第12話 豚の王
「ひっひっひ、今回も素晴らしい献上品の数々、素晴らしい。苦しゅうないぞ、何でも申せ」
塔の上、四方の景色を眺められるように作られた大広間。真ん中に設置された巨大な王座に座った、丸々と太ったエルフの王は、謁見も申し出たカインに言った。
この太ったエルフが、ボイオカッセ国の王エブロバイアス7世だった。
他国の王と謁見中だというのに、傍らに何人もの側女をはべらせている。
「先に連絡いたしました通り、貴国のアリオス家の者が私を襲撃した件です。この賊を叩かせていただきたい」
多数の貴金属や電気製品の献上品の前で、カインはエブロバイアス王に申し出た。
「構わん、構わん。あんな辺境の貴族、どうなってもいいわ。領地が少し多いからと言って生意気な口ばかり叩きおるのでな。邪魔になってきたところよ」
エブロバイアス王は、即座に許しを出した。
「ところで、カイン王よ。あの家には美しい妃と姫がいたはず。出来れば私に献上せよ」
エブロバイアス王は、ニタニタ笑いながら言った。
「残念ですが、アリオス家は根絶やしにしなければ私の面子に関わりますので」
カインは、エブロバイアス王の言葉を拒否すると、きびすを返して、その場を足早に去る。
黒い飛行巡洋艦に乗り、即座にボイオカッセ国の王城を離れた。
その城は、大きさだけならノドの国をしのぐ巨大さだ。
城壁の上に対空機関砲が並び、上空には旧型の飛行巡洋艦か3隻浮いている。
全てノドの国から法外な価格で輸出されたものだ。
『北海の向こうのハイエルフの国アルビオンに顔が効くというから、しばらく生かしておいてやる。しかし、この醜悪なエルフもどきめ、用無しになれば即消えてもらうぞ』
カインは、城を見下ろしながら舌打ちした。
「エブロバイアス王、あの者はいつ裏切るか分からん男です。アリオス家は、我が国でも力を持った貴族。擁護なさった方が良かったのでは?」
カインが去った後、エブロバイアス王の側近が王に進言した。
「馬鹿を申せ、そんな事をすれば、それこそ我が国を攻める口実を与える事になるわ!それに、アリオス家の当主は、わしに余計な苦言ばかり申して気にいらぬ。滅ぼしてくれるなら好都合よ!」
エブロバイアス王は、言った。
「それは、王の身と国の将来を案じての事。アルビオンに、同盟を求めるべきです。王はアルビオンのハイエルフの血筋を引いておりますので、邪険にされる事はございますまい」
「パーン!!」
側近はそう言った刹那、拳銃を取り出したエブロバイアス王に射殺された。
「だから、こうやって新しい兵器で軍備を整えておる。今はノドの国こそ強国よ。わしの考えに文句を言うな」
エブロバイアス王は、そう言うと、また側女の肩に手を廻した。
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