第19話 連携プレイ
「お前については、今更隠す必要もあるまい。エピックスキルで、一気に雑魚を片付けろ!再生されても構わん。3分、猶予を作れ」
ルイーズは、ベルタに指示を出す。
「はい、お姉様!合点承知の助!女子中学生の対軍魔法、見せてやるます」
色々設定が渋滞している話し方で、ベルタが答える。
「とぅ!!」
掛け声と共にベルタが空中に舞い上がる。
「スーパートゥインクルハート・メテオスォーム!!」
ベルタが叫ぶと、雲をかき分けて、4つの40フィートはあろうかというピンクに光るハートが降ってくる。
暗い地上に激突すると、吸血樹やモンスター達が押しつぶされて四散していく。
「ハァッハハハ!!この魔法は、1発ごとに合計100Lv以上のキャラを倒すと、連射可能なのだぁ!」
次々と空から、ピンクに光るハートが地上に落ちていき、吸血樹とモンスターを破壊する。
「きゅうううう…」
辺りのモンスターを、あらかた破壊すると、ベルタは情けない声をあげながら地上に戻ってきた。
大量にMPを消費する魔法を連打した為に、回復アイテム含めてMPを使い果たしたのだ。
「すびばせん、もうMPがありません、お姉様」
「お前も回復アイテムを買い込んでなかったのか、仕方ない奴等だ」
ルイーズは仲間全員に短時間で渡せるだけの量、課金アイテムである特級MP回復ポーションを投げ渡した。
この隙に、全員が最低限のMPを回復する。
「ゲーム終了後に、こんな事態になるとは普通、考えないんですけどね」
モーギスは、呆れ顔で受け取った。
倒されてはいないが、地上に叩き落されたエノクとルルワリリス、そしてその現魔のサッキュバスとカンビオンの前にルイーズ達が迫る。
「連携19番!3分で全て倒す!」
ルイーズが叫ぶ。
「時間停止!」
エノクが、時間操作魔法で、時を稼ごうとする。
「神格の加速!時間加速!思考加速!」
ベルタが、加速魔法から次々、行動回数を稼ぐ魔法を連打し、エノクの呪文を相殺する。
「毒の百合」
アヤが、黒い百合をルルワリリス達に投げると、ルルワリリス達に毒の霧が吹きつけられ、毒への抵抗判定の間、わずか60分の7秒ほど行動を制限する。
「…なんだここは?奴等の作った異界?」
エノクは、一瞬の隙に暗い霧の中に引き込まれた。
遠くから、教会の鐘の音が聞こえる。
「何も、何も見えない。何も探知も出来ない」
夜目が効くはずの吸血鬼系であるエノクの目にも、この霧は見通せなかった。
魔力や体温も何も探知出来ない。
「ぐあ!」
エノクの首筋に、急に痛みが走った。
視界にルルワリリスやルイーズ達が戻り、元の場所にかえったのを認識する。
「死の女神」
アヤの囁き声が後ろからエノクの耳に届く。
背後からナイフを突き刺していた。
エノクの体が、少しづつ塵になっていく。
「再生出来ない。パッシブの回復アイテムも蘇生アイテムも発動しない。この私が、この私が、こんなに簡単に…」
エノクは、塵となって消えていく。
同時に、エノクと地下で繋がっていた吸血樹も全て塵と消えた。
「ソウルバインド!」
モーギスが、エノクの魂を黒い宝石に変える。
「これで、この宝石を破壊しない限り、誰も蘇生は出来ない。例え死体の必要無い、真なる蘇生でも!」
モーギスが、宝石を素早く回収して言う。
「あのれぇ!我が娘の魂を返せ!」
ルルワリリスがサッキュバスとカンビオンを引き連れ、モーギスに向かって突進する。
「悪竜斬り(ドラゴンスレイヤー)!」
その3体に向かって、サンシールが剣を繰り出す。
サッキュバスとカンビオンが、剣撃の衝撃波でバラバラに吹き飛び、召喚が解除される。
しかし、ルルワリリスは、衝撃波が当たっても何ともない。
「このデュランダルの一撃でダメージ0だと!?この技は、エルダークラスのドラゴンを山ごと切り倒せるんだぞ」
サンシールが、驚く。
「ギルド最強格の俺が、斬り負けるわけにはいかねえ!決闘者の本気を見せてやる。エピックスキル!絶避絶当!」
サンシールが、ルルワリリスに切りかかる。避けようとするが、その剣はルルワリリスの胸部に命中する。
「このスキルは、対象の相手の攻撃を何でも必ず避け、こちらの攻撃を対象の者に必ず命中させる。これで、俺の勝ちは決まりだ!」
サンシールが、勝ち誇った顔をする。
「シャー!!」
ルルワリリスに巻き付いていた大蛇2匹の口から、強力な電撃が放たれ、サンシールは吹き飛ばされる。
「何故?」
サンシールは、悔しそうに言う。
「この2匹は、私とは別の従魔でありながら、私と同じ魔法攻撃力を持つ。そして、私の装備は物理攻撃も、魔術系神術系魔法も全てのダメージを‐100%する。つまり、お前のエピックスキルは意味が無いのだ。アリーナでは強いかもしれんが、戦場では私の方が上!」
ルルワリリスが、吐き捨てるように言う。
「何だとてめー!舐めてたのは事実だが、そんくらいの事で…」
サンシールが何か言おうとした時、ルイーズが肩を叩いて制止する。
「素晴らしい。我々の連携に耐えるとは。その力を得るには、相当の努力と覚悟が必要であっただろう。褒めてやるぞ。物理と魔法ダメージ‐100%は、個人アリーナ上位の条件の一つだ。お前を、イマジントップランカーと認めよう。私も礼儀を尽くさないわけにはいかない。私と1対1の決闘をしないか?お前が勝てば、封印した娘の魂は返そう。私達全員を相手にするよりは有利であろう?」
ルイーズは雄弁に語り、ルルワリリスに決闘を申し込んだ。
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