空で戸惑うこと
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「……おかしい。」
いつもと変わらぬ静かな空を進むセレスト。
「静かすぎる……モンスターどころか、動物すら1匹もいやしねぇ。」
野生動物はセレストの力を感じ取り近付かない。
が、近付かないのとそもそも存在しないのでは意味が違う。
「どうなってやがる、何が起きている?」
セレストは必死に周囲を探る。
しかしそこにあるのは空。
いつも通りであり、いつもと違う空である。
「ふぅ~落ち着け。焦るな。空は俺の領域だ。」
ぶつぶつと呟き落ち着こうとするセレスト。
「とにかく今のままは危険か、まずは一旦戻って報告して改めて調査するか。」
そうしてセレストは進んで来た方向へ戻ろうとする。
だが、そこで更に異変に気付く。
「……俺はどっちから来た?」
セレストはそこで気付く。
自らの方向感覚が無くなっていることに。
空を自由に飛ぶなど、一般人からすれば方向感覚など無いに等しい。
だがセレストは別だ。
その様なことは万が一にもあり得ない。
そのセレストが方向感覚を失っている。
初めての事にセレストは戸惑い、そして恐怖した。
「あり得ない。俺に限ってそんなことはあり得ないんだ!」
冷静さを必死に保つセレスト。
Sランク冒険者としての経験が、何とか彼の理性を保っていた。
……カランッ。
「むぅ?」
冷静になろうとしているセレストの懐から音がする。
それは万が一の時のためにと渡された魔道具。
「……これに賭けるか。」
セレストは望みを賭けて、その魔道具を起動した。




