その本は女体を表すッ!!
■ユウキュウタウン■
■第7番地・怪しい品物扱う店、レジスタンス・フォーにて■
■特に特徴のない顔の男が入店した!■
「いらっしゃい! カメの旦那!!」
「おう」
朝日が店内を照らし、そこに客は訪れた。
赤みがかった茶の短髪で、身長は男性の平均身長といったところだ。
AR技術を応用した機能によって【普通の人間】の姿になっていた彼は、それを解除して本来の姿に戻る。
「お、今日も変装してきたかい。なかなか用心深いねぇ」
「まあ嫁さんがいるんでな。こういう買い物をするときは、必要以上に慎重にならざるをえないってもんさぁ。……なんかこう、かくれてコソコソやるのが逆に興奮するっていうのもあるかもな」
「へっへっへ、あいかわらずの思春期男子っぷりだ」
変装していたのは、灰色のジーパンを着用した、カメの外見をしたロボットだ。
より正確に言えば、カメとして転生し、さらにロボットとして生まれ変わった存在! その名はカメ朗!
ここは秘密のお気に入り店である。
「さて、例の物は用意してあるかぁ?」
「くくく、もちろんでさぁ!」
「おおっ。上玉じゃねぇかぁ……ウヒヒ」
嬉しそうな顔で奥のカウンターに近付くカメ朗。はたから見ると、一発アウトで逮捕されそうな動きである。
すごい体格のアフロおっさんは、懐からとんでもないブツを取り出した!
「ッ!! すごい【オーラ】だYO! この禁書を手に入れるなんて……!」
「へへへ」
「ジャン店長、さすがだぜ……」
照れるジャンから受け取ったそれを、カメ朗は急いで確認する。
それは紳士の行いであるからして、スマートに、優雅に、誰より速く、とにかく勢いよく、確認作業を行う。
「うおおおおおッ」
高まるテンション、走り出す魂、賢者に至る道。
カメ朗の夢がそこには詰まっていた。
(巨乳、貧乳、尻、腰、太もも、水着ィッ、セクシーポーズゥッ!!)
■水着グラビア雑誌■
■ファイター(異世界にある職業の一つ)美女大集合スペシャル!!■
■と、いうタイトル■
「くおおお、なんて引き締まったボディ。堪りませんなぁ!!」
「ファイターは戦闘で食ってる人種だからなぁ、そりゃそうだ」
「ですなぁ! ですなぁ! んはあっ!!」
凝視しているカメ朗の目の動きは、とても異常で気持ち悪いものだが、熱意もあった。
ひたすらに脳内を煩悩で埋める作業!
「そういや、あの清純派のポーラちゃんも、割ときわどい水着で撮影に応じてるんだよなぁ」
「まじか、まじだ」
ジャンの言葉を聞いた時、ちょうどそのページが目に入ったカメ朗。
黒髪の美少女が顔を赤らめている水着姿は、カメ朗のナニカを強く刺激した。
「おうふっ」
「おいおい、ここで賢者になんなよ?」
「ふぅ……分かっている。楽しみはあとにだ」
「いや既になってるじゃねぇか」
カメ朗は雑誌を閉じて、己が背負う甲羅の頭をパカっと開けた。
甲羅の中に雑誌を丁重に収納すると、そのままそれを閉じる。
「というかカメの旦那。あんた嫁さんがいたんじゃないか」
「ふ、ああいるぜ。最高に可愛い嫁さんがなッ」
「のろけてんな~、うらやましいぜ~」
「だろー、すごい甘えてくるんだぜ~」
顔がめっちゃにやけるカメ朗。
自慢の波動が溢れ出してきて、店長はしまったかと汗流す。
「おれがいないとすぐに不安になって、きょろきょろと探し始めるんだぜ、おれはそれを隠れて眺めてさ――」
「……」
「泣き出しそうになった時に、ばーんと現れると、モフモフの尻尾を振りながら抱き着いてくるんだが、柔らかい感触が――」
「……」
■30分経過……■
「……まあ、ざっとこんなところだ」
「ああ、良く理解した。良く理解したよッ」
「本当かー?」
「本当だッ。本当ッ」
これ以上付き合わされたらたまったものではないと、必死になって訴えるジャン。
カメ朗はまだ余裕がありそう。
客は他にいないので、続く可能性はあるのだ。
「いや、やっぱ語るかまだ」
「ひいいッ!?」
「――邪魔するよ。店長」
店の扉が開き、凛々しい声が聞こえてくる。
心の清らかさを誇り、さりとてそれを振りかざすことのない王子様のような響きだ。
ようするに超かっこいい。
(何者ッ)
■漂うイケメンオーラに■
■というか実際、赤い髪のイケメンなのであるが■
■気圧されてしまうカメ朗■
「ごくり……」
「うん? 君、そこに立っていると少し邪魔だな」
「あ、ああ、すまん」
「気にしなくて良いさ、謝る必要はない」
男はカメ朗がさっきまでいたカウンター前に立ち、無駄にかっこいいズボンのポケットから、やたらとかっこいい動作で袋を取り出した。
それをカウンターに置いた際に硬貨の音がした。
(かなりの量……まさかっ)
■カメ朗が思い出した話は、最近この町を騒がせている事件■
■いくつかの、魔導具を扱う店が襲撃された話■
■ヤスミノ地区長がかなりの警戒をしているようだ。指名手配の貼り紙などが、町でよく見かけるようになった■
(考え過ぎか? この男――)
「触手■×ロリ〇■●ヌルヌル調教●■▲△写真集は、既に入荷してあるだろう?」
■考えすぎだった■




