Sランクと俺のペアの本当の始まり
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「……これ。」
「おう、ご苦労さん。」
首根っこを捕まえられて、マクロさん共々ギルドマスターの部屋に連れてこられた。
マクロさんは何かの書類をアーノルドさんに渡している。
「うむ、詳しくは後からまた確認するが、とりあえずは大丈夫なようだな。」
「……ん。」
あ、あれ報告書か。
喋るのは苦手だから先にまとめていたって訳ね。
仕事ができるなぁマクロさん。
……で、それなら尚更俺はいらなくない?
「さて、それじゃあ。」
「お疲れ様でした。」
「帰るな。今から本題だ。」
「何なんですかもう。」
もうこれ以上俺がいる理由ないじゃない。
「てことでゼロ。お前こいつとパーティ組め。」
「……なんて?」
何言ってるんですかねこのオッサン。
遂にボケたか。
「失礼な事考えてるのが丸分かりだ。」
「そんな訳ないじゃないですか。ただ何言ってんだこのオッサンって思っただけです。」
「いい度胸してるなお前。お前も十分オッサンだろうが。」
ははは、こやつめ。
あんたと比べたら俺なんてガキだろうに。
まぁそんなことはどうでも良い。
「そもそも俺は見習いを卒業したばかりのEランクですよ。それがSランクと組むとか誰に聞いてもおかしいって言うと思いますけど。」
「まぁ聞け。」
「聞いたら強制でしょうそれ、嫌です。」
「……。」
いや、マクロさん、そんなこっち見ないで。
兜で見えないけど何かすっごく悲しそうなんですけど。
別にマクロさんが嫌な訳じゃなくてですね。
「まぁこいつは……お前はマクロって呼んでるのか。マクロが実力はともかく性格に難ありってのは説明もしたし実際に分かったろ。」
「性格……は別に難とか無いんじゃないですかね。」
「む?」
マクロさんは確かに喋らない、まぁコミュ障なのは間違いないだろう。
が、だからって性格が悪い訳じゃない。
道中もなるべく緩い道を選んでくれていたようだし、障害物なんかはあっという間に除去してくれていた。
食後の片付けを手伝ってくれたし、調査中も常に俺の方を気にかけていてくれた様に思う。
まぁほんと、単にコミュ障ってだけだ。
そんなの今時珍しくもないし、最低限反応してくれるし、意思疎通はできるから問題ない。
と、俺は思った事をそのまま伝えた。
これが悪かった。
「……!!」
ガシィ!と音がするぐらいマクロさんが俺の手を掴んだ。
表情は見えないがぷるぷると震えている
あれ?泣いてるのか。
いやそれよりも。
「痛い痛い痛い痛いってマクロさん!!!潰れる!!!俺の手が潰れる!!!」
「!!!」
サッと俺の手を放してくれた。
マジ手が潰れるかと思った。
うん、腫れてはいるが指はちゃんとあるな、良し。
「ま、そういう所だ。」
「いやどういう所ですか。」
手を擦りながらアーノルドさんに問う。
「そのまんまだ。今までもマクロとパーティを組みたいって奴はごまんといた。だがどいつもお試しで組んだら二度目が無かったんだ。意思疎通ができないとか何考えてるか分からなくて怖いとかな。」
「……。」
マクロさんはどこか悲しそうだ。
「その点お前はどうだ。出会って間もないのに無理に話をする訳でもなく、適度な距離を保ち意思疎通をしてみせた。そんな奴いなかったからな、これを逃す訳いかんだろう。それともお前はSランクのこいつでは不服か?」
「……。」
「……いや、そういう訳では。」
心なしかマクロさんが凄く不安そうだ。
尻尾とかあったら確実に垂れているだろう。
「現実問題として、俺がマクロさんの足を引っ張るだけでしょうが。同行もできませんよ。」
「安心しろ、そんなヤバイ依頼には今まで通りマクロだけで向かう。お前は一般的な依頼の際に同行すれば良い。」
「うぐ、しかしそれでもAはおろかB、Cランクとかでも俺は無理ですよ。」
「Sランクがいるんだ。正直一国の軍に守られるよりも安心だと思うがな。」
「ま、周りからの嫉妬とか変な噂とか。」
「この俺がどうとでもしてやる。」
「いや、他にも。」
「ゼロよ。」
「マクロが嫌か嫌じゃないか。」
「そりゃ嫌じゃないですけど。」
「決まりだ。」
その聞き方はずるいだろう。
「それに悪い話じゃない。Sランクとパーティとなれば、お前に害をなそうとするとこいつを敵に回すってのと同義だ。荒事が苦手なお前にも良いことだと思うが。」
「……はぁ、分かりましたよ。」
どの道拒否権なんぞ最初からなかったんだろう。
「じゃあまぁ、何の役に立てるか分かりませんが、マクロさん今後ともよろしくお願いします。」
「……!!……よろしく!!」
「痛い痛い痛い!!!折れる折れる折れる!!!」
マクロさんから熱烈なハグを受ける。
この人、力だけで人を亡き者にできるだろ。
こうして俺は、半ば強制でSランクのマクロさんとパーティを組むことになったとさ。




