6.煙草とグルメ(スウィーツ編)
私がまだ幼少の頃、煙草に憧れた事がある。
その原因となったのが「スウィーツ」。
「チョコレート味の煙草があるよ」
「オレンジ風味の煙草は美味しいよ」
そんな青年の会話を聞いて、半信半疑ではあったが子供心に、夢のような世界へ思いを馳せたものである。
しかし大人になり、紙巻き煙草を覚える事になるのだが、ついぞ「そんな夢のような世界」を見つけることはできなかった。
そんな時に出会ったのが「パイプ煙草」である。
何百とあるパイプ煙草には、チョコレートはもとより、ココアにコーヒー紅茶、キャラメルとバタースカッチ、バニラ、シナモン、メープル、蜂蜜。
果物では、チェリーにオレンジ、プルーンにマンゴ、(外国ではアップル・ピーチ・メロン・パッションフルーツ等もある)、はては西洋でお馴染みのフランボワーズ、リコリス、アマレット
それはまるで、「お菓子の家に迷い込んだ、ヘンデルとグレーテル」のようだった。
しかし、そんな「お菓子の家」を彷彿とさせるラインアップ、パイプ煙草の世界にとっては、ほんの一部分にしか過ぎなかった。
私ルイ・ロペス(場末の予言屋)も、長い年月を掛けて「パイプ煙草の世界」を旅してはいるが、まだまだ道半ばと言うのが偽らざる心境だ。
と言ったところで、そんな広大なパイプ煙草の世界を、ザックリと説明する為に、日本独自のカテゴライズを土台に紹介してみよう。
さて、日本は世界の「ガラパゴス」である。
未だに「ガラケー」を手放せない人もいる様だが、これは日本でしかお目に掛かる事の無い携帯である。
実はこれと同じ様に、日本の「パイプ煙草界」も、いささかガラパゴス化している。
日本ではパイプ煙草を分類する時、「イギリスタイプ、アメリカタイプ、ヨーロッパタイプ」と説明する事が多いが、世界ではこんなカテゴライズはしていないそうだ。
このガラパゴス体質は、日本製品(現在はデンマークに製造委託している)にも現れており、JTのパイプ煙草は「イギリスタイプ、アメリカタイプ、ヨーロッパタイプ」の、全てを網羅する様ラインアップされている。
(もっとも、現在はどこのメーカーも消費者のニーズに合わせ、色々な商品を作るようになってきてはいるが。)
まあ、そんな細かい事情は置いといて、ここは一つグルメ目線から、パイプ煙草を解説をして行こう。
『パイプ煙草のカテゴライズ(日本編)』
(イギリスタイプ)
素材の味を生かし、着香などの余分な味付けは行われない。
肺喫煙(煙草を飲む)には向かない。
(アメリカタイプ)
着香を主体とし、様々な味付けを施す。
※スウィーツの着香が中心。
肺喫煙(煙草を飲む)に向いたものが多い。
(ヨーロッパタイプ)
素材の味を生かしながら、着香処理がなされている。
親しみやすく、初心者から上級者まで楽しめる。
※洋酒の着香が中心
また、肺喫煙に向いたものも多くオールラウンダーな煙草。
さて、スウィーツ系のパイプ煙草だが、アメリカタイプの着香物が中心となる。
そんな訳で、着香の歴史を簡単に説明し、次章『喫煙とグルメ(洋酒編)』のつなぎとしよう。
(着香煙草の台頭)
16世紀末のイギリスで花開いたパイプ喫煙文化だが、文化へのこだわりに加え、技術的な事もあったと思われるが、素材のこだわりを中心に煙草が作られる事となる。
※イギリスにおいて、煙草に添加する甘み成分、香料の規制が無くなったのは1987年の事である。
そんなイギリスの煙草文化は、次第にヨーロッパにも広がる事となり、オランダやデンマークなどでもパイプ煙草が作られるようになる。
ただし煙草の製造に関しては、1900年頃迄は「あくまでもイギリス煙草の模倣の域」を出ていなかったようだ。
19世紀末、「戦争の時代」が訪れとる共に、世界の檜舞台にアメリカが現れ、時を同じくしてシガレット(紙巻き煙草)も台頭し始める。
アメリカタイプの煙草は第二次世界大戦をきっかけとし世界に広がる事となるが、イギリスタイプの煙草とは違い、バーレー葉に人工的な香付けをした煙草が主体になっている。
一説では、アメリカで沢山収穫できるバーレー葉を、商売の材料にする為、着香煙草やシガレットへ多様したとも言われている。
終戦の時、コーンパイプをくわえて厚木基地に降りたマッカーサー元帥、アメリカ煙草の宣伝目的だったと言う説もある。
このアメリカタイプの主力であるバーレー葉は、ヴァージニア葉とは違い、糖度の含有率も低く煙も粗い、単体で吸うには力不足だ。
しかしその反面、香料との相性が良く、飲んだ時に(肺喫煙)バーレーキックと言われる喉への刺激もある。
これによりバーレー葉は、肺喫煙を前提にしたシガレットの大量生産と、ありとあらゆる香料の添加による、「パイプ煙草の新境地」を生み出して行く。
この着香煙草が、「世界に覇を唱えるアメリカ」と「シガレットの普及」に歩調を合わせ、パイプ煙草の世界を席巻して行く事となる。
その頃ヨーロッパでは(1930年代になるが)、オランダやデンマークを中心にして、アメリカの着香技術が輸入され、イギリス煙草の模倣であった「素材重視のブレンド」と、アメリカの人工的な味わいの煙草を、融合させた新しいスタイルの煙草が作られ始める。
これが日本で言うヨーロッパ・タイプだ。
とっ・・・・・・これではアメリカタイプの解説から逸脱し、ヨーロッパタイプの紹介になる。
ここからは「煙草とグルメ(洋酒編)」に譲る事とし、店じまいとしよう。




