表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/49

ファーストキス防衛戦ッ!!

「これだ!!」


「なんですかぁ!? 今度は何をッ!?」


「ちがうって!! これよこれッ!!」


 何やら嬉しそうなカメ朗の声に、さらなる変態行為を受けることを恐れてしまうコレット。

 だがカメ朗はそんなことをしようとしているわけではない。


「受け取れ!!」


「こ、これはっ!?」


 カメ朗から渡されようとしているのは、炭酸系のジュース入りのペットボトル。

 頬に感じる感触はたしかなキンキンさを彼女に伝えた。


「ひ、冷えている!?」


「おれの甲羅は、保冷機能つきなんでね」


「便利ですね!?」


「へへ」


 やたらと得意げなカメ朗に少しいらっとしたが、コレットは構わずそれを受け取った。

 あまりの渇きに我慢は出来ない。

 幸い、受け取る程度の動きなら問題ないようだ。


「!!」


 その時、彼の右手が視界に入った。

 かなり破損しているその様は、無理してコタツの力に逆らったからだろう。

 例えカメ朗といえども無事に済む筈はない。


「ふ、気にすんなよ」


「……」


 むだに格好つけた言い方がなければ、もっと格好いいのにと思ったが、彼女は感謝する。

 それほどに喉を潤したい欲求があったのだ。

 慌てた様子でキャップを開けて、ジュースを勢いよく飲む。


「ごくごく!!」


「おい、落ち着いて飲めよ!」


「ぷはー!」


「おっさんみたいだな!」


 見ていて清々しいほどの飲みっぷりに感心するカメ朗。

 一気にジュースはなくなった。

 そこまで美味しそうに飲まれると、用意した彼も嬉しいというものだ。


「……ありがとうございました」


「紳士として当然だYO」


「……はぁ。つねにこんな感じで、むだ口がなければ本当にかわいいんですけどね」


「かわいいかわいいって……そんなにおれはキュートなマスコットに見えるか?」


「ええはい。正直いいますと、見た目だけならすごい好みです」


 本気なのか冗談なのか分からない言葉だが、コレットの両手はさりげなくカメ朗の頭をなでていた。どうやら口を開かなければふつうに好感度は高そうだ。

 

「……もう、こうなったら仕方ないですかね」

 そうして彼女はある覚悟を決めた。

 当然、10分以上の思考時間があったが。


「……いいですよ」


「なに?」


「ですから、右手の位置をニュートラルに戻しても構いませんッ」


「!?」


 いきなり何を言い出すのかと思ったカメ朗は、左手を額に移動させようとするが、彼女の腰の位置に固定されている。

 熱でもあるのではという疑いは、コレット自身の言葉に否定された。


「ありませんよ! 右手の動きが制限されているようなので、仕方なくです! これ以上壊れたらいけないでしょう」


「!!」


「仕方なくですからね!」


「ツンデレ!」


「違うですからッ」


「またまたー! ふっふふ、おれの魅力はジゼル以外にも伝わるのか……」


■カメ朗のうざい態度に、コレットは辟易■


「とにかく、今の貴方の損傷具合を見て冷静に判断したまでです」


「まじか……本当に本当に、良いんだな!?」


「やるなら早く!」


「おう! いますぐやるぜー!!」


 めちゃくちゃ嬉しそうなカメ朗の右手が、コレットの右胸に重ねられる。

 メイド服の上からでもその感触は伝わってくる程度の接触で、気恥ずかしさとむず痒さによってコレットの顔は赤くなった。

 カメ朗の顔は。


「ふ……」


 意外なクールな表情。


(うひょおおおおお、公式・公認!! おっぱいタッチ!!)


 なんてことはなく気持ちの悪いにやけ顔であった。

 この顔をコレットが見ていたら、きっと許可を出したことを後悔していただろう。


(しかし、しかし、これは余計にきつい!?)


 自然な体勢になったことで、肉体に掛かる負荷は軽減された。

 しかし、精神的に掛かる負荷は増大している。

 ただ手が触れているだけで、その先にいくことを許可されていない状態。

 もっと感触をしっかりと味わいたくなるのは、強烈な誘惑の結果の当然!


「ふんはー! ふんはー!」


「!?」


 いきなりすごい力に引っ張られるコレット。

 一瞬にして体勢が変わり、カメ朗に押し倒されているような感じに!


「す、すごい力だ」


「あ、あぁあっ」


 向き合う二人。

 その顔が少しずつ接近していく。

 そのまま接近していけば、どうなるかは一目瞭然。


(え、私カメにファーストキスを――?)


 大きくなってくるカメ朗の唇を呆然と眺めながら、コレットは半ば現実逃避していた。

 叫び出す10秒前。


「ふほおおお!!」


「いやですうううう!? 絶対、イヤ!!」


「おれだってイヤだ!!(やったぜええええ!!)」


「嘘をつかないでください!? なにそのにやけ面!」


 あと10cmもないほどの距離にまで接近した二人の顔。

 コレットはファーストキスを奪われるかもしれない恐怖で、涙目である。

 カメ朗は嬉しそうであるが、それはそれとして何とか抵抗はするが。


(踏ん張れ!! ここが最後の理性と欲望の戦いじゃーい!!)


■理性は死力を尽くした!■


「ま、まだ戦えるッ」


「ふん、死にぞこないめ……」


「くっ」


 壁上で倒れた理性軍指揮官に、銃を突きつける欲望軍指揮官。

 血まみれでも紳士として最後まで戦い抜くと、彼は心に固く誓ったのだ!


「絶対に……屈しないYO!!」


 通信教育で覚えた空手・柔道・その他もろもろを駆使して、理性のカメ朗は最後の輝きを見せる。

 その動きは妄想の通りのもので、黒帯すらぎりぎり行けそうかもしれない領域。

 拳や蹴りがなんか結構鋭いっぽい感じである。

 

「勝つ、紳士は!!」


■欲望のカメ朗に突撃する!■


「唇、やわらかいだろうなぁ」


「!」


「今なら、ジゼルの発明品のせいにできるかも」


「ぐわああああ!?」


■触れることすら出来ずに吹き飛ばされた理性■

■欲望に勝つことは最初から無理!■


「ぬぐううううッ」


「か、カメ朗……?」


「ごめん」


「なにが!? あやまらないでください!! 諦めないで!!」


「いや、結構これきつくてさッ」


 すさまじい圧力がカメ朗の背中に圧し掛かっている。

 それを踏ん張っているカメ朗は、普通にすごいやつである。

 しかし、顔は少しずつだが確実に接近していく。


「お、ふ……」


「わわわ……ッ」


「ぐ、おおお」


 このままではファーストキスを奪われるが、コレットはタイミング悪く切り札の魔導を切らしていた。

 というか、前の雪合戦大会の死闘のせいである。

 彼女が使う運命操作魔導は一般に流通していない為、一度切れると補充が難しいのだ。


「ど、どどどどッ」


 どうしようと慌てふためくコレット。

 涙目でカメ朗の顔を見ていることしかできない状態は、彼女を軽いパニック状態にした。

 このままでは、若干嬉しそうな変態ガメに唇を奪われると。


「ううう……」


「ようやく観念したかッ。じゃなくて、諦めちゃだめだYO!!」


「本音はそっちですか……ッ」


「誤解、、まちがっただけだYO!!」


「……」


 白い目で見るコレットは、だんだんと諦めの気持ちが湧いてくる。

 こうなってはもうどうすることも出来ないと。


「……」


「コレット、目をつぶって……ッ!?」


 せめてカメ朗の気色の悪いにやけ顔を見ないようにしようと、彼女は目をつぶった。

 それはもうキスの準備態勢といってもいい感じだ。

 

「ふ……そうか、覚悟を決めたか」


 カメ朗はその気持ちに応える感じで、やたらと格好いい声のトーン。

 真剣な顔で引力のままに顔を近づけていく。


(いやっほおおおおおおいッ!!)

(喜ぶな!! 最低だぞ!!)

(うるさい!! かっこうつけるな!!)


■心は葛藤の嵐!■


「どきどきッ」


「……ッ」


「わくわくッ」


■そして■

■――二人の唇が■




「カメ朗様!!」

「HA?」


■あと二センチというところで、ジゼルの声が聞こえた■

■光が射し込み、こたつの熱は失せ、カメ朗達を縛る圧力も消えた■


「あ!? なにをやっていますのッ!!」


 コタツをのぞくジゼルの嫉妬の声。

 今にもキスしそうな二人にぷんぷんである。


「いや、これはッ」


「ストップ」


「ごあ!?」


 どさくさに紛れてキスしようとしたカメ朗の顔が掴まれる。

 自由が戻ったコレットの右手で。

 

「なんでまだ顔を近づけようとしたのか、聞かせてもらえますか」


「えっと、それは……」


「有罪。時間が掛かり過ぎです」


「……ゆるせ、ペットボトルに免じて!」


「ゆるしません。断罪」


■判決は下された!■


「どわあああっ!?」


■銃撃音と共に、カメ朗は廊下へと弾き飛ばされる■


「く、くそっ。さっきのことが夢のよう……」


 床に転がる彼は、コタツ内での思い出を高速反芻する。

 しっかりと忘れないように脳へと刻みつけた。


「か、カメ朗様っ。大丈夫ですの!?」


「大丈夫ではありません。でした。貴方の発明品のせいで」


「!?」


 コレットは全身から怒りの波動を放出しながら、ジゼルへ説教の構えを見せる。

 はた迷惑な発明品の創造主は冷や汗を流す。


「まったくもう——今日は散々です!」


■二人の主に対する不満を口にするコレット■

■声色にはほんの少しだけ、なんだかんだで結構我慢したカメ朗への感謝があった……ような?■

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=969367407&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ