表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生君主の死に学び〜弱小領主は優しい乱数の夢を見るか〜  作者: あおいたける
第一章 転生君主は一ヵ月生き延びることができるか
1/26

第01話 敗死

「セリウス、逃げろ!」


 黒精人(ダークエルフ)のルージュが、悲痛な声をあげた。

 それはこっちの台詞だと、最期に格好良く言ってやりたかった。だが、私の前には、全身黒ずくめの騎士が立ちはだかっている。

 黒騎士ジェイラス。ファンタジーの業界では、黒ずくめの戦士は強いと、相場が決まっている。このジェイラスも例に洩れず、武勇においては、この世界で一二を争う実力者だ。


「弱いものいじめは、好きじゃないんだが……」


 黒騎士ジェイラスが、心苦しそうに言った。

 ジェイラスの言う通り、私は弱者だ。正確に言えば、中くらいの武勇ではあるが、彼から見れば、弱者と人括りにされても、文句は言えないレベルだろう。

 前世でも、筋肉もりもりの強い人が、『相手の強さがわかるのも実力のうち』だと言っていた。

 これは逆にも言えると思う。実力が無い相手にも、強さを分からせられる者が、本当の強者なのだと……。


「いじめで悪いが、これも主命だからな」


 黒騎士ジェイラスが、ゆっくりと愛槍を構えた。

 控えめに言っても、勝ち目は無いに等しいが、私も長剣を構える。せめて、恥だけは晒さないようにと……。

 この感覚が、君主に転生したことで芽生えたものなのか、前世から引き継がれたものなのか。どちらかは分からなかったが、この期に及んで、惨めな命乞いをしなかったことは、我ながら立派だったと思う。


「ベルティア公国が騎士ジェイラス、参る!」


 何のひねりもない、ただの名乗りであっても、強者が言うと絵になってしまう。

 才能に恵まれた者の特権。遺伝子の気まぐれによる好遇。羨ましい。いや、妬ましい。前世においても、何度となく苛まれた醜い感情が、ムクムクと湧き上がってくる。

 時代、場所、遺伝。自身ではコントロールできない要素で、人生の難易度が決まってしまう理不尽。異世界に転生しても、この現実は変わらないのか……。

 ならば、一矢だけでも報いてやる!

 ルサンチマンと誹られようが、最期くらいは、己の感情に従いたい。

 私は長剣で斬りかかると見せかけて、二本の投剣を投げつけた。投剣の名手である、ルージュ直伝の技だ。

 黒騎士ジェイラスは、これを槍で防ぐはず……。その隙を突いてやるんだ!


「無駄だ」


 ところが、ジェイラスは、愛槍を一振りもせずに投剣を防いでしまった。一本は鎧に当たり、もう一本は当たらない軌道だと、見切られてしまったのだ。

 これでは、牽制にすらなっていない。隙を突こうとしていた私は、むしろ、ジェイラスのキルゾーンに飛び込む形になってしまった。


「う、うおおっ!」


 こうなったら、全身全霊の一撃にかけるしかない。私は不慣れな喚声をあげながら、長剣を振りかぶったが――


「がふっ」


 ジェイラスの愛槍が、目にも止まらぬ速さで、私の胸部を貫いていた。

 は、速すぎる。私の方が、先に振りかぶっていたのに……。


「セリウス‼」


 弱者には、一矢報いることさえ、許されないのか……。

 ルージュの悲鳴を聞きながら、私の異世界人生は、あえなく幕を閉じたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ