連盟の麗人たちッ!!
「――ほうほう、そのカメ朗とかいうやつに邪魔されたと」
「へえ、すいやせんっ」
「うんまあ、仕方ないな~」
■とても豪奢な広い部屋■
■そこに立つ盗賊の男と■
■柔らかそうなソファーに座る、金髪ロングの美少女■
「ボクが動いていればきっと対処できたし。君たちに任せた責任もあるしね」
「は、はぁ」
「でも、制裁は受けてもらうよ」
「へ?」
窓からの光に照らされた美少女は、人差し指を盗賊の男に向けた。
男は動揺した様子を見せる。
「な、なんでだよっ。許す流れだったろ今の!」
「だってそういう契約でしょう? 戦闘能力に乏しいお嬢一人捕まえられないんだし~」
「ッ」
男は汗を流す。
金髪少女はにこやかな笑顔で、魔導を放とうとする。
「そんな簡単にやられるかよッ」
■即座に動いた盗賊男■
■何もない場所から、鋭いナイフを取り出した■
■魔導を利用して作成された、魔導具である■
「ほああああああッ!!」
■魔導具によって強化された【ステータス】■
■男は全力で斬りかかる!!■
「やっぱり間違いだなー」
■少女は人差し指を■
■軽く動かした■
「どわあああああああッ!?」
■室内に響く絶叫■
「――どうかしましたか。シエル」
「うーんん? なんでもないよー。コレットー」
■同時に入って来るのは、銀髪ポニテの少女■
■チャイナドレスのようなものを着て、スリットからは美しい足が見える■
「ただ、使えないのを片付けただけだからー」
室内にさっきまでいた筈の男の姿は消えていた。
彼が着ていた衣服はしっかりと残され、それが存在証明となる。
「ああ。そういうことですか。所詮はアルバイトレベルの【就職者】でしたね」
「そうそう。魂の管理はよろしくねー」
「ええ、蘇生はさせませんとも」
■それなりに仲が良さそうな二人■
■彼女たちは■
「【連盟】の名に懸けて――」
■魔導を信望・研究する組織■
■大魔導連盟のメンバーである■
「……フン、それでわたしにそいつを処理してほしいと言うことね」
■そして、部屋の隅に立っていたフード姿の女性が言う■
「そうだよ~頼んだねリリ。油断しないでね~」
「フフフ……一体だれに向かってそんなことを言っているのでしょうか? わたしの【計画】は完璧ですとも」
「ああうん……まあ、期待してるよ~。くれぐれも捕まったりしないでねぇ? 敵はこちらの情報を欲している筈だし~、捕虜になったら何をされるか分からないよ~」
シエルの忠告に対し、何を馬鹿らしいとばかりに鼻を鳴らすリリと呼ばれた少女。その反応には彼女のプライドの高さが表れていた。
コレットは若干だが顔をしかめている。
リリはそのまま二人に背を向けると、出入口扉から姿を消した。
「……本当に扱いにくい人です、【二つ】の意味で。では、行きましょうかシエル」
「そうだね。コレット~あはは」
■これから連盟の会議があるようだ■
■彼女たちは、建物の上階へと向かう――■
●■▲
「魔導研究の進捗状況は」
「はい、まず【イヤシノ地区・第一研究所】で、【武人の言】に関する新しい発見が――」
■誰もいない白い空間に輪を描くように立つ、人の形をした霧の群れ■
■これは、新魔導による通信方法である!■
「五大盗賊に盗まれた、例の物はどうなった?」
「なかなか厄介なネズミさんでしてー。行方知れずです」
「そうか……」
■しかしぶっちゃけ、あまり効率的とは言えず■
■魔導使いとしての意地で使っているだけであるが■
「ふむ、【ナゴミノ地区・第三研究所】は今後その方針で」
「了解しました」
■【幹部】たちによる会議はそれなりに順調■
「――そういえばー。【オーバー・テクロノジー】について報告がー」
■だったが、その言葉で緊張感が増した■
「……なに?」
「その技術を使用していると思われる、ロボットとの交戦報告がありましてー」
■厳格な女性の声が、さらに厳しくなった■
「……ほう」
■その口は、笑っているように見える■
●■▲
「もうすぐ到着だな! いやぁ最高の空旅だったぜ!」
「そうですわね。カメ朗様……はぁ、もっと味わいたかった……」
■カメ朗達の視界に■
■大きな館が見えた■
「では着陸ー!」
■館前の大きな庭に、カメ朗は慎重に着地した■
■芝生の感触が足の裏に広がる■
「お嬢様!? そのお姿は如何様に!?」
「あら、メイド長。……色々とありましたわ」
■白いメイド服を着た、巨乳の黒髪美女■
■全身から気品が発せられていて、まさしく上級メイドといった外見■
■カメ朗君の視線が強まった!■
「色々? それはそうと……いつ見ても大変可愛らしくて……素敵でございますっお嬢様。なんという煽情的な……!! はぁはぁ……!!」
「ふふ、ありがとう。ですが何で息が荒いのかしら?」
(このメイドさん……おぶりたいな。いい香りしそう)
■目の光が増しているので、カメ朗の下心が丸見え■
■そんな彼に警戒を抱くメイド長■
「お、お嬢様……こちらのロボ的な方はッ。なんだか怪しい視線を感じますが」
「見ての通りスーパーロボット様よ。命の恩人」
「は、はぁ……?」
(おいおい、そんなに見つめられると興奮しちゃうぜッ)
■照れているカメ朗■
■メイド長は微妙に後退していく■
「かめ……もしや、カメカメ族ですか?」
「おっと、知っているのかい」
「ええ、ホンワカ島の西に住む種族でしたよね。直接見たことはありませんが……」
「へへ、おれも有名になったもんだ」
「いえ。別に貴方のことを知っているわけではないのですが……? 人の話きいてます?」
■さらに照れるカメ朗■
■クールに去る準備を開始する■
「お嬢様、そういえば例の男性から恋文とお見合いの手紙が届いています」
「……ああ、あの気持ち悪い視線を向けてくる富豪ですわね」
「ああっ!? なにをお嬢様!?」
「フン、汚らわしい。わたくしに好意を向けるなど百年早いですわ!」
メイド長から受け取った手紙を、即座に破り捨てるジゼル。
どうやら彼女に言い寄ってくる男性からのラブコールのようだが、それを傲慢な表情と態度で拒否した。
「こんなものより……よければお食事でもどうですか? カメ朗様」
「そこまで言うなら、分かったよ。ジゼルちゃん。そこまで言うならね」
■クールに去るのをやっぱりやめた■
■カメ朗君は紳士なのである■
「最高級のオイルが良いな!」
■木製の大きな扉を開けた先■
■館の正面玄関に入るカメ朗■
(もしまた刺客が来たら……確実に捕らえる。そして【服従】させてやるぜ!)
■彼の心はジゼルを守る決意で満ちていた■