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美脚の狙撃手ッ!!

(連盟でのおれって、どうなってんだ?)


 敵組織における自分のイメージがとてつもない変態野郎になっているのではと、憤慨を抱くカメ朗。

 なんという酷い偏見であろうかと、悲しくもなってしまう。

 彼なりに捕虜に対しては優しく接してきたつもりであった。


(三食をきちんと提供しているし、寝床もしっかりとしたものだ! 命を狙ってきた刺客に対して何て紳士! 素敵!)


 などと言われることも仄かに期待していたカメ朗の願いは、空しく打ち砕かれた!

 こんなにも悲しい話があるのだろうか!?

 と、彼は嘆いた。


「……そもそもなんで、お前たちはおれを狙うんだ!」


「……」


「魔導を研究するのと何か関係あるのかよっ、ロボットだぞッ!」


「……」


 カメ朗の叫びに無言のコレット。

 答える気はなさそうに見える。

 目を少しも逸らさず、カメ朗を警戒しているのだ。


「……とにかく、貴方をここで倒して回収します。そして、鬼畜外道に囚われた彼女たちを救出……完璧な流れですね」


「どこがだよっ、大体おれはソルジャーを信用できないからそうしているんだっ」


「……ほう?」


 カメ朗の言葉通り、彼等はソルジャーという組織を信用していない。

 というのも、あまりに連盟に対する捜査が適当だからだ。

 何回も襲撃事件を起こしているというのに、ソルジャーはあまり大魔導連盟に踏み込もうとしない。

 これは賄賂でも貰ってるんではないかと、カメ朗は名探偵の如き推理を披露してメイド長に鼻で笑われた。トラウマである。


「う、ううう……ッ」


「何故、いきなり泣いているんですか」


 いきなり男泣きを始めたカメ朗を普通に気色悪いと思い、コレットは一歩後退した。

 何気ない行動がさらにカメ朗を傷つける。


「――悪ふざけはこれぐらいにして、始末します」


■コレットの両手が赤く輝き■

■巨大な銃が出現した!!■


「うお!?」


「【インフィニティ・ルーレット】」


■その大きな銃口がカメ朗に向けられた!■


「バリアーッ!!」


 とっさにバリアを展開するカメ朗に放たれる、コレットの銃撃。

 それは、さっきと同じような雪玉による弾丸であるが。


「ごば!?」


 カメ朗は額に銃撃を受け大きく吹き飛ばされた。そのまま積雪に突っ込んで雪煙が舞う。

 ジゼルは呆然とその場に残される。無敵であるはずの夫の姿に、ショックを強く受けて立ち上がれなくなった。


「そ、そんな。カメ朗様の無敵のバリアがッ」


「ええ、そうでしょうね。あれは極めて恐ろしい防御。まともにやったら無敵でしょう。私に勝ち目はありません」


「ならなんでっ」


「単純な答えですよ。もはや余力がない」


「!?」


 コレットが言った言葉の意味を考えるジゼル。

 そうして彼女は答えが頭に浮かんだ。


「まさかエネルギー切れ!?」


「ご名答。優秀ですね」


「えへへ、そんなっ。それほどでもありますが……! あ、あなた如きに褒められてもうれしくなんてありませんわ!」


「ぐおおお、今のは効いたぞぉおおお」


 まるで三流悪役のような台詞を吐いて、カメ朗は立ち上がった。

 額は大きく砕かれ、バチバチと電気が漏れている。

 今まで見たことがないようなその姿に、ジゼルは口を押さえた。


「しぶとい。流石ですね」


「ふん、おれを舐めるなよっ。スーパーロボットだぞー! 超人である就職者の限界を超える存在だ!」


「……もうほとんどの機能を使えないくせに。【奥の手】とかありますか?」


「ぐっ……た、たしかに今の状態じゃ【アレ】は使えないが……!!」


 クールな目つきでカメ朗を見ているコレットは、機械的な動きで銃を向ける。

 どうやら彼女にとって立ち上がることは計算内のようで。鋭い目つきは仕留めると語っている。

 カメ朗はオイルを流しながら、弱弱しい目の光を点滅させていた。


「ですが、次の一撃で終わりですよ――」


■彼女の視界に映るのは、銃の上部モニターに表示された数字■

■それは【7】を示している■


(こたつにミカン、アイス……)


 頭の中で想像している理想郷を現実のものにするため、彼女はトリガーを容赦なく引いた。

 何の弾丸も装填されていない筈の銃から、雪の銃弾が超速度で発射される!


(ぬくぬくが私を待っている)


■今までの比ではない速度で、それはカメ朗に襲い掛かった!!■


(エネルギー残量――残り10パーセント以下――!)


 もう既に余力がないことを確認したカメ朗は、バリアを張るかを一瞬ためらった。

 ここで全力のバリアを使えば、おそらくほぼ全ての力を使ってしまうことになるだろう。

 やらねば壊される。

 やっても力尽きる。

 だが、どうせなら最後まで勝利を目指そうと決心。


「おおおおお!!」


 叫ぶカメ朗の左手からバリアが展開される。

 範囲は前方のみであるが、その代わり防御力は最大だ!

 迫りくる弾丸を迎え撃つ!!


(範囲を、狭くッ!!)


 極限までバリアを狭くすることで、最大の力を発揮できるようにする。

 本当にぎりぎりの大きさを保ったまま、コレットの銃撃を受け止める構え!

 少しでもずれたらアウトな防御方法!

 だが!!


「ジャスト!!」


■小さいバリアによって、弾丸を真正面から受け止めた!■


「ぐお――ッ!?」


■カメ朗の右半身に強烈な衝撃走る■

■何が起きたか分からない彼は、とうとう倒れ伏した■


「今のは……弾が分裂した……っ!?」


「バリアに当たった衝撃でですね。ラッキーです」


「そんな……ばかな……ッ」


■もうカメ朗は戦えない……■


「貴方の敗因は、エネルギーを雪合戦の中で使い過ぎたこと」


「くそ……」


「貴方の弱点は、長期戦が不得意なこと。捕虜を操って戦っているのが証拠……」


「ちい、おれの合理的で邪な考えなんてない戦略がばれちまったか……っ。たいした野郎だぜ……!」


 カメ朗の言葉に白い目を向けるジゼル。

 ジゼルは色々な彼の行為を見ているだけに、素直にその言葉を信じること出来ぬ。

 カメ朗は口笛を吹いて誤魔化そうとする。


「とにかくチェックメイトです。私は理想郷に早く帰還したい」


(理想郷? 本拠地のことかッ)


(こたつ、ぬくぬく。本拠地の部屋)


 なにかがずれた会話を展開しているが、カメ朗のピンチには変わりない。

 コレットはクールに獲物を見て、何かを考えているようだが隙はなし。

 その銃口を倒れたカメ朗の頭に向けている。


「とりあえず、機能停止にしておきましょうか。念のため」


「ッ!!」


「とにかくカメ朗のボディを持ち帰れという指令……でしたね。ジゼル氏もついでに捕えましょうか……」


「くそッ」


 コレットの言葉を聞いたジゼルが庇う為に動くが、カメ朗の言葉に止められる。

 必死で余裕のない声だ。それを聞いたジゼルは泣きそうになってしまう。


「よせッ、おれは……大丈夫だッ」


「強がりにしか聞こえませんが、なにか策でも?」


「……」


 敵に問われるカメ朗だが、どう見ても満身創痍である。

 このまま頭を打ち砕かれてスクラップになる運命が簡単に想像できてしまう。


「……そんなもん、ないッ」


「でしょうね。私の作戦は完璧です」


「……ッ」


 カメ朗は顔を歪ませ、ただ敗北の時を待つ状態。

 コレットは狙いを定めて、とどめの一撃を準備する。


■銃のモニターに映る複数の数字が縦回転を始め、やがて止まる■

■その数字は【4】を示す!■

■そしてトリガーが引かれ――■


「――策はない。おれにはなッ」


「!?」


■コレットの足元で、すさまじい電光が炸裂した!!■


「ななななッ!?」


 光に飲まれたコレットの体を貫く電撃!!

 その衝撃によって、周囲一帯が大きく吹き飛んだ!!


■柵は壊れ、積雪は蒸発し、地面は大きくへっこんだ!!■

■それはまさに、敵味方関係なく巻き込む大技!!■

■最強の自滅技である!!■


「……ジゼル……無事か……」


「は、はいッ。もしかして今のは……」


 最後のエネルギーを使い、緊急避難したカメ朗の背後にはジゼル。

 ジゼルは遠くにある人影を見て、疑問の答えを知った。


「ああ――うちのメイドだ」


■服が破けた(シックな黒いパンツとブラが露出!)青髪メイド美少女が、寒さに震えながら立っていた!!■



「さむいいいいいいッ!! あのクソご主人様ぁああああああッ、覚えてなさいよぉおおおおおおっ」

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