一件落着ッ!!
「く……わかった。みとめよう……!」
「!」
ひざを折り、うなだれる地区長。
10分ぐらい考えていたので、もうすでにギャラリーたちは負傷者の治療・魔導場の制御装置の修復などで解散していた。
カメ朗は……。
「ようやくか……まちくたびれたぜ」
「ご主人様~。気分はいかがですか~」
「いいなぁ~。最高の感触だぁ~」
■簀巻きのまま■
■シエルにひざ枕をされていた■
「コレットほどじゃないが良い足してるぜ……! うひょー!」
「ふふふ、ちょっと顔きもちわるいよー。しんでくれないかなぁ~」
「ふへへ!! 軽いジョークだって! ジョーク!」
鼻の下を伸ばすカメ朗はたっぷりとシエルの太ももの感触を、それはもう気持ち悪いほど集中して、味わっていた。
時々、メイドたちにこういうことを頼んでいる。
その度、ジゼルがほほをふくらませていたのだが。
「あの男……一時間も膝枕をさせたのよっ」
「私は二時間でした。やたらとほめてたのが逆に気持ち悪いですね」
「むむむ、わたくしでは不満なのでしょうかっ。何が足りない……?」
レジャーシートを敷いて昼食を取っているジゼルたち。
メイド長も復活して、一緒におにぎりやサンドウィッチを食していた。
さきほどまでの緊張感は皆無である。
「このサンドウィッチ……辛いッ!!」
「あ、私が作った分ですね」
「どんだけ辛党なのよッ。なにを入れたらこんな兵器が!?」
「唐辛子×3、ハバネロたっぷり、からし、わさび、その他色々」
「ひぃいいッ!!」
コレットの仕込んだ料理によって悲鳴を上げるリリに、水を手渡すメイド長。
ジゼルはおにぎりを頬張りながら、地区長とカメ朗の交渉の行方を見守る。
そして今、決定的な言葉が告げられた。
「……妹を連れ戻すのは諦める。今回の件で、君に借りもあるしな」
「ふ、おれの策が効果を発揮したか」
「あはは、うそくさいね~」
シエルにおにぎりを食わせてもらいながら、カメ朗は説得が上手く行って安堵。
もしもの時は自分の秘蔵コレクションを開放しなければならないかと思っていたので、この結果は上々といえた。
カメ朗のお前が言うな説教も役に立ったのだ。
「しかし……いくつか条件がある。いいかね?」
「ふむ、言ってみたまえよ。地区長君」
調子に乗ってるカメ朗がうながす。
地区長の条件とは、金銭などの送りものを受け入れること・定期的に連絡をよこすこと・カメ朗のコレクションをいくつか納めること等など。
カメ朗の顔が渋くなった。
「そして最後の条件は……」
■地区長の視線が、メイド長へと向けられた■
「妹を守ることだ。分かったね?」
「おう、いつも通りだな! はは!」
「いつも通りかな~?」
連盟の襲撃によって地区長は心配になったのだろう。
メイド長をなにがなんでも守れと言ってきた。
カメ朗は勢いよく頷いた。セクハラ行為は多分やめない。
「まかせてくれよ……。愛するメイドたちや嫁はこの手で守ってみせる……!」
「また何かに影響されたのー? アニメかな~?」
「うるさいよっ」
地面に転がっている簀巻きのカメ朗は宣言した。
昼食中のメイドたちは白い目を向けている。
ジゼルは何故か涙ぐんでいた。
「信じよう……ブラザー。信念を宿した純粋な瞳を持つ者よ」
「ああ。あなたならそう言ってくれると思ってたよ」
「にごりきったいやらしい瞳の間違いじゃないの?」
「しっ、あくまでにごりきった地区長の基準ですから」
「……」
自身の兄のあんまりな評価に、まともにフォローを入れることすら難しいメイド長。
むしろ全力で頷いてしまいそうになったぐらいだ。
メイド長はハンカチで目元を拭いた。
「なんにしても……」
説得は成功し、メイド長はいままで通りにジゼルに仕える。
ジゼルたちのお陰でそうなったことに、深く感謝の念を抱くメイド長。
「ありがとう……みんなっ」
「ありがとうはこっちの言葉ですわ、残ることを選んでくれたことに感謝します。これからもよろしくねメイド長っ」
「ジゼルお嬢様……!」
■二人の主従は■
■涙を流して抱き締め合う■
「別に。メイド長さんはなくてはならない存在ですから」
「そうよ! あなたがいなくなったら誰が悪しき魔王を止めるの!!」
「???」
メイド二人の言葉は良く分からなかったメイド長。
感謝はするが、なにかずれてると思った。
「お嬢様……」
「メイド長……」
■抱き合う二人■
■絶対に離れないように……■
(はぁはぁはぁ!! お嬢様ぁああああ!! たまらないわぁああああ!!)
■メイド長の息が変に荒いのが気になるジゼルであった■
●■▲
■夕焼けに染まる館■
■あの後、魔導場の制御装置が直り、カメ朗達はようやく帰還を果たした■
「帰ってきたなっ。わが家へとっ」
「そうですわね! カメ朗様! ……やっぱり人がおおいところより、家がおちつきます」
カメ朗達の目の前にあるのは、懐かしい気がするジゼルの館。
少し古ぼけた鉄の門扉が彼等を出迎える。
ジゼルはカメ朗の言葉に応えるように背後を向いた。
「はははは、そろそろ夫であるおれを解放してくれてもいいんじゃないかなぁ!! さすがに家の中までこれはきついよ!!」
「だめです。危険人物を放置はできませんから」
「あはは、日ごろの行いだねー」
「いい気味よ。このまま首から下を埋めてやろうかしら」
簀巻きにされたカメ朗がメイド三人(ミニスカサンタ衣装)に運ばれている。
ぎゃーぎゃーとわめくが解放される気配はなく、そのまま館へと直行である。
メイド長はその光景を後ろから見ていた。
「さて、どうしますかねゲスな旦那様の処置は」
■一応今回の功労者なので■
■それなりに優しくなっているメイド長の対応■
「……」
彼女はカメ朗の言葉を思い出す。
おまいうな言葉ではあったが、その熱意だけは本物であったように思える。
なので感謝はしているのだ。
「……ありがとう。少し見直したわ」
「え?」
「なんでもないです。先に行きますねっ」
メイド長はすれ違いざまにカメ朗に告げると、先の門扉へと走っていった。
●■▲
「しかし、連盟はなんで襲撃を行ったのでしょうか」
「カメ朗やジゼルが目的……かしらね」
居間のソファーでくつろぐコレットとリリ。
メイド長とシエルが二人にお茶を淹れている。
カメ朗は対面のソファーで横になって、その話に耳を傾けていた。
「……ぐー」
寝てるふりをしながら、連盟事件のことについて考える。
あの事件の原因は、すでに地区長から聞いて知っていた。
【実は、連盟が主導で行っているあるプロジェクトに協力してほしいと……言われていてね。ほほほ】
【なんだそりゃ?】
【ある場所を目指すものでな――】
「……」
【それと条件のほうだが】
【……】
【毎週、マイシスターの隠し撮り写真を一定枚数送ること……だ】
【OK】
「ぐーすかー」
条件の方はともかく、連盟に脅されていたらしい話は気になる。
どんな理由があって連盟はそんなものを建設しようとしているのか?
寝たふりをしながら考えていたら、本当に眠くなってきた。
「――お疲れ様です。カメ朗様」
「ん?」
ジゼルの声が聞こえて来た。
カメ朗が目を開けると、彼女が微笑みを浮かべて彼のことを見つめている。
身を起こし、普通に座るカメ朗。
「ジゼルも……さすがの知識だな」
「そう言ってもらえると嬉しいです。勉強……というか、趣味の産物ですが」
カメ朗の隣に座るジゼル。
彼女のロボットに対する知識・修復技術がなければ、今日の窮地を乗り越えることは出来なかっただろう。
褒めてもらえてジゼルは頬を赤くしている。
メイド長は微妙な顔でカメ朗達の様子を見ていた。
「ふふ、なにも恥ずかしがる必要はないYO。好きなことは好きで良いじゃないかっ」
「……ですが、故郷だと変人扱いされていましたの」
「ジゼルの故郷? たしか、島の北にあるんだったか?」
「ええ。いつも砂嵐が吹いていて……とても過酷なところでしたわ」
遠い目で故郷のことを思い返しているジゼル。
彼女はあまり故郷のことを語ろうとしない。
きっとあまり好きではないんだろうと、カメ朗は深く聞くのを避けていた。
「昔はどうか知らんが、おれはそんなことでジゼルを変に思ったりしないさ。愛する妻なんだからYO!」
「!!」
カメ朗の言葉を聞いたジゼルは、いきなり目に涙を浮かべる。
驚いてあたふたするカメ朗に、彼女は大丈夫と言った。
「す、すいません。嬉しくて……! カメ朗様に変に思われて、嫌われているんじゃないかって……」
「HAHAHA! おれはそんなに器が小さい男じゃないZE!」
「……!」
「どんと来な! お前の趣味を全開にしてな!」
胸を叩いてジゼルの全てを受け止める宣言をしたカメ朗。
ジゼルは感激に目を潤ませながら、体を震わせ、深く感謝した。
「では、遠慮なく! 語らせていただきます!!」
「おう、遠慮なく来い!!」
「軽く5時間ほど!!」
「へ?」
■それからジゼルのオタトークが始まり■
■カメ朗は若干後悔した■




