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与えられるものに耐性なしッ!!

「そんな、カメ朗様ッ」


「ははははは~、流石に少し壊れたでしょう?」


 光に包まれたカメ朗。

 その姿は視認することが出来ず、ただ光が広がっている。

 周囲の壁は余波だけで溶けてしまっていた。


「魔導そのものをぶつけたわけでもないから、無効化も出来ない」


「あわわわ」


「とはいえ、こちらもそれなりに貴重な魔導を消費したから、【どっかの気狂いの作品】はやっぱり厄介だね~」


 魔導とは消費して使用するものであり、どんなに発動に必要なエネルギー(魔導力)が足りていても、魔導そのもののストックがなければ発動不可となる。

 先ほどシエルが使った魔導は彼女のオリジナルで、一般には流通していない貴重品であった。

 なのでそれなりに彼女は焦っているが、持ち前のポーカーフェイスによってクール&クール。


(とっておきが後一つあるし……まあ、なんとかなるかなぁ~?)

 

混乱するジゼルにシエルはその目を向けた。

 びくりと震えるジゼル。

 彼女を見るその目は、いまいち感情が分からないものだ。


「それじゃあ、君も連れて行こうかな~。ジゼルちゃんー」


「あわわわ、そんなっ」


 慌てふためく涙目のジゼルには、なにをすることも出来ない。

 ただカメ朗の無事を祈るしか出来ず、視界が真っ暗になってしまう。


「おっと、気絶しそうだねー。だめだよー倒れたら~」


「ああぁ。カメ朗さまぁ……」


「ふふふ、そそられる表情。とりあえず自由を奪って……」


■その時!■

■カメ朗を包んでいた光がはじけた!■


「なッ!?」


「――なかなか効いたぜ。今の一撃」


「ばかなッ、傷一つないッ!? うそ~!?」


「もし【トランス】がなかったら、腕の一本は壊れていたかもな……。やれやれ」


■カメ朗の姿に、シエルは驚愕している!■


「その姿は、有り得ない……ッ、まさか――」


「ふ、その強気な笑みがようやく陰ったな。……見せてやるよ、おれの奥の手!」


■不気味な音を響かせるカメ朗は、【正統派】の姿■

■その身に宿りし人間を超えた力、その全力の一端を解放した■

■シエルは……彼の本領を見誤っていたのだ■


「覚えておきな――カメが遅いとは限らない」


■轟音がいくつか響いたあと■

■決着は着いた!■


●■▲


「ううーん、はっ!?」


「お、目が覚めたがしゃん」


「カメ朗様ッ」


 ジゼルはカメ朗の腕の中で目覚め、彼に抱き着く。

 おっぱいの感触が素晴らしいと思ったカメ朗。こんなにかわいい娘が嫁とか、勝ち組じゃないかとあらためて思った。神さまありがとう状態。


「ううう、壊れたかと思いましたッ。すみませんッ。もうしわけないですわぁ」


「すまんな、心配かけて。よしよし。マイハニー」


 路地裏でジゼルを抱き締めるカメ朗。

 場所はさっきと違う場所であるが、油断はできない。

 どんな攻撃がきても彼女を守る意思を固め、きりっとした表情になる。


「そういや、買い物はメイド長に任せたよ」


「サポート通信ですか?」


「そうだ。なんかしぶしぶ感ありありだったけど、あの女」


■サポート通信とは■

■就職者が使える連絡手段である!■

■これがあれば携帯いらず!■


「まあ、本来おれには使えないが、それに代わる機能は持っているんでね」


「さすがですわッ、カメ朗様ッ。スキがありませんわね! すき!!」


「それほどでもないさ。ははは!」


 抱き合う夫婦。

 その隣には、金髪の美少女が立っていた。

 とても見覚えのある、敵の女幹部である。


「お熱いね~」


「きゃあシエルっ」


「そうそう、君たちの奴隷になったシエルだよ」


「あ、首輪……」


 シエルの首には黒色の首輪が。

 それによって彼女の攻撃行動は抑えられていたのだ。

 それでも変わらず笑顔のシエルは、余裕のありそうにも見える。


「ぼくはこの程度じゃ揺らがないよー、ふふん」


「く、敗者の割にふてぶてしいですわねっ。この女」


 勝ち誇っているシエルにぐぐぐと悔しそうなジゼル。

 どうやったら彼女に敗北感を与えられるのかと、思ってしまうジゼルだが……。


「では旦那様、メイド服はそのタイプで」


「うんうん、胸元が大きく開いたやつなー」


「了解しました、ゲスゲス朗様」


 カメ朗の前に出現した半透明の光に浮かぶ、メイド長の顔。

 これが就職者の連絡方法。

 連絡が終わると画面は消え、ぽかーんとしているシエルの顔が残った。


「ど、どういうことー。今の話……」


「んー、新米メイドに着せる服だがー!? んん~? シエルちゃーんはなにか不満でもあるのかなぁ~?」


「!?」


「ふははは、そのでかい山二つがはっきり分かる服をなァ! ばっちり強調したるわぁ!」


 エロゲーのゲスモブ的なカメ朗の高笑いに、シエルの顔は少し赤くなっている。

 その反応に疑問を抱いたジゼルは問いかけた。


「なんですの? そんなに開いたドレスを着ているくせに」


「いや、だって、これはぁ」


「……くくのく」


(やはりな、この女は他者にエロイ展開を強要されると恥ずかしくなってしまうタイプ!)


■エロ本などで培った経験によって、カメ朗は彼女の弱点を見抜いた!■

■メイド長に知られたら白い目で見られそうな特技!■


「ふふふ、じゃあ行こうか? 新米メイド君~。なぁに、こんなのはまだジョブだYO!」


「あぅうっ。そ、そんなぁ~」


「ククク……はーっはは!! 最初の威勢はどこへやらって感じだYO!」


■完全に悪役の笑い方のカメ朗は、手に持ったラジコンでシエルを操作する■


「……」


「なんだその目は、ジゼル」


「別に、なんでもありませんわっ」


「いや待て。これは罰であって趣味じゃないよ、趣味じゃない……!」


「ぷんぷんっ」




(すねちまったな。しょうがない、今日は好きに改造させてやるか……)


■やれやれと頭を振りながら、三人は町の通りへと戻っていった■

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