聖夜の夢
『急いでくださいぃ。確か空想科学読本からも言われてるとおり、私たちは光の速度で移動しないと夜明けまでに子供達に配り終えられないんですからぁ』
鼻の赤いトナカイは困ったように言う。
『あぁ、すまんすまん、そうだったな。ついCy◯erpunk2077に夢中になってしもうた。わしの時間は限られておるんだったな』
『えぇそうです。そろそろ行きますよ、サンタさん』
黒い鼻のトナカイがプレゼントのたくさん積まれたソリに促す。
『よし。うむ、それじゃあ今年も行こうか!』
『はい!』『はい。』
2頭は返事をして、力強く地面を蹴った。雪煙が舞い、煙突から煙の出ている煉瓦造りの家の窓の明かりが一瞬で遠ざかって行く。
『ねぇ、サンタさん。今年はどんなプレゼントが多いんですか』
『……』
『ん?サンタさん?』
『ヘッドホンをしてるから聴こえてないよ』
『え。あぁ、そうですかぁ。』
『気にせずさっさと行こう、今日は大忙しだ。』
『はぃぃぃ』
家々をまわる。ストックホルム、ロンドン、トスカーナ、サントリーニ島、アブダビ、サンクトペテルブルク、ウランバートル、西安、東京、マニラ、フナフティ、メルボルン、ホノルル、ロサンゼルス、ニューヨーク、リマ、ブエノスアイレス、ラバト、カイロ、多くの都市をまわった。
そしてその夜、世界中で流れ星を見たという人がいた。流星群も来ていないのに何度もだ。
『よし。次の家で終わりですね!』
『そうだな。』
『あれっ?サンタさん、なんであそこでずっと立ったままでいるんだろう。』
『あの!家に入んないんですっ……』
『しっ!そっとしてあげなさい。きっと思ってらっしゃることがあるんだ。』
『わかりました…』
イブの夜がもうすぐ終わろうとしている。
『あぁ、今年もいい作品ばっかりじゃった。やはり子供達の作った曲を子供達の作ったもので聴きながら、プレゼントを配るのは最高じゃ……。よし、じゃあ今年の最後の仕事じゃ。』
すると、自然と屋根に煙突ができ、部屋には暖炉ができた。
『お、ここのお家の子はこれをプレゼントに選んだんじゃなぁ。ふぉっふぉっふぉっ、うむ、頑張るんじゃよ、その夢も、希望も、きっと叶うぞ。わしはずっーーっと君を応援しておるぞ。』
クリスマスイブの夜、少年は夢を見た。不思議な夢だ。それは、サンタさんが、世界中の子供達にプレゼントを配り、そして、昔プレゼントを配った子供たちの作ったものをすべて買い、それを使いたいがために1年間、分刻みのスケジュールを組んでいるという不思議な夢。忙しそうなのにそのにっこりしてる笑顔が印象的だ、その笑顔が、笑顔が.....
シャランッ。鈴の音が近くでした気がして、不意に目が覚める。すると、枕元にかけていた靴下には、綺麗なリボンと紙で包まれたプレゼントが入っていた。
『うわぁ!パパ!ママ!見て見て!サンタさん、今年もプレゼント届けに来てくれたよ!』
『あら、良かったわねぇ。』
『来年も良い子にしてると来るかもしれないなっ!』
『うふふっ、そうね。』
『来年もぜーーーったい、良い子にしてるよ!』
『なら大丈夫。きっと来年も来てくれるわよ。』
『うん!』
クリスマスイブの夜が明け、クリスマスの朝が始まる。その朝は1年のなかで、特に歓びの溢れるものだ。そんな素晴らしい1日を、世界中の人たちが過ごせることを願いたい。
メリークリスマス