第34話 女神合体
「お前の負けが、今決まった。思えば、最初から勝つ気が無かったか。魔王として倒されるのが望みだったのか?」
ルイーズの目から、涙が一筋流れた。
「何を言う!!圧倒的に有利なのは私だ。必ず勝つ!」
カインが、叫ぶ。
「お前は、アテナの召喚を確認してから宝珠を発動させた。そして、このアイテムの存在を一度は見たであろう。」
ルイーズは、ロンギヌスの能力をコピーした聖剣、ジュワユーズをインベントリから取り出した。
「ジュワユーズよ!あの宝珠の能力をコピーして発動するのだ。」
ジュワユーズをカインの方に向けると、柄頭についた宝珠の中に目の様な模様が現れた。
その目が、カインの胸に収められた暗黒竜の宝珠を捉えると、柄頭の宝珠の中に同じ暗黒竜の宝珠が浮かび上がる。
「マリア!アテナ!ガブリエル!現魔融合!秩序と善の管理者メルリヌスよ!聞こえているなら、今こそ哀れな魔王に救済を与える力を!」
ルイーズの虹色のオーラが、より強い輝きを放ち、カインの接近を阻止する。
「ルイーズよ、メルリヌスは確かに連れてきた。カインの動きを完全に止めた上で、”あれ”でデモゴルゴンの影響を断つのだ。さすれば向こうの世界に戻る機能を回復出来る」
ルイーズの後ろに、エーテル体のソフィアが現れて言った。
さらに、ソフィアの横に、白いローブを身に纏った銀髪で青い目の美青年がエーテル体で現れた。
彼は、イマジンの筆頭プランナーの担当していたGMキャラのメルリヌスだ。
「ひさしぶりだなルイーズ。おおこれは美しい姿になって!こんなところで無ければ茶にでも誘いたいところだ」
メルリヌスは軽口を叩いた。
「セクハラで訴えるぞ!早く許可を出してくれ」
ルイーズは、ちょっと怒った声で言う。
「向こうの世界じゃ無問題さ。さあ、許可しよう。美しい女神の姿を見せておくれ」
メルリヌスが、そう言うと、ルイーズの現魔3体が光になって彼女の体に吸収されていく。
白い鎧の端から、虹色に光る布がローブの様に広がる。
背中の虹色の翼の様なオーラの輝きが金属の翼に変化し、その下からジェット噴射の様に虹色の光を噴出させ始める。
髪型がアップに変り、頭にダイヤを散りばめた王冠が現れる。
左腕に鏡面に光る巨大なカイトシールドが装備された。
右腕には3mはあろうかというロングライフルが持たれている。
ライフルの先からは、ビーム光で形作られた銃剣が伸び、まるで長槍の様だ。
「女神ヌトス、顕現したな!さらに神格レベルが20上がって50に。元のキャラレベル120と合わせて170Lv分の力を見せてくれ」
メルリヌスが、感嘆の声を上げる。
「おのれ!貴様ら。私の楽しみに水を挿しおって!大体なんだ、そのクソアイテムは!」
カインの後ろに、エーテル体のデモゴルゴンが現れて文句を言った。
「ジュワユーズは、次々強力なレジェンドアイテムを出して射幸心を煽り、目先の売り上げを求めたせいで、クソゲーになったイマジンへの、僕達の皮肉ですよ。アイテムを貯め込んで、すぐにキャラが強力になってしまう問題点へのね!社長もサービス終了時と同時にリリースなら構わないと言ったじゃないですか」
メルリヌスは、ニヤリと笑った。
「ふん、もう構わんわ。小物が、どこまで大悪党になれるか見物だったが、この辺りが限界だな。自ら勝ちを諦め、諦めた事を自分でも分かっておらん。我々、GMは担当属性のキャラにプレイを最大限楽しませる為に存在している。勝ち負けは関係ない。自ら魔王として勇者に倒されるのが矜持というなら、そうするがよい!」
デモゴルゴンは、そう言うと姿を消した。
そうこうしていると、ルイーズから放たれていた光が落ち着いてきた。
「なんと美しい戦女神の姿だ。この魔王カインの最終形態と相対するなら、そうでなくてはな!」
カインは、女神ヌトスの姿となったルイーズを見て言った。
「さあ、今度こそ終幕だ!」
ルイーズは、カインに向かって飛んでいく。
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