第62話 英雄達の凱旋
「ここは?」
サンシールが目を開くと、そこは領主の家の2階にある客室のベッドの上だった。
寝巻姿で、寝かされている。
「ご無事で良かった、サンシール様」
ウェリオが、ベッドの横でサンシールの手を握る。
「傷は、回復薬で何とかなったんですが、通常の毒が効かないはずの我々にも効果のある、厄介な神経毒を与える効果が武器に付与されていたらしく、街に戻ってベルタ殿に治療していただくまで意識を失っていたのです」
モーギスが、説明する。
「はっはっは、珍しく、やられたようだなサンシール君!」
イストルが、笑いながら言う。
横には吉江百合子や、ベルタ、アヤ、領主もいる。
「あんたも蘇生していたのか。無事で良かった」
サンシールは、言った。
「さあ、サンシール君。外で、この街の人々が心配しているようだ。回復した姿を見せてやれ」
イストルが、サンシールに手を貸して立たせる。
外で、ざわざわと人々の声がする。
「我々の英雄に万歳!!」
「サンシール様!ご無事で何より!」
サンシール達が2階のバルコニーに出て、集まった街の人々に手を振ると歓声が巻き起こった。
「俺達のやった事は、無駄ではなかったようだな」
「はい、あなたが、この街を救ったのです」
サンシールは、横にいるウェリオに、そう言った。
「あの娘は?アンジェリカは、どうなった?」
サンシールは、思わず無神経な事を口走った。
「あの方は、この手紙を残して去られました」
ウェリオは、預かった手紙をサンシールに渡しました。
彼は、寝室に戻ると手紙を開いた。
サンシール様へ
サンシール様、長い間騙していて、ごめんなさい。
その私を受け入れてくれて、本当に嬉しかった。
しかし、本当の私は、あなた方の知っているような人間ではありません。
私といる事で、これ以上、ご迷惑をかけるわけにはまいりません。
私は、身を引きます。
アンジェリカ
「そんな事は分かっていた…。すぐに彼女を探さないと」
サンシールは、手紙を握りしめて言った。
「あなたの行くところ、どこでも一緒に参ります。サンシール様」
ウェリオは、サンシールに言った。
「あー、盛り上がってるところ悪いんだけど、まずはルイーズの姐さんに報告しないとな」
イストルが、二人の肩に手を置いて言う。
「やはり生きておいででしたか。さすがは、ルイーズ様。という事は、まさかカインも?」
モーギスが、聞いた。
「はい、お二人共、仲睦まじくお過ごしです」
吉江百合子が、言った。
「そこんところ詳しく!」
ベルタは、急に吉江に顔を近づけて熱心に聞いてきた。
「うんうん」
アヤも、強く頷く。
「それは外せないよなあ…」
サンシールは、困った様に頭をかいた。
彼は、既に全てを悟っていた。
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