よかったね!」
笑顔で言うヤマト。
「うん!」
そのヤマトの笑顔に負けない笑顔で笑うイルマ。
「可愛い〜!イルマ君、良い笑顔だネ!靴も似合ってル!」
そう言いながらイルマの頭を撫でるイオルン。
ヤマトは、この子の笑顔を守るため、この国で起こっているヴォワルの起こす事件を解決しなければと決意した。
だが…
ーーーーーーーーーー
「…喧嘩売ってるのかな?」
「技も出来ていないから教えようと思っているだけだ。もっと柔軟にレグメルを使ってみてはどうだ?」
「に、しても言い方ってものがあると思うけれど?」
ヤマトとアベルが言い争いを始めてしまった。
ヤマトが技の練習を人目につかない所でしていた所、アベルがそれを見てアドバイスをしていたらしい。
だが、ヤマトはその言い方が気に入らないようだ。
「まぁまぁ、2人ともっ。ヒートダウンして?ね?」
「アベルの言い方、嫌なんだ。下手とか沢山言ってくるし。」
「下手に下手と言うのは仕方ないだろう。俺はお前よりも先にトゥインシュの力を手に入れている。その俺のアドバイスを受ける気が無い、という事は成長する気がないって事じゃないか?」
「君の思い通りになることが成長する事になるの?それは甚だ疑問だなぁ〜!?」
「ストップ、落ち着いてってバ、2人とモ。」
イオルンが割って入る。
「アベル、貴方は確かにレグメルの扱いは上手いけれど、人との関わり方は上手ジャないネ。
自分のやり方こそが正義ダト考えすぎるのは、驕り高ぶりすぎ、カナ?それと…」
今度はヤマトを見て言う。
「確かにアベルの言い方は嫌カモしれないけれドも、貴方ももう少し素直にアドバイスを受け入れようトすること、大事。
レグメルを柔軟に扱えないのハ、貴方の気持ちの問題でもアル。」
むむむ…と押し黙る2人。
取り敢えずはこれで一旦双方矛を収めるようだ。
「イオルンお姉ちゃんすごーい!喧嘩を収めちゃった!でも、レグメルって何?」
イルマは2人が訓練している所は見ていない、喧嘩する所からしか目撃していないのだ。
2人がトゥインシュであることは知らないので、関連する単語も分からない。
勿論、イオルンもフレイナも自身がトゥインシュ、人を超えた存在である事は隠している。
「ありがト。イルマ君。それはネ、内緒♡」
「助かるわ〜イオルン!さすがね!」
「フフッ…。さぁ、2人とモ。お互いゴメンナサイ、ネ?」
「…悪かった。」
「ぐっ…ごめんなさい…」
お互いに謝るヤマトとアベル。
あまり納得はしていないようだが。
やれやれ…とフレイナは一息つく。
この場は収まったが、今後この2人は大丈夫だろうか。と思った。