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キャラデータは女帝の夢を見る~女帝、恋愛も世界も征服する  作者: 百鬼清風
第一部 ヴァンパイアロード・カイン
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第6話 ゲームマスター

「ファウスト、個別チャットルームを作成しろ。デモゴルゴンを呼び出せ」


 ルイーズ達が去った後、カインは自分のガイド妖精を呼び出した。

 黒いシルクハットとスーツ、木製のステッキ、鷲鼻に尖った耳と切れ上がった口に覗く牙、青い肌。

 悪魔が紳士の装いをしているような姿の小男が現れ、個別チャットを作成する。


 カインとルルワリリス、イラド、ワーキンが、ルイーズ達のものと同じ様なデジタルな背景の個別チャットルームに入る。


「カインよ、エウロパ大陸の征服は順調か?」


 空中に長方形の画面がパソコンのモニターの様に映し出され、そこに映った20代後半ぐらいの女性がカインに話しかける。

 黒、青、灰色の3色が使われた派手なビジネススーツを着ている。

 大きな黒革のビジネスチェアに腰かけていた。

 灰色がかったストレートヘア、青いフレームの眼鏡。

 レンズの向こうには、眼光鋭い切れ長の目が見える。


 彼女こそ、混沌ー悪を担当するGM、デモゴルゴンであった。

 イマジンのGMは製作会社”ダンジョン”の主要スタッフがGMキャラを動かしており、デモゴルゴンは社長でありメインデザイナーの森出海音もりでかいねが担当している。

 もちろん、始終、主要スタッフ達が操作しているわけではなく、大抵はAIが定型文を返すかアルバイトを含む一般スタッフが業務を代行していたのだが。


 デモゴルゴンはメインデザイナーが担当しているだけあって、イマジンの世界の創造主として設定されていた。


「デモゴルゴン様は、お前が目標を達成する事を心待ちにしておられる。感謝するがいい」


 使役される側のはずのガイド妖精のファウストが、カインに対して横柄な口をきいた。


「順調だったが、北端の海の向こうにあるアルビオンという島国には、我々に対抗出来るプレイヤーとハイエルフ達がいるようだ。大陸側に彼らが支援する勢力があり、攻略に時間がかかっている」


 カインが、デモゴルゴンに返答する。


「その地は、私の担当ではない。別のGMが支援しているのであろう。この地に降り立った9人のGMは、それぞれの属性のプレイヤー支援に動いていて、私の思う通りにはならない。残念ながら、お前たちが真の安寧を得る為には、彼等を打ち倒す他ないだろう」


 デモゴルゴンが、カインに語りかける。


「うむ、その為には、少しでも味方のプレイヤーを増やさなければならないと考えている」


「しかし、別属性のプレイヤーは私の庇護下にはない相容れない存在だ。利用するのは構わんが、努々忘れな。いつかは始末せねばならんかもしれんぞ。今のお前達は属性の影響を受け、自分でも気がつかぬうちに現実世界とは違った価値観を持っているのだ」


 デモゴルゴンは、カインの返答に口を挟んだ。


「どんな属性の相手でも出来れば協力すべきだと考えている。私の目的は、我がギルドの安寧と幸福だ。敵対者を倒すだけで、征服や支配自体は重要な事ではない。協力できる者とは協力する。そもそも、我がギルド内でも複数の属性の者がいる事だしな」


 カインは、デモゴルゴンに同意しかねた。


「ふむ、私は特定のプレイヤーの行動を制限する気はない。自分の判断で第二の生を楽しむのがよかろう。そもそも我々は、かつてのゲーム世界ほどイマジンプレイヤーに干渉する力は無い。今の私達GMの力は、電夢境の者との取引きで限定的に手に入れたものだからな」


 デモゴルゴンが、そう言い終わると、その姿を映していた空中の四角い映像は消えた。


「もはや創造主の立場ではないというのに、ノドの王たるカイン様に、あの態度。毎回の事ながら許せぬ」


 ルルワリリスは、悔し気な顔をして言った。


「しかし彼等が、我々にはない力と情報を持っているのは確かだ。私達と彼女は対等な同盟関係だと考えよ。利用出来るものは何でも利用せねば、この世界で生き残る事は出来ない」


 カインは、ルルワリリスをたしなめた。


「先ほどのプレイヤー達3人、全員アリーナチャンピオンになった事があるとデータに残っております。既に我々のギルドメンバーとなっているガンスミス殿が、元所属していたギルドとは幸運でしたな。ガンスミス殿のノドの国への貢献を考えると、彼等も大きな戦力となってくれるでしょう」


 ワーキンが、話を切り替えた。


「あのルイーズという女の態度も気に入らぬ、蘇生され保護されている立場にも関わらず、最初からカイン王に対して同格であるかのような態度。もっと恩義を感じて、感謝を示すべきだろう」


 ルルワリリスは、不機嫌なままだ。


「女王は、我らが王が女性と関わるのが気にいらないとみえる」


 イラドは、少し軽めに言った。


「お前も、我が国の将軍でありながら、いきなり殴り倒され、恥とは思っておらぬのか?」


「むむ…」


 ルルワリリスの言葉に、イラドは口ごもった。


「初対面の客人に無礼な事をすれば、私が許しておかぬ。イラドは、立派に我が騎士としての態度を示しただけだ。お前も女王らしい姿を見せよ」


 カインが、ルルワリリスをたしなめる。


「ははっ!差し出がましい事を申しました。申し訳ございません」


 ルルワリリスが深々と頭を下げる。


「そこまで頭を下げる必要は無い。今のお前は、ただの従魔ではない。私の妻であり、この国の女王だ。私の自慢の女王であってくれればよいのだ」


 カインは、優し気に微笑んだ。


「以後、気をつけます」


 ルルワリリスは、素直に従った。


「女王は、我々に大きなダメージを与える事が可能な存在を警戒なされているのでしょう。その点は、この私も注視しております。彼等3人の戦力を充分に把握し、もし裏切れば対処出来るようにしておかねばならんでしょうな」


 ワーキンは、ルルワリリスに助け舟を出した。


「こちらも、必要以上に戦力を探られぬように注意せねばな。いつもながら、助言助かる」


 カインは、言った。


「その様な基本は、王には分かっておいででしょうが…」


 ワーキンは、頭を下げて言った。


『何故だろうな、ルイーズ殿には悪い印象を持てないのだ。』


 カインは、新しい客人に思いをはせた。




『この体も、まだ改良の必要があるか』


 その頃、モニターの電源を落とした森出海音は、手首を動かしながら考えていた。

 手首の動きに合わせて、モーターの作動音が小さく響く。


 立ち上がり、壁のスイッチを押してブラインドが上げ、大きな窓から現実世界の夜景を見下ろす。

相当な高層階だ。


「電夢境も、この世界も、全て私の所有物にしてみせる」


 海音は、不敵に笑った…。

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