バリアはロマンッ!!
「そういえば、リリはどうする?」
「あー、あの子いたね。まあ、適当に救出しとけばいいんじゃない?」
「そうね。あんな欠陥魔導じゃ脅威にもならないし。ぷふっ」
「笑ったらだめよっ、ぷふふ」
完全に舐められまくっているリリ。
一応、彼女たちの先輩なのだが、連盟は実力主義的な風潮があるため、魔導を満足に使えない者はバカにされる傾向があった。
●■▲
「おっと、まさか……」
「自分から来るとはね、ゲス朗」
「……」
■城内から出て来た二人の前に■
■目的のロボットが現れた■
「お前たち、何者だっ。連盟の刺客か!?」
彼は壁の上を飛行し、会場の大きな門の前に降り立った。
そのダメージはほとんど回復し、支障なく動けるLEVEL。
ベルンたちは驚く。
「クク、おれには超絶回復機能が備わっているんだ。生半可な攻撃じゃ無駄だ!」
「……なんですって?」
「どうせハッタリでしょうっ」
そうは言いながらも、二人は警戒を強めたのだった。
本当にそんな機能があるならばと、会場内のロボットをカメ朗の周囲に集める。
「一斉に攻撃を仕掛けなさい! 一瞬でスクラップよ!」
「了解シマシタ」
■ロボットたちはビーム兵器を構え■
■一斉に撃ち放った■
【カメ朗様――】
「ばりああああああッ!!」
■カメ朗の咆哮■
■全方位に展開されたバリアが、十数のビームを防いだ!■
「ぬぐうううう!!」
「そんな!?」
「ビーム兵器をッ!?」
ぶつかり合うビームとバリア!
その勢いはすさまじく、強烈な光と爆音を発生させ、会場の床を焼き砕いていく。
あらゆる方向から放たれたビームだが、カメ朗はタイミングをばっちりと合わせ、バリアによる防御を成功させた。
(ロボットだからこそ、その動きに乱れはなく、故に読みやすい!)
成功したことによるどや顔を披露しながら、その視線をバリアの向こうにいる二人に向けた。
両者ともに、最強兵器のビームが防がれた事実に驚愕しているようだ。
【あのロボットは、「フェイクⅡ」と呼ばれるものです】
■ある少女の助言が、カメ朗に奇跡を起こした■
【フェイクⅠの改良型で……その装甲は、性質を自在に変化させることが可能! 黒い装甲時には、あらゆる物理攻撃を半減! ですが熱に対する耐性は低くなり、太陽剣なら容易くスライスですわ! ですが個人的にはフェイクⅠの方が好きでして、それは何故かというと、まず外見のアーム部分が――】
■あそこまで眠たくなったのは、前世時・小3の時の全校集会の挨拶以来かもしれない彼■
■とりあえず彼女を抱きしめた後に頭を撫で、存分に愛でることでなんとか長話を中断させた!■
【はぅ……カメ朗様、大胆です。……フェイクⅡのビーム兵器使用時には、その目をよく見ることです】
■だが、中には助かる情報もあったのだ■
(ジゼルの言った通り、青い瞳部分が僅かに光った!)
彼女の言ったことを頼りに防御を成功させたカメ朗は、全てのビームを防ぎ切った。
その結果に慌てる敵の顔を見て、少し得意気になったりもするが。
(まずいな、けっこうエネルギー使ったっ)
最大防御を全面に展開したため、消耗はかなりのものだったようだ。
ジゼルの応急処置によって損傷は回復したが、エネルギーまでは回復していない。
カメ朗にとって長期戦や多人数戦は不得意な分野だ。
(なのに、まだかなり残っているなっ)
■カメ朗の周囲にいるロボットの数は、三十体以上■
「むぐぐ、まさか誘われたっ」
カメ朗にビーム兵器を全て防がれたことで、とても悔しそうなベルン。
連盟の幹部を撃破したカメ朗討伐に備え、上司から借り受けたロボットを使っても倒せないことに焦る。
カイルはそんな彼女を窘める。
「安心しなさいな。カメ朗は持久戦に不向き、じわじわと攻撃を仕掛けましょう」
「そ、そうね。恐れることないわ! あんな奴! ふ、ふふ!」
相棒の言葉で元気を取り戻したベルンは、己の周囲に魔導を発動させた。
風の魔導による防御だ。
カメ朗の連射銃では弾かれるだろう。
「さあ、スクラップにしてやりなさい!」
「了解、ゲス朗排除スル」
「ゲス朗!?」
■殴り掛かって来る多数のロボ!■
「うおおお!?」
さすがに大量のロボ相手では厳しく、全力駆動で対応する。
機体スペックだけならカメ朗の方が上のようだが、多勢に無勢。
「ぬおおおお! きつい!」
「ゲス朗排除」
「女ノ敵、最悪ノ外道!」
「精神的にもきついっ! ひどいこと言わないで!」
なんかとんでもない偏見をインプットされてそうなロボットたちに、不安になる。
それだけなら偏見でもないのだが。
カメ朗はどう見ても劣勢。
「あははは! 大したことないわねっ、カメ朗ゥ!!」
■調子に乗っているベルン■
■しかし■
「!?」
■背後からの攻撃によって、咄嗟に振り向いた■
「な、なッ!?」
「やりますね、仕留めそこなった」
鋭い斬撃を曲刀で防いだベルンと、不意打ちを行ったメイド長。
ベルンの危機にフォローしようと動くカイルは、短銃型の魔導具を出現させた。
引き金を引こうとした瞬間、背中に大きな衝撃を受ける。
「ぐふっ!?」
スキルによってダメージを軽減させたが、それでもこの威力。
相当な実力者の攻撃だと判断した。
「――謝罪します。カイル」
氷の壁上。そこで大きな銃を構える狙撃手。
銀髪の麗人は、自分たちの作戦が上手く行ったことを確信。
「カメ朗が引き付けている隙に、地下の通路を通って城内に移動……警戒の薄くなったそこから広場へ侵入」
■そして■
「うおおおお!!」
「助太刀するぜ、カメの旦那!!」
■見張りのロボを破壊し■
■解放された客たちが反旗を翻す!■
「よくもやってくれたな! ロボットども!!」
「さっきは油断した!!」
「色仕掛けとは卑怯な!!」
ロボットを撃破したことによって解放された強力な就職者たちが、ロボット軍団と激突する。
次々に魔導具や魔導を使い、ロボットの強固なボディを破壊していく彼等。
数の上では上回っている。
そしてロボットの動きもぎこちない。
「ばかな、おされているなんてっ」
「ふん、気に入りませんが、旦那様の作戦は成功ですね」
「なんですって……っ、この状況は作戦だというのっ」
■カメ朗がバリアでビーム兵器を使わせたのは■
■あれが連続使用できないものだと気づいたため■
■自分を追いかけて来た際にビームを使わないので、弱点を知ることができた■
メイド長と切り結ぶベルンはかなり焦っている様子だ。
切り札として用意していた軍団の劣勢に、冷や汗を流してしまう。
それに比べてメイド長は、いつもの厳格な態度を取り戻していた。
あのゲス兄がいなければこんなものと、彼女は語るだろう。
「ま、まずいわっ。このままではっ」
「?」
「我らが主が怒ってしまうっ」
その様子はメイド長から見れば不可解なもので、ベルンの目はここにいない誰かを恐れているようだった。
曲刀を振るう手には余計な力が入り、その太刀筋は読みやすくなっている。
メイド長相手にそれはアウトだ。
「隙があり過ぎます! なめないでもらいましょうか!」
「きゃっ!?」
■メイド長の強烈な斬撃が■
■ベルンの曲刀を弾き飛ばした!■
「調子にのるなぁっ!」
「!」
「幻惑◆剣豪◆踏破ぁ!!」
ベルンは魔導を発動させた。
メイド長の視界に入った彼女の姿が、朧げな気配を纏う。
彼女は一瞬動揺するが、冷静にベルンのステータスを確認する。
(ステータスがないっ、つまりこれは……! 幻覚!)
■メイド長が気づいた時■
■曲刀は背後から迫っていた!■
「そんな――!」
■驚愕したのはベルン!■
「背後からの不意打ちを、見ないで受けるなんてっ」
「……」
彼女の言葉は正しく、メイド長は振り返りもせずに曲刀を受けていた。
まるで後ろに目があるかのような対応だ。
ベルンは慌てて離れ、メイド長を最大限に警戒するのだった。
「ど、どういうことなのっ。あなた一体」
「私に不意打ちは効きません。伊達に館の守護を任されてはいませんので!」
「館の守護……? あなたまさか……!」
メイド長の顔と装備をじっくりと見たベルンが、あることに気づく。
それは、異世界競技と呼ばれる戦いで名を馳せた一人の女性の名だ。
「まさか! 守護者:ネル・サンダー!?」
「……ふふ、懐かしい名前……」
「かつて女性だけの守護者集団・【色香の盾】を率いていた、伝説的な守護者! ある日行方を眩ませたというけれど、まさかこんなところにっ」
とても驚いた様子でネルを警戒するベルン。
昔はすごい就職者だったらしいメイド長に、恐れをなしている様子だ。
メイド長は真面目な態度を崩さず、相手の動きを見定める。
「だから何だというんですか? 今の勝負に関係……」
「サインください! ファンなんです!」
「え?」
いきなり意味の分からないことを言われたメイド長は、ベルンの瞳が輝いていることに気づいた。
ファンとは聞き間違いかと思ったが。
「きらきら」
「え、ええっ!?」
どう見てもただのファンだ。
さすがに混乱してしまう。刀の殺気が僅かに鈍る。
「あ、あの、失踪の原因は更なる高みを目指す為って噂! 本当なんですか!?」
「は?」
「そうなんですよね!? きらきらきら!!」
かつて行方を眩ませた理由について聞かれた。
そんなこと言われても、理由なんて……。
思い返される忌まわしい過去。
【妹ぉおおおお!!】
【もういや! 家出する!】
「そ、そうとも言うかもしれないわね……」
「やっぱり! かっこいい!」




