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神引きダンジョンマスター  作者: 何某さん
Episode:1.00 Are you ready?
7/27

神引きダンジョンマスター、聖女達に危険視される


 アマテラスと、聖者三人からの懇切丁寧なアドバイスのもと、とりあえず最初に訪れる場所の候補地は2か所くらいに絞り込めた。

 移動に関しても当初の予定通り、船で陸地付近まで航行することとなった。

 陸地が近づいてきたら、目立たないようにアマテラスに隠密魔法をかけてもらうつもりだ。


 そして、目的地は最終的に、ルデラ王国という国に決定。

 比較的国土が広いため、宗教の緩衝地帯の中でも特に周りを気にせずに活動できる、と思ったからだ。

 もう片方、アルヴァン帝国もよさそうではあったものの、そっちは良くも悪くも実力主義の側面があるため、ちょっと不安だったのでやめておいた。


「待っている間は暇になりますね……早速ですが、マスター。最初の鍛錬を始めますか……と、何を見ているのですか?」

「うん? ストアのラインナップだよ。ほら、DEでいろいろな買い物ができる」

「おや……私達が展開できるステータスウインドウとは違うのですね」


 ステータスウインドウとは、その名の通り自分の現在のステータスを確認できるウインドウだ。

 『ステータスチェック』と念じながら手を前に押し出すと表示されるそれは、普通の生物であれば能力値やスキルの詳細を把握出来たり、モンスターを倒して吸収したDEを使用して、能力値の底上げやスキルの習得、強化が行えたりする。

 ただし、俺の場合はダンジョンマスターなので、ステータスウインドウを開くことはできず、その代わりにダンジョン管理アドミニストレーションウインドウ、略してDAWを開くことができる。

 これはダンジョンマスターの『種族特性』によるものなので、俺が許可してイブキたち、つまりダンジョンマスター以外にDAWを表示してもらうことは不可能だ。

 DAWを開けるのは、ダンジョンマスターとアシスタントだけなのである。

 ちょうどいいので、ここで俺の素のステータスを覗いてみるとしようか。

 ダンジョンマスターとして、ダンジョンの恩恵を受けているステータスではなくて、俺の素のステータスを表示するのは……と、これか。


「おぉ、ステータスの確認! ですね! 今後の指導方針の策定もできますし、私も一緒に見させて……あり? ステータスじゃない……」

「ちょっ、フタバ! 許可もなしにステータスウインドウを見るのは失れ……っと、これはこれで気になりますが、無許可なので見るわけにはいきませんわね」


 おっと、フタバにつられてミオリまでDAWをのぞき込んできたな。

 女性特有の甘いにおいが……じゃなくて、さすがに吐息が当たって落ち着かないので少し離れて三人に向き直った。

 ちなみに、三人は俺の鍛錬の方針を話し合うとかで、少し離れた位置に立っていた。

 そこで俺がウインドウを開いたものだから、気になったのだろう。


「ちなみに俺のステータスはこれ、だな……」

「わお……見事に商人ステータス…………」


 俺も驚いたけどな。算術とか、計算具とかのスキルがあるのはまぁ、現代人としては当り前だから頷けるとして、『交渉術』とか、いつ身に着けたんだよ……あ、そっか。高校の時、バイトの勤め先の店でたまに商品説明とか予約商品の声掛けとかをしてたからか。

 あんなんでも立派な交渉術になるんだな。

 あと、『商用算術』やら『表計算』やらはたぶん、3級とはいえ簿記検定受けたからだろうな。


「知性や理性はともかくとして、筋力や体力もそこそこありますね」

「趣味が散歩だったからな。戦闘向けの体つきじゃないのは確かだぞ」

「そうですわね。その証拠に、瞬発力の評価ランクが低すぎるうえに戦闘に役立つスキルが皆無。結果として戦術は700ほどしかないですものね。一応、成人男性なら1000は欲しいところなのですが」

「ちょっとミオリ。それはあくまでも戦闘職の場合でしょ。現場(わたしたち)基準でなければ、これくらいが並よ」

「そうなん? うちは戦闘職だけど、魔法専門の戦略性重視だから、600超えてればいいんじゃないかって思ってたけど」

「まったくもう……二人とも、私と同じくらいの知識は与えられているでしょうに。どうしてそんな肝心なところが抜けているのよ……」


 ミオリの言葉に一瞬マジかよ、と思ったが、そのあとにイブキの突っ込みが入ったので少しほっとした。

 そして、フタバの肯定しているようで実はやっぱり少しずれていたらしい見識。何か疑問に思ったことがあったら、イブキに聞くのが一番よさそうだ。

 青春時代を思い出す三人だなぁ、ほんと。話題は日本の学生のそれじゃないんだけど。


「それに対して、スキルが商業向けの構成なだけあって、商略はけた違いに高いですわね。それに比例してか、戦略もそこそこ……」

「商売しながら旅したいと言ってましたが、商才は確かにありそうですね」

「まぁ、取り扱う商材にもよりそうですけどね」

「そのあたりは期待できそうでよかったと思ってる」

「であれば、今のうちに何を取り扱うか、考えておいた方が向こうについてすぐに動けていいかもしれませんね」

「だな。そう思って、いろいろ見ていたところだったんだ」

「そうだったのですね。申し訳ありません、お邪魔してしまいまして」

「気にしてないから大丈夫だ」


 ともかく、もうステータスは必要なさそうなので、視界の端にどけてストアのラインナップのチェックに戻るか。

 ちなみに、今見ているのは『日用品』である。


「ふんふん……精米が1キログラムで2ptにミネラルウォーターが1リットルで2ptか。米はいくらあってもいいし、これはこまめに買って常備しておくべきか……」


 ダンジョンに住むモンスターたちも食事は必要だし。人間やサキュバスなんかの、米を食べても問題ない種族やモンスター用に、ダンジョンにも備蓄しておいた方がいいな。

 とりあえず、アマテラスにはあとでダンジョンメニューの内部メッセージで要望書として送っておこう。

 って、よく考えたら俺、炊飯器でしかご飯炊いたことなかった。あれ? これ炊けるのか?

 まぁいいか。最悪、聖者三人娘達に泣きつく手もあるし。


 あ、しまった。そもそも、要望出すっていってもこのメッセージ機能もダンジョンから出ると使えなくなるんだよな。……うん? ダンジョン外でも使用できる? あぁ、ストレージとダンジョンストレージをつなげたからか。

 それで亜空間を介してパスがつながったから、ダンジョン関連のもろもろの機能も遠隔で使用できるようになったと。

 なるほどね。これはいい誤算だった。

 何かあるたびにダンジョンに戻ってきて補充、じゃ面倒くさいもんな。


「あとは……お。日本国内で売られている調理器具とか、調味料関係とかも安いな……そっか。ここで特性が活きているわけだな……」


 アマテラスの特性は、太陽もそうだけど、なんといってもやっぱり『神道』の主神であることだろう。神道といえば日本。当然、『日本』という特性もついている。

 つまり、日本にあるものは割安で取り寄せることが可能となっているのだ。

 中でも日用品関連は値段が低く設定されているようで、500EPDという現状からすればかなり安いだろう。

 もちろん、日用品以外にも様々な方面で用途を考えないといけないことを考えれば、タダも同然、とは言えないだろうけど。


 食関連以外で行くと……衣類は、この世界のものが基本になっているな。どれもそう平均して50pt未満。ただ、日用品ジャンルの中の衣類だと、荒事には向かない、本当にごく普通の衣類しか取り扱われていないようだが。


「そういえば、フタバとミオリのは普通の服、なんだよな?」

「いえ……この服は聖者のみが魔力で生成・着用できる特殊な衣装ですね。私たちが目覚めた時に着ていた衣服ならこちらになります」


 新事実だった。なんて無茶苦茶な能力を持っているんだ、聖者というのは。

 実は突っ込んでいいものなのか思い悩んだ挙句スルーしていたことがあったのだが、初見の上まだ武器しか与えていなかったはずのイブキが、なぜか白を基調としたドレスメイルみたいなものを着用した状態で現れたのだ。それがちょっと気になっていた。

 だが、自分で作りだしていたのであれば納得できる話だった。

 ちなみに、イブキが自身のストレージから取り出したのは、ごく普通のワンピースだった。

 あれでは、荒仕事がメインの聖者では心もとなさすぎるだろうな。自前のものを用意しようと思うのは当然のことだ。


「しっかし、魔力で物を作り出せるなんて、日本じゃ考えられなかったな……」

「まぁ、私達のいた世界に住む者からすれば確かにそうなのですが……神の力が原油だとすれば、魔力は下界の生物が使用しても問題ないように精製されたもの。それがこの、リブシブルにおける『魔力』と聞いていますからね。そのようなことが可能でも、むしろ当然でしょう」


 もっとも、そんなことができるのは、ダンジョンか、もしくはそれと対になる存在である聖者や勇者位のものらしいが。

 そう考えると、いかに聖者という存在が規格外なのか、思い知らされた気持ちになった。


「さて。残りは住関連だが……まぁ、こっちはこっちで売り込めそうだな……」

「異世界の生活雑貨ですか……おや。電気で動くものがかなり多いのですね」

「そんなことわかるのか? これ見てるだけで」

「当り前ですわ。聖者に生まれた者の『眼』を甘く見られては困ります」

「うちらは、何の因果かダンジョンに生まれました。ですけど、本来ならダンジョンを『殺す』ことに関して全方面で特化した存在なんです。一を聞いて十を知るのではまだ足りないくらい。同じ条件の下、万を知ることができてようやっと一人前、というくらいですからね」


 うん、わかる気がする。『神聖眼』の説明書きにも、『意識を向けた対象』の情報を読み取る、とは書いてあったけど、『意識して見た対象』とは書いてなかったもんな。そりゃ、そうなるはずだよな。

 『歩く大規模戦略兵器』の別称は伊達ではないということの裏付けになった形になったな。


「まぁ、それの話は置いといてだ。……さすがに家電は無理そうだな……」

「そうですね……この船はマスターのよく知る仕様ではなく、こちらの世界に合わせた仕様に変えられていますが、それは主神が内一柱、エルメイア神の御力によるもの。ダンジョンの魔力による生成では、電気製品を魔道具に変えるのは不可能ですからね」

「同感ですわね。ただ……フタバと、マスターの成長次第ではマスターが手を加えれば、あるいは魔道具として販売することは可能、とは思います」

「むふーっ! 道具の魔改造は聖賢の特権ですからね。腕が鳴りますよぉ~!」


 やっぱりそうなるよな。

 まぁ、頑張ってみるさ。家電製品は、本当に便利なものが多いからな。

 そのほか、食器や洗濯用品などは需要が見込めそうだ。

 前者は一応陶器なので工芸品としても扱われ、主に貴族や豪商などの富裕層向けになりそうだが、洗濯用品はどの家庭でも絶対に必要になる者なので幅広い層に売れるだろう、と胸を張って主張するのはフタバ。

 一方で、ミオリは寝具に興味が向いたようだ。

 この世界の寝具というと、主にベッド、それも木箱の上などに布を重ねただけの簡素なつくりのものが多く、寝心地はとてもいいとは言えないらしい。

 もちろん、富裕層は詰め物をしたマットレスを使用しているらしいが――その質も、日本のそれと比べればやはり見劣りするようだ。

 そして、イブキは文房具が気になったようだ。


「文房具が気になるって?」

「はい。この世界でも、文房具は多岐にわたって使用されます。書類の作成はもちろん、資料の作成にも。しかし、使用しているのはインクと木のペンなので、見せてもらったリストにある文房具と比べてしまうと、お世辞にもいいとは言えないのが実情です」

「なるほど……これは売れるか?」


 一応、文房具に限定してリストを更新してイブキにそれを渡してみたが、さすがにぱっと見ではまだ情報が多すぎて何とも言えないといわれた。

 もう少し吟味する時間が欲しいと言われれば俺にはどうすることもできまい。


「とりあえず、マスターに今の、ストアの画面を見せてもらったので、次からは視覚情報だけなら私達もアクセスできるようになりました。なので、後で良さそうなのがあったらご提案いたしますね」

「それはよかった。なら、その時はぜひとも頼むよ」

「はい、喜んで。それでは、私達は引き続き、マスターのトレーニングメニューを考えてます」

「あぁ、……その、お手柔らかに頼むな」

「どうなるのでしょうね。そのあたりは、私達の話し合いが終わってからのお楽しみとしておいてください」


 うわ……これ、絶対簡単には終わらしてくれないやつだ。なんか、フラグを立ててしまった気がするのは気のせいなんだろうか。

 不安に思いながらも、俺は極力三人の方へ意識を向けないように気を付けつつ、この世界で需要が見込めそうな商材のリストアップに尽力した。




 ――同時刻。


 某所にて、ごく数名による密会が行われていた。

 静謐な空気のもとで行わているこの密会に参加しているのは、男性二名、女性二名の計四名。

 うち二名は、それぞれが異なる意匠ではあるものの、気品ある衣装と装飾を身にまとっていることから、相応に高い地位にあることがうかがえる。

 高位の者と思われる二名は、片方が男性、もう片方が女性だ。


「猊下、この度はお会いいただきましてありがとうございます」

「構わぬ。お主が緊急という場合、無視できぬ内容と相場が決まっておるからの。」

「そのようにおっしゃっていただけること、誠に恐悦至極です。さて、早速ですが、挨拶も早々に、本題へ移らしていただきます」

「うむ、頼む」


 高位の者同士がいよいよ本題に移るとあって、他に名もその内容がどんなものであっても動揺すまいと、身構える、

 それほどまでに、彼女――聖女からもたらされる情報は、その一つ一つが彼らにとって重大なものなのだ。


 ここは、イツキが『西の大陸』と呼んでいた、『イグド大陸』の東部にある神殿の一つ。

 沿岸部に位置するこの地は、彼らにとってイツキたちが上陸しようとしているポイントに最も近い拠点であり、そしてとある宗教団体の総本山でもある。

 つまるところ、一人が『猊下』と呼ばれていたことからもわかるとおり、ここに集うものはみなすべて、その宗教団体の高僧にあたる人物だ。


「では、申し上げます――」


 聖女が、ベールに包まれたその顔を壇上の男に向け、その口を再び開く。


「つい先ほど、時刻にしてちょうど昼の鐘が2回鳴ったときのことですが――」

「本当につい先ほどではないか。して、何があった」

「はい。まずは、こちらをご覧ください――レベッカ」


 レベッカと呼ばれた神官が、丸められた大きめの紙をに手渡す。

 それは、この世界の地図であった。

 聖女がその地図へ向けて掌を突き出すと、地図は淡く光り出し、いくつかの光点を作り出した。


「これは――いや、お主がこうして直接参ったということは、新たにダンジョンができた、という報告ではないな」

「左様にございます。この光点、片方はそれほど驚異はないものの、もう片方は発生当初からとてつもない力を備えており、至急対策が必要、とここへ来る途中までは考えておりました」

「ほぅ……では、途中でその考えを改めるほどの『ナニカ』ができた、と?」

「はい。その『ナニカ』は大きく分けて、二つあります」

「申してみよ」

「はい。まず一点目になりますが――」


 聖女の口から語られる、彼女自身が『対応策の策定』を拒む理由。

 それを聞いたは、まず我が耳を疑った。

 しかし、おつきの神官に視線を向けても、聞き間違いではないと返されれば、疑いようがなくなる。


 聖女からもたらされた『ナニカ』は、本当に彼にとっても頭を抱えなければならないようなことだった。

 というのも、まず一つ目に、聖女がここへ来ながらも『神聖眼』によって集められた彼のダンジョンの情報――それが信じられないほどの防衛力を誇っていたことがあげられる。

 聖女が言うには、まず船で近づくにしても帆船では役に立たず、船団を組んだとしても『追尾性の砲撃のごとき魔法』により殲滅される未来しか見えなかったという。これは同時に、相手は(・・・)空を(・・)飛んでいるか(・・・・・・)洋上を(・・・)航行している(・・・・・・)という事実を示している。

 そのうえ、陸地に接近したところを狙って聖女が単独で突っ込んだとしても不可能。何らかの力場(・・)が発生し、全身を襲う激痛とともに海へ落とされる、という可能性しか存在しない始末。

 結論から言えば、このダンジョンは聖者では攻略できない。そして聖者でなくても、聖者に与するものにも作用する――いってしまえば、神殿側から依頼を出してダンジョンの踏破に挑んでもらおうとしても、やはり全身を襲う激痛とともに無力化され、件の砲撃の餌食になってしまうという、徹底した防衛力を誇っているという。


 つまり――出現したその時点ですでに、神殿としては手出しができない状態にされてしまっているということであった。


 そして、ダメ押しをするかのように、情報を『読み取った』直後に神託が下される。

 曰く――今話題に挙がっているダンジョンも含め、今回出現したダンジョンのうちいくつかには手出し無用、一度手を出せば災いが降りかかるであろう、と。

 洋上に出現したと思われるダンジョンが備えている、強烈な防衛力からそれが現実を帯びさせる。

 猊下と呼ばれた壇上の男は一瞬、もしかしたら虚実を申しているのではないか、と疑うも、男が座る椅子に『真偽判別』の魔法が付与されていることを思い出し、これを即座に否定する。


 数分、壇上の男は瞑目する。

 本当に、無視をして構わないのか――なにか、見落としていることはないのか。

 聖女にそれを問うてみると、聖女は話題に挙がったダンジョンからは、人の姿をした『モンスター』が数名、この大陸に降り立つ光景も見えたが、彼らを人質にとることも絶対にしてはいけない、と念を押された。

 曰く、彼らは四人組だが、うち一人はどうとでもなり、後の三人も一人ずつならギリギリ何とか対処できるような力量ではあるようだ。

 しかし、問題なのは、むしろその『一人ならギリギリ勝てる』敵が、三人まとまって行動しているということである。

 一対一でギリギリであれば、一対三ならどうなるか。

 答えは見え透いている。


「で、あれば――仕方がないな。我々は、彼ら――便宜上、洋上要塞と名付けるが、そのダンジョンに対してこちらからは一切の干渉をしないようにする。ミーシア、お前もそのように取り計らうように。ただし、ダンジョンの位置は常に見張っておくようにな。

 それから、万が一、その四人組と遭遇したとしても、極力敵対はせぬように。可能であれば軽く尋問程度はしてもらいたいところではあるがな」

「かしこまりました。では、そのようにいたします――他のダンジョンについてはどういたしましょう」


 ほかのダンジョンについては、脅威度としてはそれほどではないと聖女は告げる。

 しかし、教皇はこれに関しても、『ならん』の一言で封殺した。

 手を出してはならない、と神託があったのだ。であれば、むやみに手を出してオーガの群れを刺激するような真似は極力避けたほうがいい。


 聖女はこれにも何も言及せず、ただ一言『承知いたしました』と告げて、その場を去っていった。

 部屋に残されたのは、壇上の男と、側仕えの男だけ。

 壇上の男は、はぁ~、と溜息をついて、イスに深く座りなおした。


「…………まさか、このタイミングでこう来るとはな。この世界に……いったい何が起きている?」


 そして、意味ありげな独り言をこぼしつつ、いまだ光を放ち、ダンジョンの位置を示している世界地図に目を落とした。


 ――このダンジョンが、世界にとって吉となるか凶となるか。見極め次第によっては、覚悟を決めねばならんな。


 しばらくは眠れなさそうな日が続きそうだ、と独り言ちながら、男たちも部屋を後にした。


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