誤解であるッ!!
「くそ、一旦ここから離れるかッ。狙撃手のやろう!! 絶対たおす!」
「そ、そうですわねっ」
どこからかの遠距離攻撃に困ったカメ朗は、とにかく動き回ってかく乱作戦を行う!
周囲もあまり安全ではないが、少なくとも彼のボディを破壊できるものはいない。
そう考えての行動だ。
「せこいやつめっ、姿を現せーっ! おれが最強だからって!」
そんな愚痴を吐いてはみるが、そんな挑発に乗るやつはいない。
ただ周囲の怒号などがうるさいのみだ。
これでは狙撃手を見つけるなどできない。
「バリアを使いながら……なんとか」
■バリアを左方向に展開して、狙撃に対抗するカメ朗!■
「どこからでも撃って来いよっ、おら!」
■さすがにバリアを破ることは出来ない!■
「と、思いましたか? 浅慮」
「ごはッ!?」
「!?」
■今度は頭の右に狙撃が!■
「ばかな、どっからきたッ。狙撃手は複数いんのか!? ちくしょう!」
「ちょ、跳弾でしょうかっ」
「んなアホなっ。今のも雪玉だぞ! どんな弾力を秘めた雪だよ!? やっぱ魔導か!?」
謎の狙撃によって砕かれた右側頭部におどろきながら、彼は対策を考える。
バリアを広げることもできるが、あまりやりたくはなかった。
それに、守るとなると全方向を守備しなければならないのだ。
「くそ、しかたないかーッ。全方位ー!!」
全方位にバリアを広げ、姿が見えぬ狙撃者の攻撃に注意する。
ジゼルはしっかりとカメ朗に掴まり、彼に抱き締められていた。
「――全方位バリア、厄介ですが……」
■遠くに立っている銀髪の美少女・コレット■
■彼女は両手に持った銃を構える■
「ふう……、これは重いのが難点ですね……。めんどくさい……」
■それは銃というよりも、ロケットランチャー的な外見■
■白銀の砲身は赤い稲妻模様のようなものが全体に走っていて、異様な雰囲気があった!■
「さて、撃ちますか」
きりりとした顔でスコープを覗くコレット。
魔導具であるスコープなので、すごい遠くまで見ることが可能。
しっかりとカメ朗の姿を捉えている。
「……」
黒いトリガーに指をかけ、発射を行う体勢に入ったコレット。
その体は異常にプルプル震えていた。
ただし、別に重いわけではなく。
「さ、寒い……」
普通に寒いだけ。
コートを着てくれば良かったと、彼女は己が着ている白いチャイナドレスを見て思う。
いや、本当は着るように言われてはいたのだが……。
「まさか、こんなに雪があるとは……不覚っ」
そんなに雪は降っていないし大丈夫かなー的な感じで、ここに来た彼女。事前の準備がめんどくさかったのだ。
雪を降らせるモンスターを恨みつつ、トリガーにかけた指に力を込める。
「いや、雪合戦やるんだから、当然でしょう~。このまぬけ~。クール気取り~」
■一瞬、同僚の顔と声が浮かんだ■
「うるさいですよっ」
■余計な力を込めて、トリガーを引く!■
「うおっ」
バリアに弾かれた雪玉を見て、カメ朗が少し驚く。
バリアを貫通することはないが、思った通り、銃弾は予想外の方向から来た。
やはりバリアを解くことは出来ないと、彼は歯噛みする。
(まずい、まずいぞ……このままではっ)
カメ朗は焦っている。
周囲の騒音・雪の煙幕のせいで、狙撃手を見つけることは困難に過ぎた。
時々、関係ない雪玉も飛んでくるので余計だ。
だからといって、狙撃手を放置したままこの大会を制するような余裕もないが。
(となると……)
一つの策が浮かぶが、それはあまり良くはない策だ。
もう少し早く決断していれば、まだ良かったと思えたのだろう。
(くそ、こういう戦法は俺の天敵だっ)
■姿見えぬ刺客をカメ朗は恐れている■
■ちまちまと時間をかけて攻める戦法は、カメ朗にとって【効果的】と言えるだろう■
●■▲
「いい表情です。追い詰めている証拠になる」
スコープを覗くコレットは笑いもせず、淡々とカメ朗を排除しようと立ち回る。調子に乗って姿を現す愚は犯さない。一秒一秒を着実に重ねていき、勝利の瞬間へと確実に至るのだ。
一応あまり壊さないように言われているが、手加減ができるような敵でもない。
「そろそろ、狩り時でしょうかね?」
狙撃手はカメ朗を狩る時が来たかと思い、少しだけ深く思考を行う。
そうして数秒後、近くに置いてあるトランクケースに手を伸ばした。
ケースの中に入っているある【書籍】を取り出し、怪しい笑みを浮かべながら開く彼女。
「ぷっくく……」
漏れ出すような笑い声が響く。
それはとても戦闘中に出るような笑いではなく……というか、ぶっちゃけ彼女はギャグ漫画を読んで笑っていた。
さっき取り出したものは週刊漫画雑誌である。
「ぷはぁっ、その展開は反則……!!」
カメ朗を間違いなく劣勢に追い込んでいる場面で、少しぐらい手を抜いても良いかと思ったので読書開始。
一気に真面目さを失った彼女は、本来もっていた怠惰オーラを全開にして趣味に没頭していた。
まさしくこれがコレットの本性である。
(あとでやる・まだ大丈夫・間に合う間に合う——)
連盟幹部としてすぐれた能力を持ちながら、彼女はどうしようもなく【ナマケモノ】であった。
休日に寝転がってますが何か? とか言い出しかねないレベルで。
勤勉さがあれば無敵かもしれない……とは、同僚の誰かが言ったかもしれないセリフ。
(ああもう。任務めんどうくさい。帰って寝たい)
既にコレットは連盟の任務を放り投げてしまいたい、そんな風に思い始めていた。
彼女の頭は家にセッティングしてある家庭用ゲーム機に関心が行き、もはやカメ朗討伐に集中できない状態となっている。
攻撃の手が緩んだことにカメ朗たちは疑問符を浮かべるが、当の狙撃手はだらけているだけであった。
「……くしゅん」
小さくくしゃみをするコレット。
当然といえば当然の話ではあるが、こんなにも寒い中では満足に娯楽を楽しむこともできない。
結局、最も楽な道は任務を終わらせてからゴロゴロすることだ。
そのことに思い至った彼女は重い腰を上げるのだった。
「――仕方ありません。働きますか」
■そして遂に■
■本格的に動き出す時が来た!■
(早く帰って、こたつに入りたい)
■寒さも限界近い!■
■勝負をさっさと決めないと、勝手に自滅しそうな勢いであった!■
●■▲
「きゃああ!?」
「ジゼル!?」
■バリアをすり抜けた敵の攻撃により、雑にはじけ飛ぶジゼルの衣服!■
■そのことでカメ朗の視線は彼女に集中し、確実な隙が発生してしまった!■
(ジゼルの下着——紫レースのパンツとブラ——しまった、視線がうごかせない——!!)
結婚したとはいえ、カメ朗とジゼルは極めて健全(?)なお付き合いを続けていた。なので彼女の下着を見る機会などあまりなく、必然的にその視線はめっちゃ凝視されてしまう。
その隙に、複数の雪玉がカメ朗の周囲360°から襲いかかった!
「ぐあああっ!?」
シリアスな叫びを上げながら砕かれるカメ朗ボディ。
嫁の下着に見とれていたら攻撃受けたという状況だが、実際それが効果的だから仕方ない。
彼は確実に余力を削られていた。
替えの服(ホッカイロ付きドレスと防寒着)を甲羅から出し、それをジゼルへ向けて放り投げる。そしてある決心をした。
(最初からこれ使えば良かった——センサー起動ッ)
覚悟を決めたカメ朗は、ジゼルを発見した際の機能を使用する!
どこかから狙っている狙撃手の影を発見しようとするが……。
(だめだな、ジゼルほど強くは反応しないかっ)
好みの女性であればあるほど強く反応するが、狙撃手の反応は薄い。
もしかしたら大魔導連盟の幹部では?
そう思ってのセンサー使用ではあったが……。
「ぼんやりとしか分からないぜっ」
つまりはジゼル程に好みの女性ではないということ。
まあ、当然のことではあるのでカメ朗の驚きは少ないが。
ジゼルは少し嬉しそうにも見える。
「だが、だいたいの方角は分かった!」
■急いで向かうカメ朗!■
■ジゼルを抱きかかえながら全速飛行!!■
「急げ!!」
■彼はどう見ても焦っている■
■なぜだろうか?■
(半径一キロの柵で囲まれた会場。敵の位置は柵に極めて近いと見たっ)
かなりの速度で接近するカメ朗とジゼル。
しかしジゼルはあることについて疑問を感じている。
それでも高速飛行は続き、遂にぼんやりとだが柵が見えてきた。
(どこにいるっ、狙撃手のやろうーッ)
柵の近くを見回すが、それらしき影は見当たらない。
こちらの接近を見て、素早く場所を移したかと思う。
狙撃ポイントをずらすのは基本ではあるが……。
「こっちには――」
■カメ朗のセンサーが捉えた場所は■
「(ぼんやりとだが)お見通しだ!!」
「!」
■わずがに盛り上がった、雪の中!!■
「フン!!」
カメ朗が全力投球した雪玉によって、積もった雪が大きくはじけ飛んだ!!
そこから一瞬で退避した影を彼は見逃さない。
甲羅に収納していた雪玉を右手で掴み、影に向けて投げる!!
「ッ!」
雪玉が命中した人影は衝撃で吹き飛ぶ。
ちなみに、ルールでは柵から出ると失格扱い。
そのままの勢いで柵の向こうまで行きそうになるが!?
「わっ!?」
すさまじい突風がその場に吹き荒れる。
カメ朗達の視界が雪によって白く染まり、やがてそれが晴れていく……。
「――あぶない、もう少しで失格になるところです」
「!」
「風に助けられましたね……」
涼しい顔で柵の前に立つ銀髪美少女は、その凛々しい両目をカメ朗に向けた。
目の中で輝く鮮やかな緑色の瞳は、彼の全てを見通したかのような鋭さを持つ。
実際、カメ朗はかなり苦戦していた。
「お前は連盟の幹部だな!」
「……」
「もうお見通しだ!」
カメ朗は地面に着地し、コレットに人差し指を向けて言う。
彼女は沈黙を貫く。
その瞳を鋭くカメ朗に向けたまま、なにかを深く考えているようだ。
「……ええ、そうですよ。カメ朗。私は、連盟の【第五席】――コレット・ベルニクス」
「えっ!」
「知っているのか、ジゼル」
「は、はい。少しっ」
コレットの名前を聞いたジゼルは驚く。
そして、カメ朗に対しての説明を開始する。
「ベルニクス家……、かつて魔導によって莫大な富を築いた……ヤスミノ地区では有名な大富豪っ」
「ほーう」
「ですが、ある時期を境にその消息が一家丸ごと途絶えたと聞きますわっ」
「むむ?」
どうやらコレットはどこぞの大富豪の出身らしいと聞き、カメ朗は彼女を凝視。
その胸の大きさが並であることを確認後、まとう雰囲気が気品あふれるものであることを納得。
なるほど、ジゼルとはまた違ったお嬢様オーラだと考える。
「……いったい、どこを見ているのですか」
軽蔑した目でカメ朗を睨むコレット。即座に彼女は両腕で胸を隠した。
彼はひどい誤解だという感じで頭を振った。
「おいおい、カメ朗さんは紳士なんだぜ? HAHAHA!」
「……白々しい」
両腕で胸をガード中のコレットは、その瞳の軽蔑力を急上昇させた。
いったい、なんでこんなに敵意を持たれているのか? カメ朗にはまるで思い当たる節がないような気がする。
「貴方は、連盟の幹部とその他一名を捕えていますね?」
「え、それが何か?」
「やっぱり……この外道」
「いやいや、そりゃあ【復活】されたら困るし……捕虜にしとくしかないだろっ。不可抗力だYO!」
「捕虜? なんて厚かましい……」
彼女の確かな敵意を持ったその目は、汚らわしいものを見る時のそれだ。
カメ朗は困惑。なのでコレットに問いかけた。
「なんでそんなに……おれが何をしたっていうんだ!」
「我々の予想では……貴方は彼女たちを無理矢理従わせ、牢屋に繋ぎ、犬のような食事方法を強要し、あんなことやこんなことをしたり、変態的で極めてハレンチな行為に及んでいるということになっていますが?」
「誤解だYO!?」




