メイドを操作しようッ!!
「ほああああッ、このフォルムッ!! たまりませんわッ!! こうしてこうしてッ!! ロケットパンチッ!!」
■ジゼルが、涎をたらしながら狂喜乱舞しているころ■
■カメ朗たちは……■
「よーし、到着だぜ!」
「はぁ……」
「どうした、元気ないな」
「当たり前でしょうが、ご主人様」
■カメ朗とリリがいる場所は、館から一五キロほど離れた地■
■ごつごつと岩が突き出た、岩石地帯である■
「なんで、こんなところに連れてくるのかしら。……どうせならきれいなお花畑にしてよ」
「いやいや、確かめたいことがあってな」
「?」
陽気な空の下、歩みを進める二人は、人気のないそこで何をしようというのか。
リリには分からないが、嫌な予感だけはしていた。
「館からはなれて大丈夫なのかしらね。連盟が襲撃するかもっ」
「それはないだろー。派手に動き過ぎて、ソルジャー(警察的なの)に警戒されているし、そっちとしても動きづらいだろう?」
「むむ」
「HAHAHA、加えてあの館は要塞級だぜ?」
「要塞……?」
「……まあ、とにかく。せっかくだからメイドをねぎらってやろうかと思ってな!」
「それはどうもね」
「それほどでもないぜ。仕事の内容はともかく、お前はよく頑張ってるYO」
はははと、笑うカメ朗をぶん殴りたくなるリリではあるが、あとでお仕置きされてしまうためにできない。
あの、おぞましいお仕置きを。
「お、いたいた」
「は?」
何かを見つけたカメ朗の視線を追ったリリは、露骨に顔をしかめた。
なぜなら、そこにいたのはモンスターの大群だからである。
「うわ、まさかお前」
「ふふふ、そうだとも。GO!!」
いつのまにかラジコンを持ったカメ朗は、それを操作した。
すると、当然のようにリリは動き、モンスターへと突っ込んでいった。
「わああっ、この外道ッ」
「お前の戦闘力を確かめる機会だ。すまんな!」
「絶対、お前の趣味でしょうがァ!」
■モンスターの外見は……■
(オークさんお疲れ様)
■エロゲーに出てきそうなオーク!■
「ぴゃああああッ!?」
「ぶおおおおお!!」
「おおおおおお!!」
■美少女を見つけ、一斉に突進するオークさん達!■
■あまりの迫力にリリは涙目で叫ぶ!■
「やだやだやだぁ!? こんなの戦えないわよぉっ!? なんの準備もしてないのにぃ!? せめて予習させて!?」
「問題なっしんぐ! 操作するのはおれだぁ、安心しろォ!! うまく操作すれば本来のスペック超えるッッ!!」
「違う意味で安心できないわよぉ!!」
「格闘ゲームとか結構得意だからッ! おれ!」
■得意げな顔で操作を行うカメ朗■
■完全にゲーム感覚であるからして■
「ぴゃあああッ!!」
リリの掌から魔導具が出現し、それを使ってオークたちに攻撃を仕掛ける!
彼女の速度はそれなりで、オークの動きは結構遅い。
「っかしーな? 当たんねーぞ?」
「なにやってんのよっ。へたくそ!」
操作が下手過ぎて何十回も空振るナイフ攻撃。彼女の体は何回も地面を転がっていき、カメ朗は失敗しながらも徐々にコツを掴んでいく。
それから数分ほど操作練習を行い、ようやくそれなりに動かせるようになる。
そして、ナイフは正確に敵の喉元を捉えた。
「ぶおおおおお!!」
しかし、その斬撃はオークの赤色の皮に弾かれてしまう。
あまりの固さにリリの手はしびれる。
「クリムゾンビーストのスキル、【鉄鋼】か!」
モンスターが持つスキルによって、リリの攻撃は効きそうにない。
なので、オークの攻撃を涙目でよけるしかない。
「どうにかしなさいよ! このままじゃっ!?」
「くっそー、うまくいかんな。攻撃力低すぎ!」
「悪かったわねッ。ふぎゃ!?」
オークたちに捕まり、地面に押さえつけられてしまうリリ。を見て、カメ朗はその先の展開に期待してしまうが、わずかに残った良心によって邪念を払う。
「こうなったら魔導をッ」
「!? ま、まってッ」
魔導を発動しようとするカメ朗を止めるリリ。
その間にもオークたちは、怪しげな動きを見せていく。
「魔導なしで、なんとかするからぁ!」
「なにいってるんや、大変やでッ」
「!?」
オークたちの動きがますます怪しくなっていく。
それはもう、言葉では表せないレベルでッ。
「なにされるの!? 私、なにをされちゃうの!?」
「そのモンスターは捕まえた女性をちょめちょめしたあと、なになにしてしまうんだぞ!!」
「えええええええッ!?」
絶叫のリリはオークたちの怪しい動きに恐怖を抱き、必死に抵抗する。
だが、完全がっしりしっかりと拘束されていてピンチは続く。
そうしている間にオークたちが、周囲で怪しげなダンスのようなものを開始して、彼女の精神を追い詰めていく……。
「――早く、助けてッ。魔導使ってもいいからッ!!」
「よしきた」
■満面の笑みで、カメ朗は魔導を発動する!■
「うおッ!?」
■すさまじい雷光が、カメ朗の視界をおおった!!■
「なんて威力だッ、まじでやばいぜ!」
■バチバチと鳴る魔導の力は、オークの集団を一瞬で巻き込んだ!■
■問答無用で敵集団が消し飛んでいく!■
「やればできるじゃないかよ! リリ!」
■そういう彼の視界には■
「あばばばばばばばッ」
■オークと一緒に痺れている、美少女の姿があった!■
「お前もかよッ!?」
●■▲
■破壊され、ひび割れた、リリの周囲地形■
「――私の魔導は、自分自身にも襲い掛かる欠陥品なのよ……」
「……(RPGの自爆技みたいだな。なかなかピーキーな性能してやがる……あれをまともに喰らったらおれでもヤバそうだ。ま、ふせげるけどね! 最強なんで!)」
「笑いなさいよ……あははははっ。みんなそうするんだから!」
泣きそうな顔で笑うリリは服がめっちゃ破けて、色々と見えそうになっている。
地面にしゃがみこんで胸を隠す彼女の姿を、カメ朗は微妙な顔で眺めていた。
きっと、魔導学院でも欠陥魔導のせいで、色々と苦労してきたんだろうことは想像に難くない。
「……その、なんかすまんかった」
「ぐすぐす」
「……」
性能調査は、どうにもいたたまれない結果であった!
■帰宅途中……■
「ほれ、これを巻くんだ」
「……」
途中の町で胸を隠すタオルを購入したカメ朗は、それをリリに渡した。
今月のお小遣いは使い切ったが故、服を買うほどの余裕はなかった模様。
修行で服が破れることも想定して、念のために用意しておいたのがナイス判断だった。ジゼルの件が活きた結果だ。
「もっと金があればなぁ……すまんね」
「別に、十分よ……ぐす」
なるべく人気のない道を選び、館へ帰還する二人。空を飛んでいくほどのエネルギーはない。
もし誰かに遭遇した時は、カメ朗君が全力でリリのフォローに回る予定である。
「お前にしては優しいじゃない、何を企んでいる……」
「いや、なんでだよっ」
ジト目を向けながら距離を取るリリに、カメ朗は困った様子。
彼は頭をかきながら言う。
「お前のことを許したわけじゃないが……まあ、一応うちの使用人だしな」
「……」
まだジト目は続いているが、さっきより距離感はましになった。
どうやら少しは警戒が薄くなったようだ。
(やれやれ)
■手間がかかると思いながら、彼は赤くなり始めた空を仰ぐ■
(まあ、原因はおれなんだが)
(元凶はお前でしょうがッ)
■この時だけ想いは重なった!■




