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決着の時ッッ!!!

「ぐ……お!?」


「ふ、油断しましたね。旦那様!」


 カメ朗に直撃した一刀。

 たしかに速度はすごいが、ボディを砕くほどのものでもなかった筈だが、彼はくらくらと意識が揺れるのを感じていた。

 

(ワタシの一太刀は激しい眠気を誘うもの……一応は睡眠を行うゲスにも効く!)


 ロボットなのに効くのは、さすがオーバー・テクノロジーと言うべきなのか。

 カメ朗は体勢を崩して、完全に隙を晒してしまっている。

 畳みかけるように二人のメイドは攻撃を仕掛けた!


「お覚悟ー!!」


「粛正開始」


 銃弾と斬撃の音が部屋内に響き渡り、カメ朗のエネルギーはどんどんと削られていく。

 事前にエネルギー充填を行っていなかったせいで、彼の動きはぎこちなく、普通に追い詰められていた。

 カメ朗の顔をひやりとオイルが流れる。


「おのれぇえええ!!」


「ふ、どうやら年貢を納める時のようで!!」


 ラジコン操作を行う暇すら与えない攻撃の嵐。

 余裕ぶっこいて自動操作モードを解除したのが不味く、さらにはある事実がカメ朗を苛む。


「ぐ、卑怯だぞぉ!!」


「なにを? 自業自得でしょうに」


 カメ朗の視線はコレットたちの姿に集中していた。

 そう、何故かコレットまでスク水メイド姿で彼と戦闘を行っている。

 その美しい肉体が協調されることで、彼女たちの魅力がわかりやすく映り、カメ朗はむらむらしてしまうという展開。

 メイド長の巨乳が揺れるたびに硬直するカメ朗。彼女の刀を使った激しいアクションは、なおさらそれを強調する。


「くそ、ここまで的確におれの弱点を突くとはっ。おそろしいメイドやで……」


「弱点であってほしくなかったですよ……情けない。まあ、美少女に見惚れる気持ちは分からなくもないでもないでもないですが」


「なかなか屈辱。早くその目を潰します」


 二人の美女の姿に見惚れてしまうという、カメ朗の弱点。

 さらに、なんだかんだ言って彼女たちに本気で攻撃できるわけもなく、メイドたちの勝機が見えていた。

 メイド長たちは羞恥心に耐えながら、確実にカメ朗を追い詰める。


「終わりです——!」


■すさまじい音と共に放たれる銃弾■

■大砲並みの大きさのそれは、カメ朗を襲い……■


「甘いッ!! おれを舐めるなぁあああ!!」


「!?」


「どりゃあああ!!」


 右拳を振りかざして銃弾を弾くカメ朗。

 大きな破壊音が鳴って、彼は二人のメイドの方へと突っ込む。

 どうやら距離を詰めて取り押さえる戦法のようだ。


「きゃあ!?」


「さっきの技は使わせないぜ! メイド長!! やたらとセクシーな動きしやがって!」


 メイド長が刀を振る前に、両腕を押さえこむことに成功した。

 顔が青くなったメイド長は必死に蹴りで応戦。

 金的攻撃を仕掛けるが、カメ朗は大して効いていない様子。


「ははは! 鋼のゴールデンボールにそんなもの効くかァ!!」


「うるさい! 放しなさいよ! この女の敵!!」


「誰が放すかー! おれを甘くみるなよ! やるときはやるんだ!!」


「なにをやる気よ!? 変質者ー!!」


 取っ組み合う二人。

 それにコレットも加わり戦いは泥沼化、

 カメ朗はほっぺたを引っ張られ(形状自在合金という特殊なボディなため、普通にのびる!)、がすがすとすねを蹴られ、地味にダメージが入っていた。

 

「いたいた!? 無駄な対抗はやめて、早くおれに屈するんだYO!」


「誰が! あんたの独裁をここで阻止しなければ、ワタシたちに未来なし! (ワタシが操作権を全て握り、その後は……ぐふふ)」


「その通り(メイド長も排除しますが)」


「このォ! だが最後に勝つのはおれだ!!」


 泥沼過ぎる戦いは激化し、やがて終焉を迎えようとしていた。

 最後に残るのは果たして――!!


「――なにを、やっていますのッ!!!」


「!!」


「お嬢様ッ!? まだ映画館にいるはず……!! なぜ……!?」


■どっかーんと音がして■

■三人の戦いは終戦した■


●■▲


「残念ながら、わたくしの見たかった劇場版アニメは上映中止になりましたの……。はぁあ」


「なるほど。……中止理由は?」


「分かりませんわ……。ただ、大魔導連盟が関わっているとかいないとか、映画館のスタッフは言っていましたわね……。くわしいことはなにも……うまく聞けませんでしたし……」


「……」


 完全にテンションが下がっているジゼルの様子を見て、メイド長は苦い顔になる。

 意気揚々と好きなロボットアニメの劇場版を見にいった彼女だが、その時の明るさと比べるとあまりに痛々しい落ちこみようであった。

 せっかく、ひきこもりがちのお嬢様が楽しく外に出れるイベントだというのにと、メイド長のテンションもストップ安。


「……まあ、その話についてはあとで相談したいことがあるとして、今回の事件の弁明を行わせていただきます。お嬢様」


「――へえ。どう言い訳するのか見物ですわね?」


「うっ」


 いつになくトゲトゲしいジゼルの態度に、メイド長は肝が冷えていくのを感じる。

 これは本気で怒っている。

 カメ朗も顔がブルーに染まっていた。

 

「では、どういうことなのか……説明してくれます?」


「……いやその。九割はメイド長たちが悪い!」


「だ、旦那様が悪いんですっ。ワタシたちは正義です!」


 カメ朗達三人はジゼルの前で正座させられる。

 ジゼルはどこから見ても怒っている。カメ朗が見たことのない表情で、さすがにのん気な彼も状況のやばさを直感で理解した。

 

「かくかくしかじかでして」


「……なるほど、カメ朗様が調子に乗って、それを阻止するために戦った結果と……カメ朗様?」


「少し待ちたまえよ、それはそれとしてメイド長たちの大暴れも問題ではなかろうかNE? 特にコレット!」


「はい? 何がです?」


「とぼけんなYO! どう考えても過剰な火力であったろうが!」


 実際、コレットは無駄にすごい威力の攻撃を無駄に放っていた。

 そんな器用に戦うなど出来るわけもない彼女ではあるが、とにかく少しでも責任を減らさないとジゼルの怒りが怖いカメ朗、加害者特有の必死すぎるマシンガントークを披露する。

 やたらと姑息な彼の言動を見抜いたメイド長たちも、負けじと反論開始。


「だいたい貴方が――」


「いやお前が――」


■責任のなすりつけ合いが発生する中■


「ふ、ふふ……どんな事情があるにせよ……罪は変わりませんわ……!!」


「じ、ジゼルッ!?」


「お嬢様ッ!?」


「これを見なさい! これが貴方たちの罪の形!」


■震えるジゼルの右手には■

■壊れたロボットのプラモデルが握られている■


【遂に手に入れましたわ……!! 1/135スケールの限定生産【カラクリ王シリーズ】!!】


【人気ナンバーワンの主人公機をアレンジしたデザインで、この前の総選挙でもアンケート上位を……】


【ゆっくり時間をかけて……ふふふ……たっぷりと可愛がってあげますわ……!!】


■よだれを垂らしながらそんなことを言っていた過去■

■その欲望が砕かれた現在■

■カメ朗が弾いた銃弾が、隣の部屋に突っ込んだ結果だ■


「よくも、よくも――ゆるさないッ!! いくらカメ朗さまといえども、この怒りはおさまりませんわぁああああ!!」


「うわあああ!?」


 この館の真の支配者はカメ朗でも、メイド長でもない。

 オーバーテクノロジーを駆使する怪物も、惚れた嫁には敵わぬようだ。

 怒ったジゼルに恐怖のカメ朗(このあと、トラウマになるほど弄られた)。

 館の支配権争いは唐突に終焉をむかえた。


■それはそれとして……■


「……で、相談したいこととは?」


「はい。実は、お嬢さまの見にいった劇場版アニメ……コレットちゃんも好きなようでして」


「え……そうなんですの!?」


 カメ朗に対する制裁が終わったあと、メイド長からいわれた言葉にジゼルは驚く。その視線がコレットに向くと、彼女は平坦な顔でピースした。

 一瞬で通じあうオタクの絆。

 今日行われたメイド長のセクハラじみたコミュの、唯一といっていい成果である。

 

「で、では……。今度いっしょに……っ。見にいき……」


「OK」


「!」


「いつ行きますか?」


 コミュ障を身内にすら発動するジゼルだが、軽いノリのコレットによってすぐに話はすすむ。

 あっさりといっしょに映画を観る約束をし、なんだかんだでこの度の騒動は一件落着となった。

 雨ふってなんとやら……おそるべき支配者をこらしめたことで、メイドたちはジゼルのありがたみを知ることになり、ジゼル自身も怒りのあとによろこびが待っていた。

 

「な、なんでいつもこうなんの……? がくッ」


 ……カメ朗という傲慢な支配者の犠牲によって、このたびの騒動はおさまった。

 彼はジゼルにひざ枕をされながら、さらに数時間怒られたとさ。

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