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異世界ブンドド ~夢とロマンに生きる王女~  作者: あてだよ
胎動編

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第15話 シャドウイーター

 冒険者ギルドと東門は目と鼻の先なので、直ぐさま東門前の広場へと到着した。


 混雑する時間には早いと言ってたけど、馬車や人々が縦横無尽に行き交い、この時点で既に進むのが大変な感じだ。


「これで、まだ混雑する時間じゃないって……」


「あと1~2時間もすると、日暮れ前に街に入ろうと急ぐ者達が街道から押し寄せますから、もっと混みますよ」


 と、ジェロウムさんが教えてくれる。


 今でも、そこそこ混雑しているけど、夕方ともなると、都心の帰宅ラッシュみたいな感じになっちゃうのか。


「日が暮れると街に入れなくなったりするんですか?」


「いえ、人や騎乗獣までなら脇の小門を使えば入れはするんですがねぇ。大門の扉は閉じるんで、荷車が問題になるんですよ。なもんで、商人連中は大慌ってな事でして」


「なるほど……」


 そう言われ、東門の向こう側を見てみると、既に街へ入る為の荷馬車が渋滞気味な様子が見えた。

 

 あれを魔物の群れが襲うのだとしたら、たしかに結構な被害が出ちゃうかも……


 そんな事を考えながら人や馬車を避けながら進んでいると、東門の前まで到着した。


 一応、交通ルールみたいな物はあるみたいで、門の中の左側が街へ入る人達が通る側で、右側が街の外へ出る者が通る決まりらしい。

 そして、門の内と外に、出入りする人達をチェックする兵士さん達が所々に立っていて、行き交う人や荷車の中身などを調べていた。


 その様子を見て、ふと思った。


 もしかして……

 門の出入りって、パスポートみたいな物のチェックが必要だったりする……?


 外から来る人達が、身分証みたいな物を出しているのが見えて、初めて、その事に気が付く。


 いや、入ってくる人はチェックを受けてるけど、門から出て行く人達は、ほぼノーチェックみたいだ。


「おや? ハシジェーロのとこの……あんたら、少し前に到着したばかりだろ? もう出発するのか?」


「いえいえ、少しだけ狩りの護衛依頼で外に行くだけですよ」


「今からか? まあ、あんたらなら大丈夫だろうが、あと2時間もしたら大門は閉まるから気を付けろよ?」


「ええ、分かってます。ご心配どーも」


 と、こんな感じで、誰を引き留めるでも無く、簡単に門の外へ出られてしまった。


「出る時は、ほぼノーチェックなんですね」


「ん? ああ、ここは特殊ですからねぇ。街の中で大捕り物みたいな事件か、大きな荷物でも無ければ、身元とかを調べられるのは入る時くらいなもんです」


「特殊?」


「おや?知らないんですかい? この王都は関税も無し、ほぼ街中も無税。身元が確かか、荷物に変な物でも無ければ、誰でも自由に出入りできるってんで有名なんですがね」


 そんなんで、国として大丈夫なんだろうか?


「ま、代わりに、ここに来るまでが大変ってオチがあるんですが。西側の森ほどじゃないにしろ、こっち側の街道でも魔物が多いんで、道中で必ず魔物に襲われますからねぇ」


「来るだけでも一苦労というわけですか」


「その通り。おかげで、俺らみたいな冒険者には、商隊の護衛依頼がひっきりなしに舞い込んでくるんで助かってますが」


 ふーん……

 なんか、この王都って、役割的にも社会システム的にも色々と常識外れな所が多いみたいね。


 とりあえず、身元チェックとかの事は帰る時か、お城から追手が来た時にでも考えれば良いか。



 門を離れ、街に入る列に並ぶ荷馬車や人々を横目に街道を進む。


 西に真っ直ぐ伸びる街道付近は、木々が切り開かれ、見通しは良い。

 でも、その少し奥では、南北両側に深い森林地帯が広がっていた。


「あれが、魔の大樹海……」


 生い茂る木々は空から降り注ぐ陽光の一切を遮り、森の中は夜と錯覚してしまう程に薄暗い。

 人の生活圏とはまるで違う不気味さが漂い、遠目に見ても何かが潜んでいると感じさせる雰囲気が、その森にはあった。


 森の様子は不気味ではあるけど、私としては少しワクワクもしている。

 直ぐにでも魔物が現れて戦闘が始まるかも、と胸が高鳴り、期待が膨らむ。


「それで、ルークスの旦那。この後の方針なんですが、何か希望はありますかい?」


「え? 希望ですか?」


「何か狩りたい魔物でも居るんじゃないんですかい?」


「いえ、明確にコレと言った物は……この辺を散策して、魔物がいたら狩れればいいなってくらいで」


 あの森を見ると魔物が出てきてもおかしくない感じもするんだけど……

 きょろきょろと見回してみても、まだそれらしき物は見つからない。


 神様からは、とくに魔物の種類とかは聞かされてないし。

 それらしき物を早めに発見できれば、どうするかも決められるんだけど……


 まだ街から数百mくらいしか離れてないし、もっと先か、森の方にでも行かないと出ないのかな?


「そうですか。ところで旦那は魔物と戦った経験は――ん? どうしたバラッド?」


 ジェロウムさんと話しながら歩いていると、少し前を歩いていたバラッドさんが急に立ち止まり周囲を見渡し始めた。

 それに釣られ、私達も足を止める。


「……なにか、森の気配が妙だ」


「なに? たしかに……。全員、全周囲警戒だ!」


 ジェロウムさんも周囲を見渡すと、少し表情を真剣な物へと変えて、近くに居たメンバー全員に指示を飛ばす。


 私としては、いきなり気配と言われても、皆目見当もつかない。

 漫画やアニメの台詞では聞く事はあっても、さっぱり分からない感覚だ……


「バラッドさん、その気配って、一体どういった感覚なんです?」


「気配ですか? 気配は、なんと言えばいいか……その場を総合的に感じ取った物と言いますか。音、匂い、目に映る物、空気の流れや地面の振動、大気のマナ、そういった物を全体的にとらえて、そこに何があるかを把握するというか、そんな感じです」


「なるほど……それで、何が妙なんです?」


「先ず、音です。耳を澄ましてみてください。ここら一帯と森全体が静かすぎます」


 そう言われ、周囲の音に耳を澄ませる。


 ……たしかに、周辺が静かすぎる気がする。


「普通なら、虫や鳥の声が多少はするものです。でも、今はそれが一切ない。危険な動物や魔物が付近に居ると、そういった小さな生き物は鳴りを潜めて静かになるものなんですが。それが森全体ともなると、予想されるのは魔物の群れか、中型以上の魔物が居る場合です」


 という事は、神様が言っていた魔物の群れが、既に近くに居る……?


「それで、数が多いか、体が大きければ、それだけ他の気配の事も分かりやすい物なんですが……音以外の物が見つからないのが妙でして」


 バラッドさんは、そう説明しながらも、忙しなく周囲を観察し続け、ジェロウムさん達も同様に周辺をくまなく見渡している。

 私もそれに倣い、魔力感知の視覚を広げて周辺を注視してみる。


 木々や茂みの裏なんかに、いくらでも隠れられそうな所がある様に思うけど……


 うーん……変な物は特に見つからない。

 

 それに、アウトドアに関して完全素人の私からすれば、何が変で何が普通なのかの判断もさっぱりだ。


「(ベディは何か分かる?)」


「(周囲のマナには、薄っすらとだが魔物の持つ獰猛な意思を感じる。だが姿が確認できない。こういった状況は擬態系の魔物が潜んでいる場合が多い。注意しろ)」


 擬態系の魔物?


 そこら辺の木々にでも化けてるのかしら?

 それなら、透視でもすれば見つかりそうな物だけど……


 周囲の木々は、内も外も、至って普通の木に見える、

 遠くまで透視してみても、見えるのは、森の木々に遮られて暗い影に染まった風景ばかりだし……


 ……影?


 魔力感知の視覚で、影が見えてる……?


 近くの茂み下の影を、もう一度、よく観察してみる。


 魔力感知の視覚であれば、明暗なんて関係なく、地面や、そこに生える草とかが見えるはずだ。


 なのに、黒い遮光カーテンで遮られているかの様に、それらが見えない。


 肉眼でも同様だ。


「すみません、バラッドさん。あそこの茂みの影なんですけど、何か変じゃありませんか?」


「茂みの影……? あれは……シャドウイーターか?」


「シャドウイーター?」


「シャドウイーターは、影に擬態する魔物です」


「強いんですか?」


「魔物としては、そこまで強くは……影に擬態している状態を叩けば簡単に倒せる魔物ですから。状況によっては少々厄介……――」


 話を続けながらも、バラッドさんは状況を確認するため、きょろきょろと周囲を見渡し、その表情が段々と曇り出す。


「――まずいぞ……ジェロウム! ここら周辺の影のほとんどがシャドウイーターだ!!」


「なに!? おい! 全員、木や茂みの影に近寄るな!!」


「くッ! なんだこいつ!? このッ!」


 ジェロウムさんが、咄嗟にメンバーの人達に指示を出したが、一足遅かった。


 後方にいた一人が、茂みの影から伸びて来た真っ黒い触手の様な物に足を絡み取られ、驚きの声を上げる。


 幸い彼は、直ぐさま手に持っていた武器で絡みついた触手を薙ぎ払い、その場を飛びのいたので無事なようだ。

 だけど、それに呼応するように他の茂みや木々の影からシャドウイーターらしき物が出て来て、一斉に活動を始めてしまった。


 おぉ!

 これが魔物か!


「おいおいおい、これは、ちょっとばかし面倒な状況だな……バラッド、お前はこの事を、急ぎ東門の兵士に伝えてくれ。ついでに、途中でハシーム達を見かけたら急いで合流する様にもだ」


「了解だ」


 ジェロウムさんから指示を受けたバラッドさんは、即座に走り始め、東門の方へと向かっていった。


 その間にも、街道を挟んで両脇のあちらこちらから、黒い影のような物が盛り上がり、妙な動物や不定形な物に形を変え、私達の方へを向かって来る。


「ルークスの旦那も、依頼は未達でかまわんから、囲まれる前に街の方に戻った方が良い」


「ジェロウムさん達はどうするんです?」


「俺たちはシャドウイーターを出来る限り駆除します。それに街道の商隊連中の退避と誘導もしなけりゃなりません」


「じゃあ、少しでも人手が必要ですよね!」


「ですが……旦那の護衛に割ける余裕が有るかは保証できませんが……」


「それは承知しています。手に負えない魔物が出てきた時は下がりますから、それまでは手伝わせてください」


 第一、こんな美味しいシチュエーションを逃すわけないじゃないの!

 臨戦態勢を取るシャドウイーターの群れを見て、私も自分で作り上げた、この機体を暴れさせたくてウズウズしているっていうのに。


 ああ、早く突撃したい……!

 

「……わかりました。無茶はしないでくださいよ? 危険だと判断したら、下がるように指示を出しますから、それを聞き逃さない様に注意を」


「わかりました! それじゃ、ルークス! 行くわよォ!」


 私は、ルークスの足に力を籠め、地面をえぐりながら一気に前へと出た。


「は……? え!? ちょッ! 旦那ぁ!?」


「ティアル!? なにをしている!?」


 ジェロウムさんとベディから発せられる声を聞きながら、私は盾から剣を引き抜き、一番近くにいたシャドウイーターに叩きつける。


 剣の直撃をもろに喰らったシャドウイーターは、まるで墨汁を撒き散らしたかの様に飛び散り、そのまま四散した。


「よーし! 次い!!」


 1匹目のシャドウイーターを屠ると、直ぐ左手側の茂みから影絵の様な動物が現れる。


 私は、そいつ目掛けて一歩踏み込み、盾で思いっきり殴打した。

 すると、水風船が破裂するような音と手応えを残し、シャドウイーターが弾け飛んだ。


 手応えみたいな物は少し弱いけど、死体みたいな物が残らないのは邪魔にならなくて助かるかな?


 あと、踏み込んだ足が地面へと埋まり、少し身動きがしにくい。


 お城の訓練場で走ってた時にも感じてたけど、ここはさらに地面が柔らかく、まるで水を張った田んぼの中でも歩いてるような感じだ。


 やはり、機体が重いと機動性に難がでるわね……


 でも、悪い事ばかりではない。


 こちらが重過ぎる所為か、シャドウイーター側が軽すぎるからか。

 質量差が有り過ぎて、向こうが何をしてきても、ビクともしない堅牢さを強く実感する。


「ま、向こうからすれば金属と岩の塊にぶつかりに来ている様な物だもの。当たり前よね。さあ! どんどん行くわよ!」


「ティアル。あまり皆から離れすぎるな。魔力の強い君は、彼らから離れると魔物を引き寄せてしまうぞ」


「わかってる! わかってるって!」


 獲物は選り取り見取り。


 こっちから行かなくても、向こうから来てくれる。


 私は次々と殺到するシャドウイーターに目掛けて、剣を振るい、盾を叩きつけ、ルークスを一歩一歩前進させた。


「なんだありゃ……シャドウイーター共が近寄るたびに弾け飛んでやがる」

「数体に絡みつかれてるのに、そのまま暴れまわってるぞ……」

「戦い方は出鱈目なのに、どうなってんだ……?」


「ほら! もっと来なさい! もっとよ! ほら! もっと! もっと! あはは、アハハ!」


 獣に擬態したシャドウイーターが振るう爪や牙が立てる硬質な擦過音。

 脚部に絡みついてくる無数の黒い触手を、強引に歩きながら引き千切る感触。

 剣や盾を振るうたびに、シャドウイーターが弾け飛ぶ鈍い衝撃。


 装甲と操縦シートを通して伝わってくる、その心地よい音色に、私は心から歓喜に震え陶酔した。


「あはッ! キャハハ! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 私の喉から勝手に笑い声がでて、狭いコクピット内に響いている。


 私がリアルで求めていた物が、今ここにある。


 楽しすぎて、どうにかなりそうだ。


 左側から数体のシャドウイーターが迫り。

 私はそれに向かって盾を構え、突進を掛けて突っ込み、3体のシャドウイーターを弾き飛ばす。


 今度は右手側から、狼の様な姿を模ったシャドウイーターが2体襲い掛かってきた。

 剣を横薙ぎにし、2体諸共に斬り払うと、私は次の目標を探してルークスを走らせた。


「アハハハハッ! そこォ!!」


「ティアル! 落ち着け! このままだと囲まれるぞ!」


 囲まれる……?


 本当だ。


 数十体くらいのシャドウイーターが、円を描く様に私に向かって包囲網を狭めてきている。


「……じゃあ、どこを攻撃してもいいって事よね!」


 私はわざとルークスの足を止めて、取り囲んてきたシャドウイーターの群れを剣で叩き潰し、盾で叩き潰し、絡みついてきた触手を逆に引き寄せ叩き潰し、脚部に取りついたシャドウイーターを別のシャドウイーターに向けて蹴りつけて叩き潰し、胴体に組み付いてきたシャドウイーターを締め上げて潰して霧散させる。


「さあ! どんどん来なさいよぉ! もっと! もっと! アハハ! あはあ、あは、はぁはぁ……」


「ティアル! 息を切らせているぞ! それに彼らとも離れすぎている! 一旦、引くんだ!」


 息が……?


 ベディに言われて気が付いたけど、たしかに、少し息が苦しい?


 それに、ちょっと興奮しすぎてたかも。


 落ち着いて辺りを見回してみると、周囲のシャドウイーターの数も疎らになっていて。

 いつの間にか、ジェロウムさん達と随分と離れた位置にまで来てしまっていた。


「あは、はは。はぁ、ふぅ……そうね、少し休憩しましょ」


 えーっと、ジェロウムさん達は……?


 街道を通り抜ける馬車達を守る様に、道際に防衛ラインを引く様に戦ってるわね。


 あそこまで一旦戻ろう。

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