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キャラデータは女帝の夢を見る~女帝、恋愛も世界も征服する  作者: 百鬼清風
第一部 ヴァンパイアロード・カイン
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第23話 楽園への来訪2

「とりあえず、ゲーム内で出会ったプレイヤーで、今でも連絡のつく人達に当たってみたけど、行方不明になった人はいない。みんな、問題無く日常生活を送ってるみたいだな」


 リクライニングチェアに座ってパソコンを操作する田中実が言った。


「そうか、良かったあ。みんな本体は無事なんだな。そうなると一緒に向こうに行ったと思っていたアンジェリカやモリガンも、異世界転移したわけじゃなかったのか」


 ベッドに座っていたカインは、後ろに倒れて横になり言った。


「最後に残った3人のキャラも、向こうにいるのか。しかし、あの人達、ギルドに加盟しているのに、全然協力的じゃなかったよなあ」


 田中実は遠い目をした。


「そうそう、向こうの世界に行っても、別に自分達の本拠を作って何もしてくれないの。こっちからは色々支援しているのにさあ…」


 カインは、田中実に愚痴をこぼす。


「そういえば、イマジン終了後に気になる事件があったんだよね」


 田中実が、少し前のニュースサイトの記事をパソコンの画面に表示する。

 そこには、イマジンの運営企業である株式会社ダンジョンの主要幹部達が、サ終後にプライベートジェットをチャーターして旅行に出かけ、南シナ海上で飛行機墜落事故にあったと書かれている。


 続けて表示した別の記事は社長の間宮陽葵まみやひまり28歳だけが後日、近くの島に流れ着いて奇跡的に助かったという内容だった。


「主要な幹部達9人は、ゲームマスターキャラをそれぞれ操作していたはず。しかし、現実世界の人間とゲーム内のキャラが別の存在なら、生死も関係ないか。しかし、私は生き残った間宮陽葵の操作するデモゴルゴンとしか交信していない。現実世界のプレイヤーが死ねば、プレイヤーキャラも消える可能性も、まだ残されている」


 カインは、記事を見て言った。


「そ、そうだぞ、この俺をどうこうするとか考えるなよ」


 田中実は、横から覗き込んでいる吸血鬼カインを牽制した。


「ところで、話は変わるのだが…一度、外出したいのだが」


 カインが、田中実に言った。


「え!?外に出る用事なんて、会社に呼び出された時ぐらいしかないでしょ。何でも通販で、すぐ届くし、仕事も娯楽も全てヴァーチャルで済むんだから意味ないよ」


 田中実は、あからさまに嫌な顔をした。


「いや、お前が超インドア派の陰キャなのは自分の事だから承知しているが、俺の体感だと現実世界は5年ぶりなのだ。少々、外の空気が吸いたくもなる」


 カインは、恥ずかしそうに言った。


「いやいや、都会の空気は汚染されていてマスク無しじゃ吸えないでしょ。大体、それ以外に何の用があるの?」


 田中実は、カインに聞く。


「その空気ではなく、ひさしぶりに秋葉原でオタクな空気が吸いたい。あちらは、その方面の娯楽が皆無なのだ!」


 カインは、切実な目で言う。


「駄目!金が無いから駄目!今月もゲーム課金で苦しいんだよ!」


 田中実は、断固拒否する。


「それでは、これでどうだ。元々、お前には礼をするつもりだったのだ」


 カインが指を伸ばすと、その先からパラパラと金貨と宝石類が床に落ちる。


「やめろ!やめろ!そんなもん換金したら、すぐに足がつく。捕まるよ!」


 田中実は、慌ててカインを止めた。


「ぬう、ならば、これ1個くらいはいいだろう」


 カインは床から、直径3mmくらいの一番小さいダイヤを1個拾いあげた。


「むむ、これくらいなら…。仕方ない、今回だけだぞ」


 田中実は、しぶしぶ了承する。


「後、その格好は何とかならないの?いくらアキバでも、始終コスプレは困るよ」


 田中実は、ゲーム内と同じファンタジーな装いのカインに文句をつけた。


「むむ、ならば、これでどうだ?一番現代風だと思うが」


 カインの姿が、瞬時に黒い燕尾服に変る。

 顔色も良くなり、長髪のイケメン執事という感じの風体になる。


「あー、それじゃやっぱりコスプレだけどな。ギリギリ、結婚式帰りで通るか…。まあ、アキバだし、こんなのがいても変じゃないか」


 田中実は目を手の平で覆って天を仰いだが、仕方なくOKした。




「なんだ?こいつら全員、塵に変えてやろうか」


「やめなさい!そんなに往来の人を睨まないで!」


 長身の超イケメンが歩いているのが人目を引き、カインはアキバの通りで人々の視線を集めていた。

 一緒に小柄で冴えないスウェット姿の男が歩いているのも、カインを引き立てた。

 カインは、非常に不機嫌だ。


「後、このマスクは付けなくてはならんのか?私の耐性ならば、この程度の大気汚染やウイルスは平気なんだが」


「駄目!常人は、このマスクがないと都会の外気では、まともに息出来ないの!変に思われるでしょ」


 二人は小型のガスマスクで口を覆っていた。

 日常用に小型化されているが、性能はよい。

 カインは文句たらたらだったが、田中実は無理矢理ガスマスクを付けさせ続けた。


「おお!ここで着替えれば、目立たなくなるはずだ!」


 カインは、お土産用の変なTシャツなどが売っている店に飛び込み、ピンク色の”自宅警備員”と書かれたTシャツに着替えて出てきた。

 安っぽいサングラスをかけ、背中にはペラペラの黒いリュックを背負っている。


「よし、これで落ち着いた!さあ、ひさしぶりのアキバ巡りだ!」


 カインは田中実を引き連れ、意気揚々とアニメやゲームのショップ巡りに繰り出した。

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