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キャラデータは女帝の夢を見る~女帝、恋愛も世界も征服する  作者: 百鬼清風
第一部 ヴァンパイアロード・カイン
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第27話 エーテル体

 警備ロボットの襲撃を乗り越え、4人は2階に登ってきた。


「2階に、ダンジョンのデータサーバの本体があるはずだ」


 デイジー陽子は、階段を上った先にあった2階の入り口のドアを開けようとしたが、ロックが掛かっていて開けられない。


「破壊してもよいが、それでは芸も無いし後々面倒なのだろう?ここは専門家になんとかしてもらうか」


 カインは、田中実の方を見て言った。

 彼は、手早くドアのセキュリティパネルを外すとコードに手をあて、インプラントされたPCを起動する。


「モデル検査付きの定理証明システムか。少し待ってて」


 田中実は、少しの間沈黙した。

 やがて、ドアのロックがかちゃりと音を立てて外れる。


「いつ見ても素晴らしく手早いな」


 ルイーズは、デイジー陽子と共有する彼の記憶を思い出して、田中実の手早さを褒めた。


「うちの会社のシステムなら、時間をかければ誰でも開けられる。ただ、それを効率良く進められるようにAIに指示を出しただけだよ」


 田中実は、平然と言う。

 大した事をしたつもりはないらしい。


「この才能をゲームと単純作業にしか使っていないのだから困ったものだ。まるで、うちがブラック企業みたいに思われる」


 デイジー陽子は、呆れた顔で言った。


 4人はドアを開け、2階のサーバールームへと進む。

 そこも1階を変わらず、柱とラックに積み上げられたサーバーで碁盤の目の様になっている。

 その間を、ダンジョンのサーバーマシンがある方向へ真っ直ぐ進んでいく。


「さっき、警備システムを止めたから、このフロアで警備ロボットに襲われる事はないはず」


 田中実は、セキュリティは大丈夫だと言う。


「…!」


 一同が狭い通路を進んでいくと突然視界がブラックアウトし、深い霧に包まれる。


「これは、異界!?」


 ルイーズが、呟く。


 少し霧が薄くなり、周囲が暗い沼地になっているのが見え始めた。

 近くを溶岩が流れて沼地の水に触れ、蒸気を発している。

 霧に代わって赤黒い煙が周囲に漂い始める。


「待っていたぞ。プレイヤーと、そのキャラ達よ」


 前方に、黒いロングドレスの上から赤いローブを羽織った女が、全身から赤黒いオーラを放ちながら、地上から数m上の空中に静止しているのが見える。


「お前は、森出海音もりでかいね社長。いや、ゲームマスターデモゴルゴンか?」


 デイジー陽子が、その女に声を掛ける。


「これはこれは、デイジー陽子社長。我が社の株式買収ありがとう。おかげで、この世界での活動資金を得られたよ」


 デモゴルゴンは、そう言うとケラケラ笑った。


「サーバデータに近づいたら登場とは、よほどの謎でもあったのかな?その割には、やる気のないセキュリティだったが」


 デイジー陽子が、言う。


「いやいや、今更この世界のデータなど、どうでもいいのだよ。ただ、何もせずに見られたら悔しいじゃないか。少しは試練を与えてプレイヤーに楽しんでもらうのが、私の仕事だ。それが、私自身の娯楽でもある」


「その割には、いよいよ秘密に近づいてる時に水を挿すじゃないか?」


 デイジー陽子は、腕を組んで言い返した。


「その通り。すんなりデータを見て達成感を味あわれたら悔しいじゃないか。そこで、先に私の口から話してしまって、一抹の未達成感に変えてやろうとね。その方が、エンタメとしては記憶に残るだろう?」


 デモゴルゴンは、ケラケラと笑い続ける。


「趣味の悪い奴だ。そんな事だからコンテンツをクソゲー呼ばわりされてサ終する羽目になるんだよ!」


 デイジー陽子は、気分を害したようだ。


「む、おのれ!!我々を、あちらの世界に戻せ!今は、向こうが私とカインのいる場所だ!」


 ルイーズは、剣を取り出すと、デモゴルゴンに切りかかろうとする。

 しかし、強烈な風の様なものに押し返されて動けない。

 思わず膝をついた。


「ルイーズ!」


 カインは、デモゴルゴンに魔法を放とうとするが、やはり風の様な圧力に負けて動けなくなる。


「せっかく私が、秘密を教えてやろうというのに、余計な事をするでない」


 いつの間にか、デモゴルゴンは4人の後方に移動していた。

 彼女の笑みが不敵な笑いに変る。


「…!」


 ルイーズは振り返り様に剣を振ろうとするが、やはり動けずに倒れそうになる。

 剣を杖がわりに、なんとか倒れず膝をついた。


「無駄な事は、やめるがよい。お前達は、私の作ったゲームのキャラだ。そもそも我々GMに手向かう事は出来ない様にデータに刻み込まれている。それは生き物の遺伝子に刻まれた運命の様なものだ。どこの世界だろうと決して覆す事は出来ない」


 デモゴルゴンは、諭すように言う。


「ちょっと待った。その力は我々、現実世界の人間には通用しないようだな。早く秘密とやらを聞かせてもらおうじゃないか、森出社長」


 デイジー陽子は振り向くと、すたすたとデモゴルゴンの前に歩み出た。

 田中実も、その背中に隠れるように前に出る。


「ふふふ、さすがはデイジー社長、理解が早い。この体は、エーテル体。これを別次元に飛ばす魔法で君達の世界に少しだけ干渉しているのだ。そもそも、エーテル体を倒しても私の本体にはダメージは無い。これは、イマジンのロケテ時に存在していた魔法で、正式Verでは削除されている。さすがのTOPプレイヤー達も分からなかったようだな。そして、そもそもGMへの攻撃はキャンセルされるのだ。まったく無駄な事を」


 デモゴルゴンはルイーズとカインを一瞥して、またケラケラと笑った。


「種明かしご苦労。しかし、お前のドヤ顔も見飽きた。もっと核心について話せ」


 デイジー陽子が、デモゴルゴンを睨みつける。 



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