第32話 女神と魔王の第二形態
「戯れ事は、ここまでだ!正義によって、お前を討つ!!」
ルイーズは、鍔迫り合いからカインを吹き飛ばした。
「大いなる加速!」
カインが、すかさず加速魔法を発動させる。
「神の加速!」
ルイーズも、加速魔法で対抗する。
彼女は、カインの周囲を超高速で移動しながら攻撃を開始した。
矢継ぎ早に魔法で強化された弾丸が、連続でカインに撃ち込まれる。
そのダメージが、カインの魔法やアイテム使用をことごとく邪魔する。
『魔力の能力値は、私の方が圧倒的に上。ディバインマジックの方が修正値が優秀とはいえ、ここまで加速魔法に差があるはずがない。元の速度の能力値に差がありすぎるのだ』
カインはパッシブで発動する回復アイテムや回復魔法で、かろうじて耐える。
「お前のビルドは、仲間に頼って戦うスタイルに偏りすぎだ。よほど、仲間とパーティープレイを愛していたのだろう。しかし、それでは私に勝つ事は出来ない。諦めて膝をつけ!」
ルイーズがカインに降伏勧告を行う。
しかし、カインは、そのまま攻撃を受け続ける。
「ぐはっ!」
カインは、血を大量に吐き出し、動かなくなった。
その背中が弾け飛び、中から煙の様な赤黒いオーラが噴き出す。
元の体は霧のように消え去り、巨大な燃える瞳が現れる。
「この形態を見せたのは、ひさしぶりだぞルイーズ!!そして、この姿を見て生きて帰ったものはいないのだ!」
カインの声が瞳から響く。
さらに強いオーラにルイーズは、後退させられ、しばし硬直する。
その隙に、カインは現魔を召喚する。
「来い!私の最高現魔、暗黒の毒竜ファフニール!」
顔面が蜘蛛の様な毒虫、黒い霧の毒ガスを身に纏ったガンメタリックのドラゴンが現れる。
同時に、ルイーズに数々の状態異常が同時にかかる。
「次元を越える、最強の暗黒魔法系現魔ディメンションリッチ!!」
両目にエメラルドが、はめ込まれた、2mはある巨大な髑髏が現れる。
恐ろしく高い魔力とMPを持った最強クラスのマジックキャスターの現魔だ。
「私を守れ!暗黒の騎士、ボーンジェネラル!!」
青い炎を纏った、プレートメイルを着た骨の馬に乗った、フルプレートの骨の騎士が現れた。
その手には、3mに届きそうな巨大な片手剣が握られている。
「その姿は、グレートエルダースペクターアイ!アンデット系最強のスペルキャスター用種族。それが貴殿の正体か!?」
ルイーズは、叫んだ。
「ここからが、魔王のターンよ!来たれ異界ヘルヘイム!」
空が黒い雲に覆われ、薄暗くなる。
いつの間にか、地上が赤黒い沼に覆われた世界になる。
「この異界では、私と私の現魔の能力は大幅に向上する。逆に秩序-善属性のお前は、大幅な能力減にさらされるのだ。さあ、第二ラウンドといこうか」
カインが、勝ち誇った様に言う。
「エピックマジック、核爆発!」
カインと、その現魔を中心に、巨大な光と熱が放出される。
「演出重視の変身、エピック呪文は派手な対軍魔法。いかにも、お前が好きそうな雰囲気重視のビルドだな…」
ルイーズは、大きなダメージを受けて言った。
受け身で、回復アイテムが連続で使われ回復する。
「だが、異界ならば外の世界には被害が及ばない。ありがたい事だ。私も本気を出す事が出来る」
ルイーズの背中から、より強い虹色の翼状のオーラが噴き出す。
そのあまりもの輝きにカイン達は、しばし硬直する。
「神格開放Lv40!!」
ルイーズの白い鎧に、虹色の半透明のレースの様な装飾が施される。
黒く長い髪が、より艶やかになり、肌は若く美しくなった。
その姿と声は、みるみる若返り、18歳ぐらいの少女に戻る。
「この歳で、こんな小娘の姿に戻らねばならんとはな。だから、この力は好きではないのだ。第一、ゲームバランスもクソもなくて、つまらん」
ルイーズは、ため息をついた。
「慈愛の地母神マリア!」
白いローブを着た、祈りを捧げる美しい女性現魔が召喚される。
召喚時にルイーズの全ての、状態異常が取り除かれる。
「全能の雷神ゼウス!」
手に王笏と霆を持ち、鷲を従えた堂々たる髭の男性現魔が召喚された。
霆から電光が、ほとばしる。
「魔法の主神オーディン!」
つば広の帽子に長い髭、いかにも老魔法使いという姿の男性現魔が現れる。
片目に眼帯、手には槍を持つ。
二匹の狼と鴉を従えている。
「白百合の園ニュルンベルク!」
ルイーズが、そう言うと、雲から光の帯が次々と差し込み、地上には白い百合が咲き始める。
異界同士が、入り乱れた様な景色になった。
二人の作りだした異界の効果が打ち消し合う。
「くくく、面白い。たとえ神であろうと、ステータスがあるのなら殺してみせようぞ!」
カインは、そう叫ぶと、次の攻撃態勢に入った。
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