第1話 世界樹を切り倒す女帝
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第一章 世界樹を切り倒す女帝
雲を突き抜け、天まで届くような巨大な木の下にルイーズは立っていた。
その妙齢には似合わぬ、黒いの瞳と髪色、白い肌をしたスタイルが良い女性である。
後ろには、主要なギルドメンバー十数人と、その従魔というモンスターである従者達が控えていた。
細かいところは個性を出しているが、全員同じ白い儀礼用のスーツを身に付け、剣や槍をたずさえている。
ルイーズの前には、15歳くらいの少女が立派な両手剣を持って威風堂々と立っている。
涼し気な青い瞳、腰まで届く青い長髪。
贅を尽くした白いロングドレスを身に纏っている。
「勇者ルイーズ、よくぞ世界樹を完全踏破した。さあ、この聖剣にて世界樹を切り倒すがよい。この地の財は全て、そなた達ギルドのものになるであろう」
少女の口から、涼やかで美しい女性の声が流れる。
「一度聞いておきたかったのだが、TMRよ。お前、40代のオッサンなのに、その姿は恥ずかしくないか?どうして、そんな設定にしたんだ?」
ルイーズは高慢極まりない態度で、目の前にいる少女に声をかけた。
「お客様、このサービスは後1時間ほどで終了いたします。クレームは、公式ページのサポートサービスへお願いします。サービス終了まで、このNPCはサポートキャラの一人、ソフィアとお呼び下さい」
少女は可愛らしい笑みを浮かべ、そう答えた。
この世界は、ネットダイブ型MMOゲーム「イマジン」の中である。
このゲームには、混沌ー中立ー秩序と悪ー中立ー善の3×3の属性、9種類のキャラ属性づけがある。
ゲーム開始時にUIを説明してくれるゲーム案内キャラを、それぞれ1体作成受け取る。
そのゲーム案内キャラはサポートキャラと呼ばれ、属性ごとに用意された9人の神の部下である設定になっている。
ソフィアは、その神の1人であり、中立‐中立の神である。
「ふむ、残り1時間で何を受け取っても大した違いは無いが、ありがたく受け取っておこう」
ルイーズは呆れ顔で言った。
「ちなみに、課金ジュエル1億ネットクレジット分をギルドメンバー全員にプレゼント、後日全員の書下ろしCGのデータがメールで届きます。サービス開始から7年間、イマジンをご利用いただき、ありがとうございましたー」
ソフィアは、今までの落ち着いたトーンから急に明るい口調に変えて、そう言った。
『残りプレイ1時間で課金ジュエル貰っても仕方ないがな』
ルイーズは、大きなため息をついた。
「それでは、こちらで入刀を」
ソフィアは、ルイーズに聖剣を渡した。
横に薙ぎ払うように、聖剣を振る。
巨大な三日月形の光波が、聖剣から巨木に放たれた。
しばらく間をおいて、地響きが起こり巨木が傾いていく。
ある程度、傾いた時点で巨木は霧と化して消えた。
ゆっくりと霧が消えた後に、雲を貫き頂上が見えない巨大な白い柱が現れる。
「さあ、これが、あなた達ギルドに与えられる最後の報酬、巨塔イルミンズールです。この中に、世界樹の全ての財が収められています」
ソフィアは、手を天にかざし、そう言った。
「おおお・・・」
その場にいた一同から、感嘆の声が漏れた。
「ふむ、この眺めは悪くない」
ルイーズは、少し機嫌を直す。
ギルドの一同は、イルミンズールの前に並んでスクリーンショットを残した。
「さあ、我らがギルド本拠カイザーブルクより、この塔を眺めるとしよう!」
ルイーズは剣を天にかざし、ギルドメンバーに発した…。