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神引きダンジョンマスター  作者: 何某さん
Episode:1.00 Are you ready?
3/27

神引きソシャゲプレイヤー、備品とモンスターを神引きする


 アシスタントが決まったので、後はモンスターの召喚だったりアイテムや備品の召喚・生成だったりと、ダンジョンそのものにまつわる事前準備の身となった。

 邪神さんが言うには、ダンジョンの内装を構築する前に、モンスターや備品周りを召喚・生成してしまった方がいいらしい。

 というのも、ダンジョンを設置する座標周辺の環境は、ダンジョン内のモンスターや出現する道具などに依存していくという。炎系のモンスターが多く出現すれば砂漠化したり、あるいは温泉の源泉が知らないうちにできていたり、といった具合に。

 逆に、何もモンスターや備品を持っていない状態からダンジョンを作ろうとすれば、あらかじめ用意された、数少ないテンプレートに合致した地域にしかダンジョンを出現させることはできず、また初期配置できるモンスターや備品もそこの周辺の地形に見合ったものだけ。さらに、見合わないものを召喚できるまでダンジョンが成長しても、周辺環境に見合わないほど消費するDEが増加するという制約条件もかけられてしまう。

 ゆえに、好きなようにモンスターや備品召喚・生成出来たり、好きな地域にダンジョンを出現させたりしたいなら、一番にモンスターか、備品などの召喚・生成をしてしまった方がいいのだという。

 そして、それは少なくとも10枠分は、ルートボックスにより決定したほうがよい、とも言われた。

 なぜかといえば――


『ダンジョンは、その周囲の環境に影響を及ぼしやすいけど、その逆もしかり。だから、基本的には、最初はその周辺環境に見合ったものしか召喚や生成できないの。

 例えば、森の中に新しくダンジョンが出現したとするわね。そのダンジョンは、比較的ゴブリンが多く生息している、としましょう。そうすると、ダンジョンが最初に持つ特性は『集団』『社会性』『森』といった感じになるの。もちろん、それ以外にも初期特性は持つでしょうけどね。

 でも、今言った例からいくと、『集団』か『社会性』か『森』にカテゴライズされたモンスターや備品じゃないと、DEを大きく消費してしまうのよ。

 さらに、今は事前準備の段階。だから、まだ何にも染まってない分、ファーストアプローチ――1回目の個別召喚では、何の制限もなく召喚や生成ができるけれど、あくまでも1回目の話。

 それ以降は、DE導入前の事前準備の場合だと、そもそもDEを消費して無理やり共通性を無視することもできないから、カテゴライズ制限も無視できない――結果、事前準備で個別召喚を選ぶと、最初に選んだモンスターに準拠したモンスターしか召喚できない、というわけ』


 とのことだった。

 その点、ルートボックスはそういう条件をすっ飛ばして、その時点での『環境属性』を度外視して召喚(または生成)が可能なすべてのモンスターやアイテムが対象となる。無論、ダンジョンを設置した後は設置した地点周辺の環境に見合ったもの――ダンジョンが持つ特性に対し、符合性の高いものほどPUされるらしいから、そううまくいかないこともあるらしいが。

 つまり、事前準備だからこそ、大きくバクチを打っておかないと、後々損をすることになる、ということらしい。

 当たりはずれを無視する程度の度胸が求められる、ということでもある。


 ちなみに、事前準備枠は向こうに行ったあとは余剰分を残せない――つまり、モンスターと備品でそれぞれ100枠、合計200枠全部引いておかないと、余らせた分損をしてしまうようだ。

 なので、余った分は適当にルートボックスを引くことを勧められた。


「なるほど……大体理解はできた」

『そ? それはよかったわ。それじゃあ、ぼちぼち始めていきましょうか』

「そうだな。まずは勧められたとおりに、ちゃっちゃとそれぞれのガチャを50連くらい引いちゃうか」

『そうね……まぁ、妥当な線じゃないかしら。それくらいなら、環境属性も豊富になるし、選択肢も広がるでしょうからね』

「あぁ。その後で残りの枠を決めていけばいいだろう」


 というわけで、さっそくそれぞれのルート10を5回ずつ頼んでみた。

 ルート100? 引かないのって誘われたけど無視かな。ある程度は自分で判断して召喚とかしたほうがいいと思うし。戦略的な意味で。


 ――そして数分後。その結果は……。

 モンスター召喚用のルート10では、先ほどの引き運が嘘のような結果になり、PRこそ1つ出たものの、そのうち20連は最低保証。備品周りもPRが2つとGRが8つ、それ以外はSR以下という微妙な結果となった。

 その内訳がこちらである。


PR

モンスター枠

兵装ゴーレム 鉄鬼アルドック 1

アイテム枠

神聖結界陣 1 / イージス艦(リブシブル仕様) 1


GR

モンスター枠

人間(剣聖) 1 / 狐獣人(聖賢) 1

ハイエルフ(聖女) 1 / 兵装ゴーレム 鉄鬼 1

ハイオーガ 戦鬼 1

アイテム枠

マジックミサイル砲4基 2 / マジックビーム砲(属性フリー) 1

スキルジェム:ストレージ 1 / スキルジェム:結界魔法(聖女の祈り) 1

財宝:黄泉返りの卵6個パック 1 / 財宝:リトルエリクシル10本 1

財宝:聖女の杖 1


SR

モンスター枠

人間(ジョブあり) 2 / ワーウルフの群れ(10匹) 1

サーペンタイガー 1 / サキュバス集団(5人) 2

ハイサキュバス 1 / ファイアドラゴン 1

兵装ゴーレム 1

アイテム枠

紅蓮竜の剣 1 / 銀氷竜のレイピア 1

黄土竜の盾 1 / 暗黒騎士の槍 1

ゴブリンの砦 1 /オークの砦 1

サキュバス町 1

BR……以下略


入手特性

『海』『船』『金属』『鉱物』『軍』『陸』『森』『街』『火山』etc.


 まぁ、ぱっと見た限りではおかしいところはなく、ゴーレムとかオーガとか混じっているあたりは普通にファンタジーなんだろう、という感想だ。

 たとえそこに剣聖やら聖女(!?)やら、敵陣営になりかねないやつらが紛れ込んでいても、ファンタジーなら問題ない範囲内だろう。

 だが、ちょっと待ってほしい。


『結果はこんな感じね。上々じゃないかしら』

「いやいや、排出されるモンスターとかアイテムとか確認しなかった俺も俺だけど、これはおかしくないか!?」

『おかしくないわよ。さっきも言ったでしょう、事前準備の段階(・・・・・・・)ではルートボックスのPUはあなたの現在地に準拠したものになるって』

「だからって、これは過剰戦力だろう……」

『排出率自体はいじってないから、単純にあなたの引き運じゃないかしら。よかったじゃない、防衛力としてはこの上ないアドバンテージが得られて』


 確かにそれはそうだが。

 一応、高レアリティのモンスターやアイテムのチェックだけはやっておくか。

 どれどれ……。


兵装ゴーレム 鉄鬼アルドック

追加特性:『質量』『死角なし』『とても頑丈』

 鉄骨製の人型骨格模型のような外見をしたモンスター。デフォルトでストレージのスキルを保有しており、腕部に様々な武器を装備して戦う。

 主な攻撃は対戦車級マジックキャノン、対艦級マジックミサイル、対軍6砲身マジックガトリングキャノン

 また一定の距離に近づくと近接用としてマジックショットガンを展開してくる。

 各武装は結界初期化性能が付加されており、いかなる防御魔法でも防ぐことは困難となっている。


神聖結界陣

追加特性:『活性化』『神聖属性付与』『聖域』

 陣を敷いた建造物などの周囲に神聖結界を付与する。この陣は、地脈またはダンジョンから魔力を補充する。

 神聖結界内部では、1.内部の瘴気が浄化され、2.瘴気をまとう存在に苦痛が与えられ続けると同時に3.聖女や勇者、これに従属する者に莫大な力が与えられる。

 ただし、ダンジョンなどにこの陣が設置されたり、瘴気をまとっているが神聖属性も有する者が結界を発動したりすると、結界内部の効果は逆転することになる。

 いずれにせよ特性は変化がなく、瘴気をまとわない者にとっては近づいても通常の神聖結界としてしか認識できないため、内部に入る際は細心の注意が必要。

 なお、神聖結界はより広範囲に展開されたものが優先され、内部で同一の結界を張ることは不可能となる。


イージス艦(リブシブル仕様)

追加特性:『質量』『迎撃』『理力』

 エンペラーズ・ファイブと呼ばれる勢力の内の一角が統治する、強大な異世界の技術で作られた軍用艦――を、リブシブルで運用しても問題ないように改良を施したもの。

 動力源、使用弾薬、探知方式、全てがリブシブルにおいて中枢を担うものに変換されている。

 保有効果として、このアイテムをダンジョンのフィールドに設定することができるようになる。実行すると、内部の一部、または全部を亜空間に広がるダンジョンへ改装することができるようになる。

 保有できれば強力な反面、ゼロから始めた場合、『軍』『船』『海』『大砲』をはじめ、それらの下部ツリーに存在するありとあらゆる特性を取得しなければ入手できないため、非常に困難なので、素直にルートボックスに頼ったほうが無難である。


 うむ。

 いずれも、戦力や防衛力という観点から過剰戦力といってまず間違いないだろう。

 イージス艦はさることながら、ゴーレムもボスモンスター枠としては破格の性能かもしれない。まぁ、武御雷とかの、神族ほどではないだろうけど。

 ただ、意外とやばいと思ったのは神聖結界陣だ。


「なぁ、この、神聖結界陣って、あれだろ、分野的には聖神の領域なんだろ? よくダンジョンアイテムなんかに起用できたな……?」

『え? むしろ、なんでそんなこと聞くの? 起用できて当然じゃない、神聖結界陣なんだから』

「いや、だから神聖って聖なるってことだろ? なのになんで瘴気が動力源のダンジョンで、ダンジョン側に有利な条件で発動できるのかっていうのが気になってるんだが?」


 うん。俺、間違ったこと言ってないよな?

 むしろ、ダンジョン内で起動するとダンジョンがやばいことになりそうな予感しかしないのに。


『そりゃあれでしょ。私もこっちの世界では魔力の調律を図る二大主神の片割れなんだから、そういう仕様でダンジョンアイテムとして起用できて当然でしょ』

「けど、司ってるのは瘴気なんだろ?」

『うーん……そこが間違ってるというか、さっきも言った通り、私がやってるのはあくまでも瘴気を正の魔力に転換させたり、凝縮して生物や物質を生成してるだけよ? それも、目的は世界の平穏を脅かすためとかそういうのじゃなくて、単純に瘴気という毒素から他の生物の営みを守るためだし。それ以外では普通に聖神と同じことして世界を管理してるわよ? 邪神だのなんだのっていうのは、下界の人々が勝手にそう解釈してるだけだしね?』

「マジか…………つまり、普通にありなのか、これ……」


 俺の勝手な思い違いだったってだけか。

 そもそも最初の名乗りの時点で邪神って言われたからそう思い込んでいたけど、確かにさっきも同じようなこと言ってたもんな。

 さっきの今っていうのもあるし、それで気分をちょっと害したのもあるからよく覚えてる。

 何を俺は勘違いしてたんだか……。


『あー、でも気にする必要はないわよ? 私にとっては、慣れっこだしね。あはは……』

「何をいまさら……そんなこと言われて気にしないなんてこと、できないぞ。それに、そんな乾いた笑い方去れれば余計に忘れられない」

『そ、そんな大げさな……』


 邪神さんは確かに気にする必要はない、と言わんばかりに笑い飛ばそうとするが、モニターの隅っこでも見てしまったからな。

 邪神さんが、一瞬でも悲しそうな顔をしていたのを。


「ごめん。もう邪神とは言わないようにするよ」

『え……何よいきなり……』

「名前、教えてくれないか? 名前で呼べば、邪神とは言わずに済むからさ」

『名前? それなら、エルメイア、だけど……どうしたのよ、本当に』

「別に意味はない……自己満足だよ。でも、今さっきの話で、ちょっと思うところがあったからな」

『そう? なら、別に気にしないけど……………………』


 戸惑いながらも、名前呼びを許してくれたエルメイアさん。

 しかし、気にするなといいつつもやっぱり相当気にしてたんだろうな。一瞬だけど顔がほころんだし。ほとんど口パクだけど、『ありがとう』って言ってるあたり、喜びを隠しきれてないしな。

 ……それにしても。

 これ、ほんとに引きが強すぎるだろ。くじ運が良すぎないか?

 この反動が後になって返ってくるとかあったら、俺マジ泣きするぞ。

 はぁ……ま、引いちゃったものは仕方ないよな。最低保証だけ、とかじゃないんだし。むしろ、強すぎるから思い悩むとか、贅沢過ぎる考えだよな……うん、素直になろう。

 強すぎるモンスター(?)やアイテムを引いたんなら、やっぱりここは喜んでおかないとな。

 よし、気を取り直し手続きをやろうか。


 俺が心の整理を終えると同時に、エルメイアさんも落ち着いたようで、何回か深呼吸をしてから(神なのに必要なのかどうかは疑問だが)、俺に向き直って初期設定の続きを促してきた。



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