金髪の変質者ッ!!
■ジゼルの屋敷の南西■
■そこにある町の名、【スクールタウン】■
「ふ、いい朝だ……。エクセレント」
カメ朗はスクールタウンのある喫茶店で、優雅なティータイムを満喫していた。
その顔つきは知的さすら感じられ、まるで大人の男のような余裕を持って、爽やかさを振りまいていた。
今のカメ朗はとてもクールであるといえる。
「……」
「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」
「……ふむ」
そうクールに、女性ウェイトレスさんの綺麗な足を眺めていた。
自らクールさをぶち壊していくスタイルである。
やはりカメ朗はカメ朗であった。
「いやいや。おれはそんな目的でこの店の常連なわけではないよ。純粋に味を求めてこの店にいるんであって、邪な想いに振り回されて行動するなんて、そんな非紳士的な行いを許すカメ朗さんじゃない——」
誰も聞いていないのに言い訳をする姿は見苦しい。
カメ朗は己の気持ちから目をそらし、あくまで大人の男的な雰囲気を演出する構えである。
ジゼルにモテモテなことで何か勘違いしているのかもしれない。
「まあ、この店のウェイトレスのレベルたけーのは認めるけどね。ナイス人事!」
この喫茶店、【クイーンS】のウェイトレスはカメ朗から見てもかわいい娘ぞろい。
さすがにジゼルやリリレベルの美女はいないが、モデルと言われても違和感のない女性が普通に働いている。
これにはカメ朗君もにっこりである。
「そして中でも……!!」
■カメ朗の視線は店内のある女性に■
「――お客様~。お触りはNGって前も言ったよね~?」
「ぐああああ!! ゆるしてくれ!!」
問題のある男性客の対応をしているウェイトレス。
その長い金髪は星のように煌めき、見る者の性別問わずに魅了することだろう。
給仕服の短いスカートからすらりと伸びた足は、問題客の腹をずっしりと踏みつけていた。
「うーん。どうしようかなぁ。許しちゃおうかな~」
「ゆるし……いや許さないでくれ!! おれを許すなー!!」
「ええ~? どっちなのもう~」
いくら問題があるとはいえ、客を足蹴にするという暴挙を行っているわけだが、その客はなんか満足そうにはぁはぁ言っている。
しかし彼女は【クイーン】と呼ばれる絶対女王、それも仕方ないことなのかもしれない。
クイーン目当てで来ている客は多く、ファンクラブすら作られる圧倒的人気を誇っていた。
カメ朗も何気にファンの一人である。
「しかも顔が仮面で隠されているっていうね……。まったくミステリアスな娘だぜ!」
クイーンの顔半分は仮面で隠されている。
それすらも物ともしない圧倒的美女オーラを放ち、この店の看板娘として君臨していた。
カメ朗以外の客も彼女に惹かれて視線を集めている。
「うお!?」
■クイーンの視線が自分に向けられた■
■気がしたカメ朗■
「ふふふ……」
■じっくりと客におしおきしたクイーンは、また通常業務に戻っていった■
「どきどき……やべぇな。まさかおれに気があるんじゃ……!」
やはりカメ朗は調子に乗っていた。
このまま暴走すれば、最強の力を持ったロボストーカーが誕生してしまう。
嫁が出来たぐらいで彼はおとなしくならんという事実。
「あー、クイーンちゃん……たまらんぜ!」
無遠慮な視線をクイーンの豊満な胸に送るカメ朗。
もう完全に大人な男の余裕なんぞ捨て去り、下種な欲望をさらけ出していた。
ただのエロおやじ全開である。
「お?」
クイーンが男性客を一人連れ、店の奥にあるピンク一色の扉の向こうへ消えた。
その様子を見たカメ朗の脳裏に過る言葉。
前にこの店のファンとの会話で耳にした情報だ。
【この店の裏メニュー……その名も!!】
「膝枕しながらおっぱいでスプーンを挟み、あーんをする究極のご奉仕スタイル……!! 【おっぱいあーん】!!」
カメ朗はその光景を幻視した。
した瞬間に、その手はすでに謎のドアの取っ手へとかかっていた。
せっかちなカメ朗による超速移動は常人の目に留まらず、ゆえに誰もその行動を認識できない。
(夢の光景へ——)
■ドアを(ちょっぴり)開け放つとそこには■
「うおう!! もっとだ! もっと激しく!!」
「ふふふ~。まだまだ序の口だよ~」
「そ、そんなッ。これでも序盤だってえええ!?」
「その通り~。さあさあ、どうしてほしいのか言ってみなよー!」
縄で縛られた全裸男がクイーンの鞭によって痛めつけられていた。
彼女は今まで聞いたことのないドSな声を出し、カメ朗君がドン引きするレベルの女帝オーラを発している。口から涎が垂れるほどにクイーンは興奮中。
「あうっ、おうっ、どうっ」
「ほら!! ほら!! 豚のように!!」
「ぶ、ぶひいいいい!!」
「――見なかったことにしよう」
■カメ朗は超速移動で席に戻り■
■大人の男きどりを再開した■
●■▲
「ふうううう、ほおおおお」
気色の悪い声を上げながら、カメ朗は何かを口に含んでいる。
棒状機械のそれは、近くに置いてあるポリタンクに繋がっていた。
(最高級オイルゥ)
■数分のオイル供給後■
■ポリタンクの口にセットされた機械のスイッチを、OFFに■
「ふううぅうう、やっぱりこれがないとなぁああ」
■場所は様々な工具が置いてある小屋■
■ジゼルの作業場所である■
「おれの嫁は、ロボットでも作っているのか? やたらとロボロボうるさいが……」
■ボロボロの窓から射し込む光■
■それによって、床に散乱した鉄くずが見える■
■オイルや鉄が焼けたような匂いが漂っていた■
「分解されたりしないよね」
■不安なカメ朗■
●■▲
「では、行ってきますわ。そんなには遅くならないと思いますわ」
「ええお嬢様。……お気をつけて」
玄関でジゼルの見送りをするメイド長。
ジゼルは毛皮のコートを着込んで、寒くなってきた気温対策。現在地から外に出れば極寒が待っているだろう。
「カメ朗様は?」
「旦那様は、まだ寝ています」
「ふふふ、お寝坊さんね。……寝ている間に少し分解したいっ」
ジゼルの呟き物騒極まる。愛しい男性の顔と超合金ボディを思い浮かべ、危険なうっとり顔。
メイド長はなんでかしぶい顔。
■扉を開け、昼の町へと行くジゼル■
■自家用車(メイド長が運転)を使わずに、あえて徒歩で町へと向かう■
「はぁ、帰ってきたら……カメ朗様とどんなお話をしようかしら」
■頭の中は、カメ朗のことでいっぱい■
「……あら、もう着いてしまったわ。カメ朗様の魅力のせいでっ」
■人気のない道を歩いて数分で、町へと到着■
■名前は、【ユウキュウタウン】■
■リフレッシュな労働を!!■
■というスローガンを掲げた町■
「さてさて、買い物を済ませてしまいましょう」
チラシを持ったジゼルは町の南の細い通りを歩き、目当てのお店へと向かうのであった。
麗しいその容姿は周囲の歩行者の目を引く。
必然か否か、野蛮そうな三人がジゼルの前に立ちふさがる。
「おいおい、随分なベッピンさんじゃねェか~」
「今ヒマ~?」
「きゃあッ、なんですのッ!? 見るからに野蛮人な三人! しかも不細工ッ」
「傷つくこというなよッ」
「初対面になんて女だッ」
■近くの路地裏に連れ込まれてしまう彼女!■
■ピンチ!■
「きゃああああッ」
「へへへ、おれたちは就職者ッ!!抵抗は無駄だぜッ!!」
■就職者とは■
■攻撃力・防御力などのステータスを持つ、強力な戦士である■
■世界中で色々と特別視される者たち■
「カメ朗様ァァッ」
■助けを呼ぶ声!■
■その時!■
「なんだッッ」
「この音ッ!!」
「上だァッ」
「ジゼルーッ!!」
■叫びは返された!■
■空から来た、ロボットによって!■
「なんだァッ」
「てめぇッ」
「ロボットかァっ」
「その通り。嫁に危害を加えるのは許さん」
■赤く光る両目■
■ジゼルの前に立つカメ朗■
「ふざけやがってェ」
「おれたちの力ァ、見せてやらァ」
「フォーメーションUだッ」
■チンピラたちは怪しげな動きを見せる!■
「な、なんて気色の悪い動きッ」
「がーん」
「ひでぇっ」
■ジゼルの言葉にショックを受ける三人組■
■攻撃は止めない!■
「おらあああああ」
「はい、バリア」
「ぐぼべっ!?」
■カメ朗の掌から展開された、半透明のバリア■
■それにぶつかって、三人は自滅!■
「ば、ばかなァッ」
「強すぎるゥッ」
「ぐふ」
倒れ伏すチンピラたち。
カメ朗はバリアを消した。
「まったく、いくらジゼルが可愛いからって」
「カメ朗様、怖かったですわっ」
「すまんな遅くなったぜ。メイド長が念のためにって起こしてくれたんだ」
カメ朗に抱き着くジゼル。
嫁の頭を撫でるカメ朗は、彼女をしっかりと抱き締める。
「はぁはぁ、このボディ。たまりませんわッ」
■カメ朗の胸板に頬ずりするジゼル■
「さ、買い物に行こうか」
「ですわね。一緒にッ」
■手をつなぎ、路地裏から出ようとする二人■
「買うものはなんだ?」
「えっと、カメ朗様のボディ用のボルトと油と……」
■その時、立ち塞がる影■
「――ストップだよー。そこのロボット」
■巨乳の、金髪美少女■
「何者だ。貴様」
「ふふふ、話通りのカメカメ族だね~。何か意味があるのかなー」
「ジゼルは渡さんぞッ。くおらァッ!」
■碧眼の瞳をカメ朗に向け、そのボディを舐め回すように眺めている■
「キミには、ボクたちのモノになってもらうよー。カメ朗君」
「な、なんだと」
■そう言う彼女の顔は、わずかに赤くなっている■
■あと、すごいハァハァしてる■
■めっちゃ興奮してる■
「やばいやつだ……どうしようっ」
カメ朗はいきなり士気を砕かれ、若干あとずさりした。




