第83話 もう、お前だけで充分じゃないの?
襲い掛かってきた闇月暗殺部隊の前に、アンジェリカが躍り出た。
素早い動きで暗殺部隊の攻撃を次々かわしていく。
「早いぞ!範囲魔法で確実に殺せ!」
距離をとった暗殺部隊は、それぞれが攻撃魔法を放ち、一斉にアンジェリカを攻撃した。
辺りが、煙と塵で包まれる。
「いやー、悪いんだけど、あんた達程度の攻撃は何も当たらないわ」
アンジェリカは、頭をかきながら煙の中から歩み出た。
何のダメージも受けていない。
「私って何の攻撃能力も無いのよね。だから一人では、戦闘は無理。だけど、回避と盗みだけは最強なのよ」
アンジェリカは、てへっと笑って舌を出した。
「闇神格転身!」
アンジェリカの背中から赤黒いオーラが噴き出す。
「神の遠隔の大魔術!」
アンジェリカが、そう叫ぶと、そこら中から闇月暗殺部隊の少女達の悲鳴が上がった。
少女達の着ていた鎧やSAハイドランジアが、ばらばらとアンジェリカの周囲に散乱する。
「駄目です、私達ではアンジェリカ様に触る事も出来ません!」
下着一枚の姿にされた闇月暗殺部隊の少女達は、リカルドに訴えた。
「闇の爆発!!」
リカルドは、ディバインスキルを発動して、アンジェリカを攻撃した。
アンジェリカは、黒い爆発に巻き込まれる。
「後は、自分達で何とかしろ!!」
既に、サンシールとウェリオの二人と斬り合っていたリカルド、そう叫んだ。
二人相手に一人で、正確にはリカルドと上位アンデッドの高レベルスライム系モンスターである従魔のエリコのコンビだが、優位に戦いを進めていた。
「レジェンダリーレア、誤魔化しの籠手!」
リカルドの頭上から、アンジェリカの声が響く。
「まさか、俺のディバインスキルも駄目なのか!?」
リカルドは、思わず上を見た。
片手に銀色の籠手をはめ、ほくそ笑むアンジェリカの表情が目に入る。
「なっ!」
リカルドが視線をサンシール達に戻すと、いつの間にか持っていた聖剣デュランダルが、消えている。
彼女のアイテムの効果で、抜き取られたのだ。
籠手は、彼女の盗みのスキルを1日に1度だけ大幅に高める。
「しまった!あのアイテムは!!」
リカルドが、そう言った瞬間、彼の首をサンシールのフォトン粒子レーザーブレードが襲う。
「リカルド様!」
思わず人間の姿に戻ったエリコが、間に入って庇うが、あまりの威力に二人共切り倒される。
「申し訳ありませんでした…」
復活したリカルドと、闇月暗殺部隊の面々は、全員下着姿で土下座させられていた。
「おほほほ!お姉ちゃんに逆らうと、こうなるのよ。しばらく、そのまま反省しなさい!」
アンジェリカの手には、聖剣デュランダルが握られている。
「もう、お前だけで充分じゃないの?」
アンジェリカからデュランダルを受け取ったサンシールは、感嘆の声をあげた。
「知らなかったの?この、お話しは、私が主人公なのよ」
アンジェリカは、にっこり笑った。
『そう、私はいつでも自分が主人公だと思って生きるのよ!』
彼女は、心の中で勝ち誇った。
「ああ、ますます私が空気に…」
ウェリオは、心の中で呟いた。
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