第50話 悪役令嬢は大怪盗
アンジェリカとウルベルトは、次々と床をすり抜けて下の階層に進んでいく。
「ふふふ、最弱だった盗賊系は、イマジン最終アップデートで最強クラスに強化された。このビルドは、この世界でも最強なのよ」
アンジェリカは、言った。
「俺達の職業シャドウダンサーは、最強のトリックスター。何者も止める事は出来ない。闇に生き、闇を狩る者」
ウルベルトは、悦に入っている。
『特に私は、盗賊系と回避に特化したキャラ構築。必ず宝を見つけ、入れる場所には必ず入って盗み出し、必ず持ち帰る』
アンジェリカは、思った。
二人は、やがて地下深くの一室に入り込んだ。
そこには13個の棺が並んでいる。
「これは、地下墓所?私のスキルが、この城で一番の宝はここだと言っているんだけど」
アンジェリカは、棺を覗き込んだ。
小さな窓がついており、氷漬けの人間が入っているのを発見する。
「何々、最強の円卓の英雄。再び、この地に危機が訪れるまで、ここに眠る…」
彼女は、棺にかかれた古代の文字を、すらすらと解読する。
「こいつらが、この国の秘密兵器って事か。さては、定命の強者の寿命が尽きない様に眠らせてあるのね。これは確かに、お宝。でも、役に立ちそうにないわね」
アンジェリカは、残念そうに言った。
「どうする、封印しとくか?」
ウルベルトが言った。
「厳重に防御魔法がされているし、追手が来るまでに間に合わないわね。他の宝を探すわよ」
アンジェリカと、ウルベルトは、次の宝の場所に向かう。
次々と壁をすり抜け、何かの倉庫に辿り着いた。
そこには、何機ものSAが、並んでいる。
アンジェリカの目が、その一機に向けられる。
「間違いない。私のスキルが言った。この機体は、この国最強の機体。最新鋭のものよ。ガンスミスが流した輸出用の旧型機から、ここまでのものを作るとは。この国の技術力も舐められないわね。ミスリルにオリハルコン、貴重な素材がふんだんに使われてる。おそらくは、王か将軍クラス用…いや、最強の兵士に与えられるもの」
アンジェリカは、推測する。
そのSAは、白銀に輝いていた。
「この機体、戦士系用ね。私達には使えないわ…。そうだ!これをサンシール様に、お届けすれば喜んで下さるはず!これなら、数千の援軍にも匹敵する戦力。あの女に差が付けられる!」
アンジェリカは、SAを探りながら、うっとりした目で言った。
「うーむ、この機体ならば、我がヘクトールと戦える。SAもない相手に勝っても、我が栄誉とはならんからな」
ウルベルトも、同意した。
「さーてと、じゃあ帰るわよ!最後に派手に一発かましちゃいな!」
アンジェリカは、SAをインベントリにしまい込むと言った。
「エピック呪文、核爆発!」
ウルベルトの手から、巨大な火球が放たれ、王城の壁に巨大な穴が開いた。
王都にも多大な被害を及ぼす。
フライングボード形態のヘクトールに乗り、二人は王都から飛び去った。
その速度には、誰もついていく事は出来なかった。
「さあ、あの方の元へ!私の属性は中立-中立。自分の為に、いつでも好きな様に生きる女よ!」
「我が好敵手よ!お前を倒すのは、この俺。今は、手助けしてやろう!」
アンジェリカとウルベルトの叫び声が、アルビオンの空に響いた。
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