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理性の防衛ッ!!

■カメ朗たちがコタツ内に引きずり込まれて、数分後……■

■ジゼルとメイド長が居間に入ってきた■


「だれもいませんね。さぼりやがってるのでしょうか?」


「カメ朗様、どこにいったのかしら?」 

 

 カメ朗に譲った発明品が放置されているのを見て、ジゼルは不思議に思った。

 あんなにコタツを欲していたのに、外に遊びに行ってしまったのか?

 もしかしたら昼食の前のおやつをゲットする為、隣の調理室に向かったのかもしれない。


「昼食の準備もしなくてはならないし、調理室に向かいましょうか」


「……ですわね。今日はわたくしも手伝いますわ!」


「お嬢様っ。なんとお優しいっ」


「ふふふ、(つまみ食いを)任せて」


■異常に気付くこともなく、彼女たちは部屋を後にした■


(なかよくヌクヌクコタツに入ろう君……まだ未完成ですが、いずれカメ朗様とぬくぬくライフを!)


■ジゼルはカメ朗とのイチャイチャを夢見て微笑む■

■自分が発明した物が、誤作動を起こしてしまったことを知ることなく■


「……はぁああ、なんという拷問だッ」


「同感ですよ……本当にッ」


 絡み合う男女二人のため息が、薄暗いコタツの中に響く。

 カメ朗がコレットを背中側から抱き締めるような体勢。

 さらに加えて、コタツ内部の熱のせいでかなり熱く、どんどん体力が消耗していってるような気がする。


(まあ、おれは熱耐性を持っているんですがね!)


■カメ朗の機能の一つ■

■熱に対する耐性スキル!■


(なんて言っても、あくまでロボットとしての機能であって、本当のスキルではないけどな!)


 同様に異常な寒さに対する耐性もあるため、防御面に関してはかなりのものといえた。

 コレットの方はどうかというと。


「あ、あついっ」


「……」


 そんなことを呟く様子を見るに、どうやらそっちの耐性はないようだ。

 そもそも、強力な耐性にはデメリットが存在するものなのだから。


「そういえば、お前の職業は【砲撃手】だったな」


「……それが何か?」


「いや別に(なら、熱に対する耐性スキルはないか)」


 砲撃手は狙撃関係のスキルに特化した職業。

 耐性系のスキルには恵まれておらず、このような状況はきついだろう。


「砲撃手って、熱に対するスキルはあるのか?」


「ありませんよ……、電撃系統などだけです」


「ほうほう」


 スキルは基本的に職業のLEVELが上がることで覚えられるが、何らかの魔導具などを使ったりして覚えることも可能。

 さらにそれを装備するかどうかも任意である。スキルコストというものがある為、全てのスキルを装備できるわけではない。

 以前の採用面接(という名の尋問)では、ほぼすべてのスキルを狙撃系で固めているため、防御は同レベルの砲撃手に比べて劣ると言っていた。


「防御など必要ないです。遠くから、圧倒的な狙撃で仕留めれば完璧ですから」


「いやー、もしかしたら接近されるかも」


「あり得ません、私は完璧ですから」


「……」


 以前、カメ朗達に接近されて敗北したことを忘却してしまったのだろうか?

 わりとこのメイドはしっかりしてないなというのが、最近のカメ朗の印象であった。

 実際はまるでしっかりしていないのだが。


「そうか、ならその完璧なメイドさんに聞きたいな」


「なにを?」


「この状況から脱する方法!」


「……」

 

 そんなの私が聞きたいんですが?

 無言の数秒は、そんな風な空耳をカメ朗に届けた。


「ご主人様、あれは?」


「あれ?」


「ほら、ロボットにはありがちな、押すとどっかーんってなるやつ」


「自爆して死ねってかッ!?」


 自爆することを期待するコレット。

 そうなれば少なくともカメ朗の気色の悪い感触からは脱却できると、彼女は考えている模様。

 カメ朗は憤慨である!


「ないんですか……もう使えませんね。外見がかわいいだけのカメちゃんじゃないですかぁ」


「なッ」


 明らかに呆れた風のコレット。

 一応は主人に対しての無礼な態度に、カメ朗は邪な感情を強める。


(おっぱい揉んだろうか……この生意気メイドめっ)


 冗談のようにそう考えたが、もしかしたら本当にそうするべきかと思う。

 この状況でなら、ジゼルの発明品のせいにして色々しても許されるのではないか?


(おれの右手は胸の下)


 少しでも動かせばそこには夢の山。

 そこに山があるのなら、登らねばならんのではないか己よ?


(いかん、理性が壊れそう……! よせ、それは紳士として悪しき行いだ! 越えてはならない一線があるッ)


 自身の頭に浮かぶ誘惑を振り切るカメ朗。

 108もあるという煩悩を必死な想いで迎撃し、紳士としての最低ラインを死守しようとしていた。


(一線の先には行けないのさっ)


■紳士としての想いを強く持つカメ朗!■

■もしメイド長がそれを知れば■


「まだ、越えていないつもりだったのですか……」

 

■なんて言ったことだろう■


「むはー、ふはー、どはー」


「ちょ、なんですッ!?」


「ふふふ、なんでもないさー、安心しろさー」


「テンションおかしいっ、いやですよ止めてくださいよッ」


 カメ朗の理性が壊れかけていることを察したコレットは、顔を青く染めていく。

 早くここから脱出しなければ、自分の大切なものが奪われかねないと恐怖した。

 実際、さきほどよりもカメ朗の息が荒れている様な気がする。


「ふはー、ふはー、いかんわこれー」


「!?」


「すこしだけ、少しだけなら……」


「!?」


 カメ朗の言葉はやたらと恐ろしく聞こえてしまう彼女。

 だからといって下手に暴れれば、余計に絡み合う結果になりかねない。

 何も出来ずに彼等はそこにいるのだった。


「な、なにか、ここから抜け出せる機能とかないんです?」


「うーむ、あるにはあるが使えなくなってるな」


「なんて役立たずっ」


「ストレート過ぎないッ!? もうすこしオブラートを使おうぜ!」


 コタツのなかで漫才を繰り広げる二人。

 まだ余裕はありそうだが、コレットの方はそうでもない。

 耐性のない彼女は順調に疲れていた。

 汗が止まらず、このままではかなり危険に見える。


(ごくり……)


 違う意味で危険なのがカメ朗。

 さすがにコレットの様な美少女と30分以上も密着しているのは、男として色々とヤバい状態だ。

 理性の壁はどんどんと侵略され、迫りくる本能軍に攻め落とされようとしていた。

 防戦しようとする理性軍は何とか奮起する。


「くそ、ここだけは何とか死守せねば!」


「本能に負けるような紳士はいないYO!」


「HAHAHA!無駄な抵抗を!!」

「欲望こそが己に相応しい!」

「気取ってるんじゃないぜ!!」


■すさまじい激戦である■


「ほはー!」


「やめてください!?」


 やたらと怪しい息を吐くカメ朗に突っ込むコレットは、涙目である。

 カメ朗はぎりぎりで手を動かさないまま。

 勝てるかもしれない、そんな考えが頭を過る。


「やれるぞ!」


「カメ朗は紳士!」


「美少女を汚すような真似はせんのだ!!」


 理性の壁上で歓喜の声を上げる、カメ朗理性軍。

 彼等はこの激戦の勝利を思い浮かべた。


「ぐは!?」


「なにッ!?」


「!?」


 その時、理性軍の指揮官が背後から刺された。

 なんということだろうか!

 理性軍の裏切者が邪悪な笑みを浮かべた! 彼はすさまじい速度で攻撃を繰り出し、味方を殲滅していく。


「もう取り繕うのはよせ……楽になろうや」


「ちくしょう……悔しい、本当に悔しいなぁ!!」


■理性軍は敗北した■


(よし、揉もう!)


■カメ朗は暴走開始!■


(右手の力を抜き、その引力の思うままに!!)


 実は今まで胸に触れないように地味に抵抗を続けていたのだが、とうとうその我慢は砕かれた。

 彼の右手が山を登ろうと——。


「ハァ……ハァ……」


 コレットの苦しそうな息遣いが聞こえて来た。

 流石に長時間熱を受けてしまったら、精神的にもきついところがあるだろう。


「ぬおおおおッ」


 カメ朗の良心が右手を制止し、それが進む先を変更した。

 そう逆に、コレットの下半身へと。


「ひゃあ!?」


 コレットの右ふとももを直にさすってしまう右手。よく見ると、彼女はパジャマの下をはいてないスタイル。

 そのムチムチな手触りに思わずにっこりカメ朗君。さすがの美脚である。


「うぅぅううう!!」


(まずい、なんか誤解されている!?)


「よくも……よくもぉ」


 泣いている様子のコレットに、罪悪感マックスなカメ朗。

 どうしたものかと考えて。


「そうだ、そういえば!」


■あることを思いつき、甲羅に手を伸ばすカメ朗■


「ぬぬぬッ!!」


■すさまじい引力に抵抗する右手■

■それでもカメ朗は、全力で踏ん張った■


「ひゃああ!? さすらないでくださいっ!! けだもの!!」


■その反動なのか、左手がコレットの腰のあたりをさすりまくっていた!■

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