お見通しッ!?
「うおりゃあああ!!」
「うあッ!?」
■ステージ上でコレットを取り押さえるカメ朗■
(いまのおれ、ドラマの刑事みたいでかっこいい!!)
■そんなことを考えるが、コレットはわりと大人しい■
「ここまでですね。残念」
「む、随分と潔くないか?」
「別にそんなことないですよ」
「あやしいぞ、とてつもなく!」
じたばたと抵抗されるかと思っていたカメ朗は、その彼女の態度にいぶかしむ。
なにを考えてこんな凶行におよんだというのか。
主人としてメイドの尻ぬぐいはせねばならんと、とりあえず彼女を城の中に連行した。
「……さあ、お前の弁解を聞こうじゃないか」
「弁解もなにも、アピールしただけですが?」
「うそをつくなっ、あんなことをしでかしておいて……!」
少年の夢を砕くものは許せない!
そんな強い想いが彼の行動を強めているのかもしれない!
■テーブルをはさんで座る二人■
(氷の城なのに寒くないな!)
■魔導の不思議を改めて実感するカメ朗■
「で、本当に動機はなんなんだ?」
「……」
「お父さん知ってるよ、お前がこんなことをする奴じゃないってYO!」
「保護者面はアウトです。百歩譲って、鬼畜最低教師枠です」
「せめて熱血教師にしてッ!?」
あまりな塩対応に悲しくなったカメ朗。
いままで結構世話を焼いてきたような感じがなくもないというのに、冷たいことだと世知辛さを味わう。
それでも愛するメイドには違いないと、保護者面は止めない。
コレットは顔を思い切りしかめた。
「ふうう、あのなぁ。おれも暇じゃないんだよな、審査員なんだよ。お前の銃弾のせいで参加者は寝てしまったし……」
「そうなんですか、大変ですね」
「そうそう大変なんだよなー、なかなか皆かわいくてさ……ぐふふのふ」
「やはりゲス……」
「え?」
「いえ、なんでも」
氷のテーブルに置かれた紙コップのストローをくわえながら、コレットは己の主人にジト目を向けた。
なんだかこの前の事件でよそよそしくなった気がする彼女。
「……まあ、ほら。お前の性格上いやがるのは分かるが……」
「ふん、なんだかこの会場にはハレンチな雰囲気がします」
「ハレンチ……それは誤解だYO。地区長はみんなの夢を形にしているだけさ」
ジト目を強めるコレットだが、カメ朗の言うことを否定はしない。
となると妨害の意思は確かだったということだ。
「……コレット、メイド長は元気か?」
「!!?」
椅子から転がり落ちそうなほどに動揺を見せる彼女。
カメ朗は己の推測が間違っていないことを確信した。
目を白黒させるコレットに追い打ちをかける。
「メイド長と……一緒に家で待機していたはずだよな。んんん?」
「……!」
「しかし何故かここにいる……メイド長の目を盗んで……? 否だ」
「な、なぜそういいきれるのです」
「証拠はこれだ」
そういうとカメ朗は自分の腹を押さえた。
さっきコレットによって狙撃を受けた部分だ。
彼の仕草を見たことで、コレットはあることに気づく。
「その通り……本来、お前たち捕虜の主人に対する攻撃は封じられている」
「……」
「なのにそれを行うことができた! それはなぜかってことだYO」
カメ朗は目を瞑り、やたらともったいつけて答えを保留する。
早く言えと、コレットは純粋に思った。
「んんん!! つまり!! おれへの攻撃命令を指示できる存在!! おれと同等の権利を貸してある……メイド長が関与しているってことだ!!」
■人差し指をコレットに突きつけるカメ朗■
■テレビで見て、やりたかったポーズである■
「なんで、そんなに大仰なんです?」
■冷ややかな目でコレットは見ている■
「悲しい事件だった……きっと、俺が館にいなくて寂しかったんだな……」
「HA?」
「動機も当然、お見通しだYO」
■最後の最後で思い切り推理を外す、カメ朗なのであった■
「メイド長はなんと?」
「……」
「答えたくないのか……ふむ」
「黙秘します」
コレットに対する取り調べは続き、どうしたものかとカメ朗は思案。
お仕置きするぞということも可能だが、それをするとメイド長にお仕置きされてしまう可能性はある。
さすがにそれは可哀そうかもしれないので躊躇うのだ。
(メイド長は地区長に関する愚痴を言っていた……なにかしらの因縁があるのかもしれない)
メイド長と地区長。
接点があるなんて聞いたことはなかったが、同じ地区に住んでいるのならあってもおかしくない。
もしや昔カップルだったとか……そんな妄想が頭を過った。
しかし、どう考えてもあの地区長とは水と油並の相性の悪さを感じるため、カメ朗はそれを否定する。
(……だが、因縁は間違いなくあるなっ)
大した理由もなくメイド長はトラブルを起こすタイプではなく、ならば大した理由はあるのだろうとカメ朗思う。
彼としては地区長に肩入れしたくなるが、メイド長も愛すべきメイドの一人。
はたしてどうするべきかと頭を悩ませた。
(メイド長はかなりの常識人(身内内では)だ、となると、地区長の行動を誤解しているのかもなぁ。少年を助ける素晴らしい人なのになぁ)
たしかに誤解されるかもしれないイベントかもしれないが、地区長の素晴らしい理念を知れば、きっと仲良く出来るはず。
そう信じたカメ朗は和解の道を探る。
「ふふ、メイド長に貸しをつくるのも悪くない」
【旦那様は本当に最低ですね……】
「んっふっふ」
メイド長のきりりとした目で蔑まれることを想像して、カメ朗は不覚にも興奮した。
あのコレットとはまた違ったクールな態度は、普通に美女な彼女と相性抜群なのだ。
しかし今回は称賛されたいと思ったので。
「まずは話し合おうじゃないかぁ。メイド長は何処に」
「館にはいないとだけ言っておきます」
「館には……か」
コレットの言葉は答えを言っているに等しい。
つまり、メイド長は会場内に潜んでいるということ。
どうにか彼女を探し出し、話し合いの機会を作りたいカメ朗。
「サポート通信で連絡するか……」
「無駄ですよ。着信拒否していますので」
「ぐ」
カメ朗の策は一瞬で崩れる。
いきなり窮地に追い込まれてしまうが、クールに対応するよう頑張った。
「ふーむむ、となると」
「あ、おかわりお願いします」
「共犯者とは思えないな。コレットよ」
「ごくごく」
ジュースをおかわりしているコレットは余裕がある。
カメ朗如きに、メイド長を捕まえるのは不可能と考えているのだろう。
「ま、そうやっていろよ……!」
■カメ朗の捜査が開始!■
「カメ朗殿。災難でしたな……」
「地区長、すいません。必ず犯人は見つけてみせますっ」
「ほほほ、頼もしいですな。期待していますぞ」
コレットと共に捜査を開始したカメ朗は、城内入口で外の様子を伺っている。
会場内はさきほどの喧騒も治まり、それなりに楽し気な雰囲気が戻ってきていた。
寝ていた人たちも目を覚まし、パーティーはまた再開されている。
「……メイド長とは」
「知り合いなんですか?」
「ほほ、昔ね……」
遠い目で過去を思い返している地区長。
どうやらかなり深い事情がありそうだと、カメ朗は思った。
「それで、コレットにも捜査を手伝わせたいんですが」
「ふむふむ」
「少しお願いが――」
■数分後……■
「あやしいやつ? 見てないな」
「そうか、ありがとう」
「それは良いんだけどよ。後ろの彼女は……」
聞き込みを行うカメ朗は、参加者の男性にそう言われた。
男性が指さした場所はカメ朗の背後。
そこには、捜査助手であるコレットが立っていた。
「ミニスカサンタ助手さ。写真撮影OKだ!」
「まじ!?」
■顔を真っ赤に染めたコレットが■
■もじもじしていた■
■襲撃の罰である!■




