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転生君主の死に学び〜弱小領主は優しい乱数の夢を見るか〜  作者: あおいたける
第一章 転生君主は一ヵ月生き延びることができるか
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第06話 うわっ……私の能力、普通過ぎ……

 四周目を始めるにあたって、私はこれまでの人生を反省した。一周目も二周目も三周目も、何とかベルティアとの戦いを回避する方法はないかと、模索し続けてしまった。その結果、戦いの準備が疎かになり、呆気なく戦死することになった。

 三度も失敗したのだから、今回は戦う覚悟で準備すべきだろう。結果を変えたければ、過程の行動を変えるしかない。現実でもゲームでも同じことだ。

 異なるところは、ゲームでは乱数調整で、結果をコントロールすることも可能だが、現実では才能と努力、そして運というコントロールできない要素で決まるところだ。

 しかも、才能も努力も運も、数値化されていないから、他者に勝っているのか確認することができない。だから、これぐらいで良いだろうと、妥協して失敗したり、端から勝ち目がなかったのに、死ぬほど努力してしまったりするのだ。


「何してるの? 寝てるの?」


 神使(エンジェル)フュリスが、私の頭上で退屈そうに言った。

 これからどうするか、ちょっと考えさせてくれと言ってから、僅か三分。あぐらをかいて、貧乏ゆすりまでしている。落ち着きのない奴だ。


「……考えごとをしているんだよ」

「深刻ぶって考え事をするなんて、亜麻色の髪の男じゃないと似合わないわよ」

「ぶってんじゃない、深刻なんだよ。命がかかってるんだから」

「死んだって、また転生するだけじゃん」

「だからって、そう何度も死にたくはないだろ」

「何で? 記憶は引き継ぐんだから、むしろ来世の礎にできるんじゃないの」

「そうかもしれないが……、死ぬほど痛いぞ」

「当たり前じゃん」


 当たり前だから、好き好んで死ぬ奴なんていないんだよ。任務だからって、あっさり自爆なんてしたくない。


「何度も死んで、学んでいくのよ。そうすれば、次の生では、よりよい選択肢を選べるようになるでしょ」


 それでも選択肢を間違えて、ヒステリックな姉に自殺された挙げ句、最後は暗殺されるんですね、わかります。


「いっそのこと、今回は来世のための道作りに専念したら? あえて変なことをやってみて、どんな結末を迎えるのか、試してみるとかさ」


 現実でテストプレイをしろってか。死ぬ者の身にもなってくれ……。


「まあ、考えておくよ。それよりまずは、セルデンの武将能力を確認させてもらおうか」


 ここいらで話の主導権を取り戻そう。そうしないと、延々と雑談にかまけそうだ。

 この世界のモチーフであるゲーム『アストレア大陸戦記』では、武将の各能力が、"1"から"120"までの数値で設定されていた。

 これらの数値は、さらに"20"ごとに区分され、"A"から"F"のランクが付けられていた。

 日本の戦国時代や、三国志演技をモチーフにした、某地域制圧型歴史シミュレーションゲームみたいなものだ。


「ま、いいけど。誰から見るの?」


 セルデン伯国の初期武将は、私を含めて五人いる。魔術師ボリス、官吏ケント、斥候カルド、料理長アプルだ。


「一応は君主だし、私からで」

「わかったわ」


 フュリスの返答と同時に、私の視界に文字が浮かび上がってきた。


「ピピピピッて、電子音はしないわよ」


 某戦闘力測定装置とは違う、と言いたいらしい。それよりも私は、『バーチャル・リアリティ』を想起した。『十分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない』とは、こういうことなんだろう。

 さて、肝心の能力はというと――


・セリウス

【統 率】C(63)

【武 勇】C(68)

【知 略】C(60)

【政 治】C(65)

【忠 誠】C(69)

【属 性】真人(ヒユーム) 伯爵 アステル教徒(アステリック)

【兵 科】槍(C)騎(C)弓(C)

【戦 法】突進

【技 能】なし

【武 具】なし

【調 子】普通


 まあ、何となくは憶えていたんだが、見事な器用貧乏だ。無能ではないが、どれも中途半端で使いどころがない。これではまるで、前世の私みたいだ……。


「うわっ……私の能力、低すぎ……? ってやらないの?」

「そこまで低くはないし、普通すぎるだけだし。というか、それ言いたかっただけだろ」


 能力値だけでなく、技能や調子までわかるのは、とても便利だ。某二頭身キャラクターでお馴染みのプロ野球ゲームのように、調子によって能力値は上下する。絶好調で"+5"、好調で"+3"、不調で"-3"、絶不調で"-5"だ。

 技能や武具でも増減するので、"10"程度の能力差なら、けっこう簡単に覆せるゲームだった。

 ちなみに、君主の癖に武具を持っていないのは、装備できないからである。ご先祖様の英雄セルビウスが、愛用したという武具は持っているのだが、装備条件が武力"70"で、私には使いこなせないのだ。宝の持ち腐れとは、まさにこのことである。

 続いて、『セルデンの全て』こと魔術師ボリスだ。


・ボリス

【統 率】B(87)

【武 勇】B(81)

【知 略】B(85)

【政 治】B(92)

【忠 誠】B(80)

【属 性】真人(ヒューム) 魔術師 イシュタリア教徒(イシュタリアン)

【兵 科】槍(B)騎(C)弓(B)術(A)

【戦 法】散兵 斉射

【技 能】能吏 外交官 安定感〇

【武 具】なし

【調 子】普通


 見事な器用万能である。"A"の能力持ちは希少で、どの能力においても、十人ほどしかいない。つまり、"B"の能力が一つでもあれば、優秀な武将と言って良い。

 ボリスの場合、全能力が"B"ランクで、技能もプラスになるものしかなく、とても充実している。『セルデンの全て』とか、『セルデンには過ぎたるもの』とか言われているが、誇張でも何でもなく、単なる事実なのだ。

 そして、軍議で醜態を晒した、ケントはというと――


・ケント

【統 率】F(3)

【武 勇】F(5)

【知 略】F(9)

【政 治】E(24)

【忠 誠】E(30)

【属 性】真人(ヒューム) 官吏 アステル教徒(アステリック)

【兵 科】槍(E)

【戦 法】なし

【技 能】賄賂 サボり癖

【武 具】なし

【調 子】普通


 ひどい、ひどすぎる。政治力だけ最低ランクを免れているが、申し訳程度にもならない。無能過ぎるから、顔グラフィックを用意されたのだと、皮肉られていただけのことはある。

 しかも、マイナスの技能持ち。"賄賂"のせいで、何を任せても余計に金がかかるし、"サボり癖"のせいで、働かない可能性すらある。『いないよりは増し』と、苦肉のメリットを使うことさえできないレベルだ。

 このネタにしかならない無能ぶりから、このゲームの愛好家たちの間で、"1ケント"なる新たな単位が作られていた。ケントの能力値合計"41"を"1ケント"とし、他の武将が、ケント何人分の働きができるのかを算出するのだ。

 これで計算すると、私は"6.2ケント"、ボリスは"8.3ケント"だ。

 元々は、某『手強いシミュレーション』のCMでお馴染みのロールプレイングゲームで、成長率の低いユニットを揶揄し、誕生した計算方式だった。使い勝手が良いので、このゲームにも流用されていたのだ。

 なお、残り二人の武将は、専用の顔グラフィックがないモブ武将だった。この世界では、そんなことはないが、能力は推して知るべしである。まあ、ケントよりは増しという程度だ。


・カルド

【統 率】E(37)

【武 勇】C(53)

【知 略】D(40)

【政 治】E(22)

【忠 誠】C(55)

【属 性】真人(ヒューム) アステル教徒(アステリック)

【兵 科】槍(D)弓(C)

【戦 法】なし

【技 能】斥候

【武 具】なし

【調 子】普通


 斥候上がりの武将カルドは、これでも一応セルデンでは戦闘要員だ。

 索敵範囲を"+1マス"する『斥候』は、有用な技能だが、多数の武将が所持していて稀少性はないし、その中でもカルドは、最弱の部類だろう。


・アプル

【統 率】F(2)

【武 勇】E(20)

【知 略】D(33)

【政 治】C(56)

【忠 誠】B(62)

【属 性】真人(ヒューム) アステル教徒(アステリック)

【兵 科】槍(E)

【戦 法】なし

【技 能】料理(闇)

【武 具】なし

【調 子】普通


 料理長のアプル。三周目に見事な『ポイズンクッキング』をかまし、私に能力低下(デバフ)をもたらした彼女は、内政要員としても使えなくはなかった。

 とはいえ、やはり本領は料理だ。希少かつ強力な料理は、眠らせておくには惜しい。

 しかし、三周目の事件が示す通り、彼女の技能"料理(闇)"は、八割の確率で『ポイズンクッキング』と化す。武将が食べたら能力低下(デバフ)、兵士にふるまったら、著しく士気を下げてしまうのだ。

 他の料理技能"肉"や"魚"は、武将の属性とマスクデータの好き嫌いに左右されるが、基本的にはプラスにしか働かない。"闇"に限ってマイナス要素があり、リスクを負ってまで、わざわざ使わない技能の筆頭と貶されていた。


「闇の料理は面白い技能だけど、乱数調整のできるゲームならともかく、現実では使いづら過ぎるよな……」


 こんなメンバーで、どうやって戦えば良いのか。やはり、戦わないで済む道を探すべきではないのか……。


「セルデンって、こんなに弱かったんだねえ」


 フュリスが、あっけらかんと言い放った。


「兵数は五倍差だっけ?」

「ああ、そうだ。ベルティアは一万、セルデンは全兵力で二千」

「絶望的じゃん。というか、寡は衆に敵せずって言うし、奇跡的に勝ったところで、次はないよねえ」


 やめろ! ベルティアの総兵力は、六万強であることを思い出させるのはやめろ!


「そういえば、緩衝国家群の中にも、敵対しているところがあったよね? そこが便乗してくる可能性もあるんじゃないの?」


 やめろぉ……。サクス侯国との領土紛争を思い出させるのもやめろぉ……。


「希望は見えないけど、でもきっとなんとかなる! 百周くらいすれば、優しいベルティア公爵と出会えるわよ」


 フュリスが、私の頭をポンポンと叩きながら言った。もしかして、慰めているつもりなのか?


「九十九回も死にたくないし……。まずは、目前の戦いに勝てるよう、ボリスと戦術を考えることにするよ」


 このままでは、心を折られてしまう……。悪魔のような神使(エンジェル)は追っ払って、ボリスと本題の議論に入るとしよう。


「それじゃあ、あたしは一旦退散するわね。神使(エンジェル)は、転生者にしか見えないから」

「そうだったのか」

「こうしていると、虚空に向かって話しかけているようにしか見えないから、気をつけてね」

「それを先に言え!」


 ケラケラと笑いながら、フュリスの姿が消えた。


「ったく、なんて奴だ……」


 前世のサブカルチャーに詳しいフュリスとは、やたらと話は合う。そのおかげで、突っ込みをやらされた疲労感だけでなく、好きなことを共有できた満足感もあった。

 サブカルチャーに詳しい理由は分からないが、あいつも実は転生者だとか、そういうオチなんじゃなかろうか。


「……そんなことより、これからが本番だ」


 ベルティアとの戦いまで、時間は一ヵ月しかない。それまでにできることは何か、ボリスに相談し、ボリスに判断してもらい、ボリスに実行してもらわなければならないのだ。

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