第79話 王妹殿下の出撃
「幻魔斎様、後方より超大型の飛行物体が高速接近中。距離600km」
イルミンズールに向けて侵攻する空中要塞ドクロ城の艦橋、晴明が幻魔斎に報告する。
「敵の伏兵か?180度回頭して、迎撃に向かう」
幻魔斎が、要塞の方向を後ろに向けるように命令した。
「酒呑童子、青頭巾。先行して敵を迎撃せよ。宝眼教の四天王の力、見せつけてやれ」
幻魔斎は、発進ドックにいる赤い鬼と青い鬼のコンビに指示を出した。
艦橋のモニターに映る2人は多数の部下を引き連れ、ハッチから降下して目標に飛んでいく。
幻魔斎は立ち上がると、要塞を多数の魔法で強化していく。
「晴明、妲己、要塞の防御を固めろ」
彼は魔法によるバフが終わると、晴明と妲己に出撃して要塞の防衛を固めるように指示した。
「はっ!」
2人は、要塞の外に転移魔法で移動する。
「さて、我々を軽んじる、他の悪属性の国王達に目に物見せてやろう」
幻魔斎は、王座に座って肘をついて言った。
「王妹殿下!超大型飛行物体を確認。レーダーによると、情報にあった空中要塞ドクロ城の可能性大。強力な魔力を持った物体を、こちらに向けて発射した模様」
部下が、アルビオン王の妹、メアリーに報告する。
ここは、アルビオンの建造した空中要塞ウインチェスターの艦橋。
城の大広間を模した白い内装の大きな空間。
王座に、青と黄金の鎧を着たメアリーが座っている。
要塞ウインチェスターは、空中に浮かぶ三角形の白い城の様だった。
中央に巨大な主砲の砲口が開いている。
「ルイーズ帝に、王の説得が長引き援軍が遅れた事を詫びる通信を入れておけ」
メアリーは、部下に指示を出した。
不干渉を貫いていたアルビオン王だったが、リカルドの魔法で首都に大きなダメージを受け、やっとメアリーに出撃の許可を出していた。
『この私が、アルビオンに呼び戻されていなければ、ガリアの地をノドの好きにはさせておかなかったものを…』
メアリーは、心の中で思った。
「長距離ミサイルで、接近する魔力群を迎撃せよ。加えて主砲に魔力充填、視界に入ったと同時に発射せよ」
彼女は、迎撃命令を出す。
多数のミサイルが、酒呑童子、青頭巾の部隊目掛けて発射される。
同時に、巨大な主砲の砲口に光が集まっていく。
「敵、75km地点に侵入。ミサイル攻撃は効果無し。視界内に侵入、主砲発射します!」
部下が、メアリーに報告する。
ウインチェスターの主砲が火を噴き、巨大な光線の束が敵部隊を飲み込む。
その数秒後、ウインチェスターが大きく揺れ、艦橋の各所から火花が飛ぶ。
「敵の、ほとんどを撃墜。しかし、10体ほどが要塞直近に転移。攻撃を受けています。魔法防御残り70%」
部下が、メアリーに報告した。
「対空迎撃開始。SAゴスホーク部隊を出撃させろ。私も出る!」
メアリーは、SAファルコンの量産型。
SAゴスホーク部隊の出撃を指示する。
彼女は大剣を持つと、王座から立ち上がった。
その身に、SAファルコンが装備される。
「この血沸き肉躍る感覚、初代ロムルス帝の従魔として戦った日々を思い出す。再びロムルス帝の為に戦えるとは幸せの極み!」
メアリーは、そう言うと転移魔法で出撃した。
空中要塞ウインチェスターの外では、酒呑童子と青頭巾、残った部下が強力な攻撃魔法で要塞を攻撃していた。
「ファイヤーボール!!」
「サイクロン!!」
魔法を連発して、要塞の魔法防御を削っていく。
「この、この私に歯向かう痴れ者め!」
2人に、メアリーの怒声が浴びせられた。
彼女は、SAゴスホーク部隊を引き連れ、酒呑童子と青頭巾に向かっていく。
「初代ロムルス帝より賜った聖剣エクスカリバーの力を見るがよい!」
メアリーは、そう叫ぶと大剣を振るった。
巨大な光の刃が剣身から放たれ、2人の体を真っ二つにした。
しかし、酒呑童子と青頭巾は、持たされていた復活アイテムで即座に回復する。
2人は、通信機で幻魔斎に指示を求めた。
「即座に撤退して、戦力を整えろ。初撃は充分に成功である」
幻魔斎は、即座に撤退を指示する。
2人の残った部下が、メアリー達に襲い掛かって撤退を支援する。
その間に、2人は転移魔法で大きくウインチェスターから離れた。
「全力前進。敵の本隊の迎撃に向かう!」
メアリーは、ウインチェスターの艦橋に指示を出した。
彼女とSA部隊は、そのまま随行する。




