表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】この度、筋肉バカ王子の教育係に任命されました  作者: 狭山ひびき
この度、筋肉バカ王子の教育係に任命されました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/37

11

 レドモンドはダンスホールで優雅に踊るシャーロットを茫然と見つめていた。

 時代遅れのドレスやアクセサリーを身に着けて、パッとしなかったシャーロットの影はどこにもない。

 洗練された流行のドレスに髪型。もともと整った顔立ちをしていたが、長所を生かすように施された化粧は彼女の美しさを際立たせ、一瞬、あれがシャーロットだとは気が付かなかったほどだった。

 頬を紅潮させて見上げるのは、今や王位継承順位が一位の第三王子アレックスである。


「レドモンド」


 隣でマルゴットか何か言っていたが、レドモンドの耳には入らなかった。


(なんであいつが、王子と……)


 レドモンドにとって、これは大きな誤算であった。

 シャーロットと婚約を決めた時、レドモンドは彼女が磨けば光る原石のように見えた。

 よく見れば造形は整っているのに、趣味が悪いのか、なぜかいつも変な格好をしている。けれども格好さえ何とかなれば、彼女は大きく化けるはずだーーそう思っていた。

 しかし彼女は変わらず、レドモンドは彼女の親友であるマルゴットと深い中になって、結果シャーロットを捨てた。……あんなに美しくなるのならば、手放さなければよかった。

 レドモンドはシャーロットと婚約を破棄したことを後悔していた。

 もともとレドモンドは、シャーロットのパメーラ伯爵家の財産も狙っていた。結婚すれば莫大な持参金が用意されるはずで、傾いたとまではいかないものの、それほど裕福でもない男爵家のーー、それも次男であるレドモンドにとっては、シャーロットは人生を左右する大きな「買い物」だったのだ。

 それなのに、レドモンドはシャーロットと婚約を破棄したことで、得るはずだった持参金が得られなくなったばかりか、怒り狂ったパメーラ伯爵家から多額の慰謝料を請求された。レドモンドの父はそれに怒って、レドモンドを勘当してしまったのだ。

 それに追い打ちをかけるかのように、レドモンドはパメーラ伯爵家のシャーロットとの婚約を破棄して、マルゴットという格下の女に手を出し、家族から勘当された愚か者として社交界での笑いものになった。

 いつも美しく身なりを整えているマルゴットは、どうやら同性からあまり好かれていない女だったようで、シャーロットという盾を失った彼女の相手をするものはおらず、パーティーに出席しても見向きもされなかった。けれども矜持の高い彼女は、見下していたシャーロットのおかげで自分が注目されていたと認めたくないようで、日を追うごとにその恰好は派手になり、レドモンドにも次々と新しいドレスやアクセサリーをねだるようになった。

 レドモンドが渋い顔をすればマルゴットの機嫌は悪くなり、大騒ぎをはじめるため、今や自由になる金などほとんとないレドモンドは仕方なく借金をしてまで彼女の望みをかなえなくてはならなかった。

 今思えば、シャーロットはレドモンドに何もねだらず、わがままも言わず、本さえあれば満足だと言うものすごく扱いやすい女だったと言える。

 つまりレドモンドは、一時の感情ですべてのものを失ったのだ。


(……シャーロット)


 シャーロットとアレックスはどういう関係なのだろう。どうしてシャーロットがアレックスのダンスのパートナーを務めているのか。

 本来彼女の手を取るのはレドモンドのはずで、ダンスホールで注目されるのもレドモンドのはずなのだ。

 レドモンドはまるで妖精のように軽やかに踊る美しい元婚約者から、目を離すことができなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ