俺は無チート、魔王様はチート
今回も閲覧いただきありがとうございます。
「さて、件の旅人ですが、現在は初代魔王様として有名ですね。」
「なんて?」
今魔王って言った?
「はい、魔国初代魔王様ですね。現在の魔国、しいてはこの世界の繁栄に貢献した人物です。」
うん、なんかもう考えない方が良いかな。
話をまとめると。
旅人の名声が広がる。
旅人の強さを確かめようとあちこちから強者が集まる。
旅人に誰も勝てなかったが、彼を慕うものが留まる。
その結果として国が興る。
魔国の由来として。
旅人は単純な力だけでなく魔力もそれはもう凄かったらしい。
つまり魔力の強い者が統治する国、略して魔国。
で、その魔国の王だから魔王。
別に魔物であるとか、人ならざる者とかそういう意味ではないらしい。
「魔国は魔力の強い者が集う国として有名です。その方達から溢れる魔力のため、魔力耐性の低い人は長居するとそれだけで魔力酔いが起こると言われています。」
何それ怖いんですけど。
修羅の国かよ、間違っちゃなさそうだが。
「しかし魔王様の経験から、力による統治ではなくしっかりとした法の下で治められています。働きにはしっかりとした対価を、不正は許されません。魔力という問題さえクリアできれば、非常に住みやすい国として有名です。」
ほ~、まぁ昔話でドラゴン討った報酬をふいにされたんだもんな。
結構魔王様ってのは人格者だったらしい。
「また、魔国は冒険者ギルドの元締めです。各国の冒険者ギルドは全て魔国管轄となっています。最近はこの事を知らない人も増えてますけどね。」
え?そうなの?
そんなの知らんかったけど。
「統治は各国で行うべきだが国が不正を働く事もある。そうなった場合の対抗策として元々送り込まれた精鋭達が冒険者と呼ばれるようになったそうです。そこからランク制度が決まっていき、どの様な人でも働ける場として今の冒険者ギルドとなっていったようですね。」
ほへぇ~つまりは冒険者ギルドって、元々は魔国が他国へ睨みを利かせるための物でもあるのか。
「冒険者ギルドのトップクラス達はSランクと呼ばれ、全員魔国から認定された方達です。認定されるには最高ランクのAランクであること。魔国へ滞在できる強さである事。また現在のSランク冒険者、及びギルドマスター達過半数の同意が最低条件となります。」
それ控えめに言っても化物の類なんじゃないの?
「また、ギルドマスターについては魔国出身者ではない事が条件となります。魔国出身だけに偏ると不公平となるためですね。こちらはSランク冒険者の同意は必要ありませんが、Aランクであることは間違いありません。」
まぁ化物をまとめる様な人ならAランクは必要だわなぁ。
「Sランク冒険者達は様々な面で優遇されますが、有事の際に対応する義務が発生します。また、各ギルドにSランク冒険者は1人のため、もし他にSランク認定される実力者が現れた場合はその座を賭けて争うこととなります。単純な力だけでなく、ギルドや国への貢献、他冒険者からの評価等様々な要素からなるため、Sランクとなったからと言って慢心していてはその座を奪われる事となります。」
ふむ、結構厳しいな。
その分優遇はされているが。
「つまりはSランク冒険者は、ギルドを通じて各国へ多大な貢献していますが、同時に監視も行っている訳ですね。そもそもこういった業務を怠る様な人物はSランクにはなれませんので。」
Sランクとしての地位を捨てようって奴はいないだろうしな。
「さて、今日はこのぐらいにしておきましょうか。皆さんもSランク目指して頑張ってくださいね。」
無理です。
あ、そうだ。
「スミールさん、ちなみにSランクってどのくらい強いんだ?」
「そうですね。このギルドのSランクさんは、山ぐらいなら一刀両断できるって聞いたことありますよ。」
なるほど。
よし、絶対に関わらんでおこう。
俺はそそくさと教室を後にする。
チートは欲しいが、あまり強すぎるのも大変そうではあるよなぁ。
いや欲しいけどな。
魔国の者は悪者以外には寛容です。